番外編~アルヴィーノの約束~
父上と同じ、陽に透ける金の髪も。
国の誰よりも薄い、瞳の色も。
すべてがすべて、私の誇りであり自慢。
「父上ー!!」
「お、っと。こら、アルヴィーノ。後ろから飛びついては危ないぞ」
「はーい!」
毎日国王としてお忙しい父上は、朝から昼過ぎまで城へ行ってしまわれるけれど。
暗くなる前にちゃんと宮殿に帰ってきてくださって、一緒に遊ぶ時間を作ってくれる。
「今日は何をしていたのだ?」
「ティッツィーと散歩に行っていました!」
「そうか」
柔らかく微笑んだ父上に頭をなでてもらうこの時間が、私にとって一日で一番嬉しい時間。
いとこのフェーリクスと一緒に遊ぶのも楽しいし、母上に本を読んでもらうのも好きだけれど。
私は父上が一番好きだから。
「父上はお仕事お忙しいですか?」
「今はそうでもないな。あぁ、だが。もしかしたらフェーリクスとまたしばらく遊べなくなるかもしれぬぞ?」
「ヴェレッツァ城に行くんですか!?」
「式典があるからな。その準備で十日ほど、あちらの家族全員で滞在することになる」
ヴェレッツァ領は、元々は国だった場所。私やフェーリクスが生まれるずっと前に、一度別の国に侵略され滅んでしまった。
けれど今はドゥリチェーラが取り戻して、昔のように美しい場所に戻っていると教師が教えてくれた。
「私もヴェレッツァに行きたいです」
「いずれ、な。その際には、フェーリクスに案内してもらうと良い」
「そうですね。父上が約束を守って下さった場所ですから。行くのが楽しみです」
「……約束?」
むかーしむかしに、父上は約束してくれたから。
だからその約束を守って、父上はヴェレッツァを大切にしてくれている。
私はそれを知っているから、だからなおさら早くヴェレッツァに行ってみたい。
「アルヴィーノ?約束とは何の事だ?」
「約束は約束ですよ!父上約束してくれたじゃないですか。だからヴェレッツァを守っているし、大切にしているのでしょう?」
「っ!?」
私と同じ色の瞳が、驚いたように見開かれているけれど。
だって約束は約束だ。何かあっても父上ならどうにかしてくれるって、私はちゃんと知っている。
「アルヴィーノ……いや、まさか…………。だがそれならば、どうして……」
「??」
父上が何かを口にしているけれど、私は何か変なことを言っただろうか?
「陛下?アルヴィーノ?」
「母上!」
どうしたのだろうと、疑問を父上にぶつけるよりも先に。夕食前に湯あみに出ていた母上が戻ってくる。
「…………いや。何でもない」
「そう、ですか?」
「父上!母上!今日は全員揃っての夕食ですね!」
時折忙しすぎて、夕食の時間までに父上が帰ってこられないこともあるから。
こうやって家族全員そろっての夕食は、毎回ではないからこそ嬉しい。
「そうね。特に今日は、アルヴィーノの好きなものが多いみたいよ?」
「本当ですか!?やったぁ!!」
ついつい嬉しくて、はしゃいでしまった私に。
父上も母上も、どこかほほえましそうな顔で笑いかけてくれる。
私は今が幸せで、父上も母上も大好きだから。
だから、父上。
これからもずっと、ドゥリチェーラとヴェレッツァを幸せな場所にしていきましょうね!
実は、とある人の生まれ変わり。……かもしれない、陛下の息子でした。
そして今回でおまけ⑤終了です!
次回よりおまけ⑥の開始ですが、⑥で本当に最後になります。
既に最終回まで書き上げてありますので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです♪