3.二人だけのお茶会
なんと早くも総合PVが50,000アクセスを突破いたしました…!!
前作から引き続き読んで下さっている方も、新たに読み始めて下さった方も。
本当に本当に、ありがとうございますm(_ _)m深々。。
「はぁ……」
「どうした?ため息など吐いて」
久々にゆっくりできるからと、私がお菓子を作って殿下が紅茶を用意して。
そうやって二人だけのお茶会を開いて、改めて思う。
「いえ……。アルフレッド様が淹れる紅茶は、本当に美味しいなと…」
「それにしては物憂げではないか?」
「だって……こんなに美味しく紅茶を淹れられる方に、普段は私が淹れた紅茶をお出ししているのだと思ったら…」
どうやったって敵わないじゃないか。
少なくとも私は、私が淹れた紅茶よりもこっちの方が断然好きだから。
「そこで落ち込む必要はないのではないか?私は、カリーナの淹れてくれた紅茶が一番の好みなのだから」
「こんなに美味しく紅茶を淹れられるのに、一体何を……」
「事実なのだから仕方あるまい?以前君が城からいなくなった時に、それを再認識したのだ。自分が淹れたこれでは、私の舌は満足しない、とな」
「っ…」
その話は、その……。
「あぁ、責めているわけではない。ただそれほどまでに、私の舌はカリーナの味を求めているという事だ」
「アルフレッド様……」
「だから気に病む必要などない。私自身が望んでいるのだ。短い休憩の間だけはせめて、君で満たされていたい、と」
二人掛けの小さなテーブル。手を伸ばせば簡単に届く距離なのは、果たして誰の意向なのか。
伸ばされた手は何に阻まれることもなく、伸びた私の髪をひと房すくい上げて。
そのままそこに、殿下は唇を寄せる。
「っ…!?」
「先日の義姉上の行動。あれは、カリーナが口添えしたのだろう?」
み…見透かされてる…!!
髪から指も唇も離さないまま、けれどその淡い瞳だけは真っ直ぐにこちらを見上げてきていて。
普段とは違う視線の交わり方と、どこか色っぽい雰囲気にドキドキしながら。
「そう、です……」
私は頷く。
「私室などあっても使い道が分からないと言っていた割には、効果的な方法を思いついたものだな」
この場合の私室と言うのは、私だけに与えられた部屋の事だ。
驚いたことに宮殿では、夫婦の部屋以外にそれぞれの私室も存在していて。夫婦専用の部屋の両隣が、それぞれの部屋になっている。
しかもただの部屋ではなく、そこで何不自由なく暮らせるほどの広さと物が揃っていて。
なので実は、バスルームや寝室がそれぞれ備え付けられているのだけれど。
王弟夫婦が使うのだという場所だけで、いくつかの部屋と夫婦の寝室、プライベートバスルームが完備されているというのに。
これでまだ自分専用の部屋とか、どう使えと!?
一応聞いたんですよ?何に使うんですかって。
特に寝室!!
普段は夫婦一緒に寝るのに、何に使うんだって思ったわけですよ!!
そしたらですね。
「妃殿下の場合は、ご病気の際にお使いになるくらいでしかないと思いますよ?」
なんて。
セルジオ様改めベルティーニ侯爵に言われてしまった。
そうか、病気か。
確かに大病ではなかったとしても、風邪とかを殿下にうつすわけにはいかないだろうから。
そう言われてみれば確かにと、納得せざるを得なかった。
あ、ちなみに。
部屋のバスルームはあくまでプライベート用なんで、普段は専用の広い浴場を使っています。
何という贅沢…!!
「だがまぁ、前々から義姉上直々に相談を受けていたからな。私としても、兄夫婦の問題が一つ解決されて喜ばしい限りだ」
なるほど。だからあんなに積極的に協力してくれたんですね。
でもたぶん働きすぎる人同士だから、あんまり強く言えなかったんだろうなと簡単に想像がついてしまうのは…。もう仕方がない事ですね、諦めてます。
「お忙しい身の上なのは、私も王妃陛下も重々承知しています。それでも…」
「分かっている。私も兄上も、本心では執務よりも妃との時間を優先したいのだから」
「はい。それも理解しています。ですが、それでもお仕事に忙殺される時もあるでしょう?」
「無理はせぬと、約束する。もしも終わりそうになければ、いっそ城に泊まってくる。少なくとも私は、君を前にして仕事が続けられる自信がないからな」
いつの間にか髪から手を離していた殿下が、今度は私の頬に手を添える。
二人きりなのだし。構わないのだろうと、私もその手に自分の手を重ねて擦り寄って。
「その時にはお夜食をお作りしますから。私も呼んで下さいね?」
「夜食か、なるほど。それは楽しみだな」
ふふっと、二人で笑いあって。
こんな穏やかな二人だけのお茶会も、たまにはいいと思う。
なかなかお仕事のお休みなんて取れない殿下だけれど、それでも私は幸せだから。
殿下もこの時間を幸せだと、そう思ってくれていたらいいなぁ、なんて。
柔らかく細められる淡いブルーの瞳を見つめながら、ふわふわとしたあたたかさに包まれて思うのだった。