好感度上昇
私は彼に恋をした。
どうしようもないくらいに彼が好きだ。
私は目立たない人間だ。
容姿は悪くはないと思うが良くもない、家は普通、勉強もそこそこ。運動もそこそこ出来る。
趣味はYouTubeでアニマル動画を見ること。
普通の女子高校生だ。
そして私がクラスの人気者の彼に惚れるのも普通のことだ。
そう。普通のことだ。何もおかしくはない。
でも。私には絶対に手は届かない。
だから。この思いはそっとそっと心の奥底に仕舞って大切にしよう。
「君に贈り物を授けよう」
そう。頭に響いた。
そして唐突に自分に与えられた力を理解した。
【好感度上昇】
自分の指定した存在に対しての自分の好感度を強制的に上昇させる能力。
使用回数は2回。
その瞬間私は彼に惚れた彼に。クラスの人気者の彼に【好感度上昇】を一切の躊躇いなく使用した。
効果は絶大だった。
彼はいきなり私の方に近づくといきなり告白してきた。
クラスの人気者の彼が別段、特別でもなく彼との接点もない私に告白をした。
クラスの皆は凄く驚いた。
それを見て私は愉悦を感じた。
ああ。自分は今。注目されている。自分は今クラスで一番目立っている。自分は今輝いている。
と。
もちろん私はクラスの人気者の彼の告白を受けた。
そしてバラ色の学校生活が待っていると思ったが。そうではなかった。
彼が人気者の彼が。人気者ではなくなったのだ。
彼は私の事を好いている。それは絶対だ。いつも私の側にいてくれるし。いつも私の為に尽くしてくれる。でも、私は彼のことが好きではなくなった。
いや。違う私は元々彼が好きではなかったのだ。
私が好きだったのはクラスの人気者の彼だ。私の感情は恋心というよりも憧れに近かったのだ。そう、クラスの人気者の彼という存在の彼女になれば自分もクラスの人気者の仲間入りとなり。楽しい学校生活が送れる。そんな考えてクラスの人気者の彼を好きになったのだ。
落ち着いて考えてみれば当たり前だ。
だって、私は彼との接点が無かったのだから。
さて。どうしようか。
私は彼が好きではない。ただ。今現在私に好意を抱いて私の為に尽くしてくれる彼は。まあ便利ではある。
そして私にはまだ【好感度上昇】という力は後1回残っている。
後1回残っているのならば、私が本当に好きになった人に使用すればいい。
私はそう考えた。
そして、彼と共に高校生活を過ごし。卒業して彼と共にとある大学に進学した。
1人の先輩と出会った。
その先輩は顔もイケメンでドストライク。性格も良くて動物が好きという趣味もあった。
ただ。すぐには好感度上昇を使わなかった。
私は先輩と積極的に関わりながら先輩が本当に好きかどうか確かめた。
確かめて確かめて確かめてって。気が付いたら1年が経過していた。そして私は先輩のことが好きだとしっかりと認識したうえで先輩に最後の一回である【好感度上昇】を使用した。
そして私は先輩に告白されて付き合った。
幸せだった。
先輩とは本当に話も合うし、趣味も合う。一緒にいて楽しいし、優しいしカッコイイし体の相性も良い。
ああ。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。先輩。
先輩とずっと一緒に幸せに生きたい。
先輩の両親に挨拶をして、あ、先輩も私の両親と挨拶をして、そっから結婚して結婚式を挙げて、先輩の子供を産んで。ローンを組んで家を建てて、車を買って、子供の授業参観にいったりして、それからそれから、孫の顔を見たいし、何なら曾孫の顔も見たいな。
ああ。本当に好きです。先輩。
グサリ
そして私は刺された。
胸から血が溢れる、頭が上手く回らない。誰だ私を刺したのは。
ああ。私を刺したのは彼だ。
私が一番最初に【好感度上昇】を使った彼だ。
おかしいな。彼は私を好きなはずなのに。愛しているはずなのに。どうして私を刺した。
おかしいな。おかしいな。いや。おかしくない。分かったよこれは嫉妬、とい、う、も、の・・・・・・・・・
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「いやはや。せっかく良かれと思って【好感度上昇】という素晴らしい能力を贈ったのですが。どうやら彼女には扱いが難しかったようですね。いやはやいやはや。しかし私としては中々に楽しめましたよ。さてと、では次は誰で遊びましょうかね」