23.王太后様からの忠告
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ようやくベッドの中のからいつも通りの生活に戻って、しばらくしたころ。
今日も王妃様と二人、爽やかな風が吹き抜ける宮殿の中庭でティータイムを楽しんでいたら。
「まぁ…!お義母様…!」
王妃様がそう言って驚いたように立ち上がるので、私もそちらを振り返って。
微笑みを浮かべながらこちらに歩いてきている人物を目にして、急いで立ち上がって最上級の礼を取る。
だって、王妃様がお義母様と呼んだ、その人は。
紛れもない、王太后様だったから。
当然なんですけれどね…!!
陛下と殿下の実のお母様なのだから、前陛下のお妃様ということで…!!
でも実はあまりお姿を見せる事は無い方で、表舞台からは完全に退いてしまっているらしく。
宮殿内でも、離れに住んでいらっしゃると聞いていたから。
決して追い出されたとかではなく、陛下を偲んで残りの人生を静かに暮らしたいというご本人たっての希望だったらしい。
陛下も殿下も、そう言われてしまえば頷かないわけにもいかず。
結果、お一人で僅かな使用人たちと共に静かに暮らしていらっしゃるのだとか。
そんな方が、なぜ…?
そう思ったのはきっと私だけではなく。
王妃様も、少しだけ困惑しているような雰囲気だった。
「突然ごめんなさいね?嫁いびりをしに来たわけではないから、そう硬くならないで頂戴?ほら、頭を上げて。座って」
「まぁ…!お義母様がそんな事をされるような方だなんて、思っておりませんわ…!!」
言われた通り、二人して顔を上げるけれど。
王妃様は王太后様のことをよくご存じなのだろう。そう言って、急いで否定していた。
その表情は本気でそう思っているのだと、私ですらよく分かるものだったから。
「えぇえぇ、貴女はそうでしょうね。でも、ほら。周りはそうは見ないかもしれないでしょ?」
当然王太后様だって分かっていたはず。
だからちょっとだけ茶目っ気を見せながら、そんな風に冗談なのかどうか分からない言葉を口にする。
「この場にはそのような口さがない者達はおりませんから。どうぞお義母様もゆっくりなさってください」
そう言って王妃様付き女官に目配せをして、急いで王太后様のための席を用意させる。
こういう事が出来るあたり、かなりの信頼関係を築けているんだろうなと尊敬する。
私はまだまだだから。
もっともっと、王弟妃付きになってくれた人たちと時間と信頼を積み上げていかないと。
何気ない王妃様の行動から、私は日々学ぶことが多いのだ。
「ありがとう。ふふ…。アルベルトもアルフレッドも、本当に頑張ってくれているみたいね」
「はい。お二人のおかげで、城内はかなり風通しが良くなりましたわ」
「あの子たちが意志を継いでくれて、きっとあの人も喜んでいるわね」
懐かしむようにそう言う王太后様は、きっと前陛下の事を思い出していらっしゃるんだろう。
私はそもそも前陛下の亡くなられた後に生まれた人間なので、その治世を知らないけれど。
でも陛下と殿下のお父様だから。きっと立派に国を治めていらっしゃったんだろう。
そして、きっと仕事人間だったんだろうけれど。
「カリーナ。貴女とはあまり顔を合わせていなかったわね?」
「はい。お久しぶりでございます、お義母様」
王太后様なんて呼ばれたくないと、私達は二人とも「お義母様と呼んで頂戴」と言われている。
基本的にお会いするのも身内しかいない時なので、ありがたくそう呼ばせていただいているけれど。
やっぱり、長年国の女性の最上位にいただけあって。
お会いするたびに緊張するし、背筋が伸びる。
「貴女とアルフレッドとの仲の良さが、私の離宮にも聞こえてきているわ。あの子を支えてくれて、本当にありがとう」
「いえ、そんなっ…」
というか、どんな噂がそのお耳に届いているんですかね…!?
嬉しいけど恥ずかしくて、つい顔が赤くなるのを止められずに少し俯いてしまう。
「ふふ。本当に愛らしい仕草だこと。アルフレッドや貴族婦人を夢中にさせるのがよく分かるわ」
「お義母様もそう思われますよね…!!」
「えぇ。貴女が口添えしたのでしょう?一度のお茶会で虜になってしまったと、私のところにすら手紙が届いたくらいよ?」
待ってください…。何でお二人して、なんだか意気投合されているんですか…?
あとあんまり持ち上げないで下さい。恥ずかしいんですっ…。
「あ、あのっ…。お義母様は何かご用事があってこちらにいらっしゃったのでは…!?」
盛り上がり続ける二人の会話に耐えられなくなった私は、流石に会話の流れをどうにか変えたくて。
それに突然王太后様がいらっしゃったという事は、何か意味があったはずだと思ったから。
そう、口にすれば。
「あら、大変。すっかり忘れてしまっていたわ」
なんて。
本当に驚いた顔でそう言われてしまえば、何も言い返せない。
ただ。
「貴女にね?一応の忠告をしに来たの」
「忠告、ですか?」
王太后様からの忠告、なんて。
なんだか物々しい気がしてしまって、王妃様と二人小さく喉を鳴らす。
「正確に言えば、貴女達にと言うよりはあの子たちに、なのだけれど……」
そう言って、一度言葉を切った王太后様が。
「いい事?あまりあの子たちの好きなようにさせては駄目よ?」
真剣な顔をして、そう口にした。
…………ん……?
それは、一体……どういう、意味で……?
「王子が生まれたからと言って、臣下達はそれで満足も安心もしないのだから。下手に二人目をなんて言われてしまえば、身が持たないわ」
「…………」
「…………」
王妃様と二人して、顔を見合わせて。
でも何一つ言葉を発せられずにいれば。
「貴女達も知っている通り、二人目を生むまでに十年もかかってしまったのよ。私の場合は毎晩、陛下に子種を注がれていたというのに…」
「まっ…!?」
「毎晩、ですか…!?」
はぁ、と物憂げにため息を吐く王太后様だったけれど、その言葉は私と王妃様にとっては衝撃的すぎて。
それなのにこちらに目線を戻した王太后様は、さらに衝撃発言をしてくれたのだ。
「あら、二人とも他人事ではなくってよ?ただでさえ稀有な能力のせいか子が出来にくいのに、臣下達はそのことに目を向けずに側室をなんて言いだしてくるのだから。そのせいで躍起になった夫に振り回されるというのが、王族に嫁いだ女のもはや宿命のようなものね」
ドゥリチェーラの王族は愛情深いと言われているけれど、いざ自分がその相手に嫁いでみてよく分かった。
確かにあれは、側室をなんて言われたら躍起にもなるだろう。何せ他の女性になど見向きもしないのだから。
ただそう考えると……。
殿下の存在は必死すぎるほど望まれていたけれど、その裏には王太后様の人知れない苦労があったのね…。
そうか。
だからこそ本当は、陛下と殿下への、忠告。
「あの子たちもあの人の子供だから、きっと臣下達にそんな事を言われたら躍起になるわ。その時に好き勝手させては駄目よ?時には毅然とした態度で跳ね除けなくては」
「な…なるほど……」
「ち、ちなみにお義母様は、どうやって跳ね除けていらっしゃったのですか…?」
そこ、大事ですよね?
今ですら殿下に流されてしまう私には、是非ともご教授頂きたい内容ではある。
「そう、ねぇ……。例えば、ですけれど……」
そうして、優雅なお茶会は。
どうやって強引な夫を跳ね除けるのかの、王太后様直伝の講習会へと様変わりし。
周りの女官たちから、それはそれは温かい目で見守られるという。
何とも不思議な空間になってしまっていたのだった。
実は義姉妹だけでなく、嫁姑仲も良い王族でした。