00 天使の祝福
夕暮れが迫る、穏やかな午後。同じ顔をした幼い男の子と女の子は、お揃いの服を着て遊んでいた。綺麗に整えられた温室には、白色の花を中心に様々な種類の花が咲いているが、一番多いのは白バラだ。愛妻家で有名なこの邸の主人が「妻にぴったりの花だ」と増やしたのだ。
爽やかさの中に甘さを持った香りが、ふわりふわりと鼻をくすぐる。
アメジストの瞳を持つ二人の子どもが、そんな花々の中で、数人の侍女たちに見守られながら遊んでいた。
「ミレイユおばさまがさ、」
「うん。」
「ぼくたちにお腹をなでてほしいって言っていたよね?」
「うん。それでわたしたちはお腹をなでてあげたわ。」
「うれしそうにしていたけど、どうしてかな?」
男の子の方が、大きな瞳に疑問を浮かべて首を傾げる。女の子の方は遊んでいた手を止めて、男の子と顔を合わせる。髪の長さが違うだけで、二人はよく似ていた。
「もう、かんがえたらわかるわ?わたしたちはふたごでしょ?」
「うん。同じ日にいっしょにうまれたんだよね。」
「そうよ。かおがよくにてる!」
「せも同じだよ!」
「手も同じよ!」
二人は向かい合って手を合わせ、同時にクスクスと笑い出した。それが微笑ましく、侍女たちは誰もが口元に優しい笑みを浮かべていた。幸せを切り取った、そんな空間に思えた。
「わたしたちがふたごだから、お腹をなでてほしいって言ったのよ。」
「えっと、ミレイユおばさまは、お腹に赤ちゃんがいるんだよね。」
「そう!だから、赤ちゃんがしあわせになりますようにって!」
「ぼくたちがふたごだから!」
アメジスト色の瞳が4つ、楽しげに細まった。そこへ、翡翠の瞳の少年がやってきて、双子の頭を優しく撫でる。
「やっぱりここにいたのか。父上と母上が呼んでいるよ。」
その少年に双子が抱きついた動きに合わせて、真っ白なバラたちが揺れる。窓ガラスから差し込む淡い光を浴びた白バラの踊りは、本当に天使が降りて来たような、そんな光景だった。




