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21.ベッドの中の住人再び

 媚薬を盛られて、苦しんでいるところに。


 知らせを受けて飛んで帰ってきてくれた殿下に。


「で、んかぁ……!あつい、です……たすけて、くだ、さいっ……!」


 そう、涙目で助けを求めた私は。



 結果。



 見事、ベッドの中の住人再び。



「うぅ……」

「カリーナ?どうした?どこか痛むのか?それとも苦しいのか?まだ薬は抜けてはおらぬか?」

「違います……。恥ずかしすぎてっ……」


 覚えている。覚えているのだ。

 必死に助けを求めた結果、それに応えてくれた殿下に。



 それはそれは、もう。


 凄い乱れようで。


 もっともっとと、強請ったことを。



 忘れられたらどんなに楽だったことか…!!


 でも覚えているんだから…!!


 恥ずかしくならないわけがない…!!


「そういうものだ。だから君が気に病む必要などどこにもない」

「でもっ…だってっ…」

「むしろ一人で耐える方がつらかったはずだ。すぐに私を呼んでくれた女官たちに、感謝せねばな」

「ううぅ~~~……」


 そうなんでしょうけど…!!

 経験者が言うんだから、間違いないんでしょうけれども…!!


 恥ずかしいものは恥ずかしいんですよぉ…!!


「カリーナ?可愛い顔を隠さないでおくれ?」

「無理ですぅ~~…。恥ずかしいから見ないでくださいぃ…」

「それは許可できぬな」

「あぁっ…!!」


 あっという間に奪い取られた布団。布団…?シーツ…?まぁ、どっちでもいいけれど。


「君が思いつめるほど、私は遠慮しすぎていたようだからな。どうやらその必要はなかったようだが」

「そっ……それ、は……そう、です、けど……」


 簡単に服は着せてもらってあるけれど、それでもゆったりとしたこれは夜着以外の何物でもなくて。

 そっと私を押し倒してきた殿下が、ゆっくりと唇を重ねる。


 実際私は、以前殿下が媚薬を盛られてから触れ合いが極端に少なくなったことに、不安を抱いていた。

 もうあれからだいぶ時間が経っているのに、あれほど積極的だった殿下が全くと言っていいほど触れてくれなくなって。

 強請らなければ口づけ一つしてくれなくて、抱きしめてもくれなくて。


 それを。


 あろうことか。


 薬に侵されて熱に浮かされたまま、口にしてしまったのだ。


「ん、ぁ……アルフレッドさま……」

「君を不安にさせるような事は、二度とせぬと約束する。遠慮など、しない」

「んんっ…!」


 だから、だろう。

 以前にもまして、殿下は激しい口づけを落としてくる。


「ぁ、はぁ……」

「カリーナ……私の最愛、私の妃。やはり、私は……君に触れずにい続けるなど、土台無理な話だったようだ」

「いや、です……。もっといっぱい……触ってほしい…愛して欲しい……」

「あぁ…。心配せずとも、今後はもっと触れて、今まで以上に愛すると誓う」

「うれしい、です」


 でもそれを、私自身が望んでいるから。

 嬉しいと、心から思ってしまっているから。


 だからそれは、むしろ構わないのだけれど。


「は、あむっ……ぁ、ん……」

「はぁ……」


 この状況は、本当はだめなんだろう。


 だって、今。

 お昼、だから。


「ん…ご、はん……」

「もう少しだけ、このままで…」

「んっ…」


 いやいや、ダメでしょう…!!


 むしろ私のせいで、お仕事お休みさせちゃったんですから…!!


 せめて…!!せめてちゃんとご飯は食べて…!!


「ぁ、んんっ…!!」


 嬉しいけど…!!殿下に求められるのは嬉しいけれども…!!


「はぁ……。……あまり、無理をさせ過ぎてもいけないな」

「は、ぁ……はぁ……」


 だいぶ激しい口づけでしたけれどね…!?

 すごかったよ!?口の中ぐちゃぐちゃにされたよ!?

 というか、息上がって喋れないんですけど…!?!?


「食事はここに運ばせよう。今日は一日君と二人で過ごすと決めたからな。誰にも邪魔はさせぬ」

「っ…!?」


 待って…!!待ってください殿下…!!私それ、知らない…!!聞いてないです…!!


「言ってはおらぬからな。だが皆気付いているので、問題はない」


 私は気づいてなかったんですけど…!?


「カリーナはいいのだ。何も気にせず、今日はひたすら私に愛されていれば」


 決定事項…!?それは決定事項なんですか…!?拒否権は…!?


「……嬉しくない、と?私に愛されるのは、嫌か…?」

「っ!?」


 そんなことないです…!!むしろ嬉しいです!!すごく嬉しいです!!


 必死にぶんぶんと頭を振っていたら、くらっとして。

 幸い横になっていたので、倒れたりはしなかったけれど。


「そう無理をしては、体に良くない。特に薬に耐性がないのだから、完全に抜けきるまでは様子見だ。しばらくは動いてはならぬ」

「え……」

「しばらく影響が続く可能性がある以上、外に出ないのが一番だ。何より体がつらかろう?」

「うっ……」


 そう言われてしまえば、何も言い返せない。


 もっともっとと強請った代償に、私は今完全に立ち上がれなくなっているから。

 前回の時のことを考えれば、三日ほどはベッドから起き上がる許可が出ないだろう。


「動けるようになれば、また菓子作りでもダニエルと戯れるのも、好きにすれば良い。だがしばらくは安静にしていてくれ」

「ぅ……はい…」


 心配そうな表情でそう言われてしまえば、従わないわけにはいかなくて。


 どんな影響があるのか、それ以上に本当に影響が出るのかも分からないけど。

 とりあえずはただの媚薬で、それ以外に変な薬が入っていたわけではなかったと、目が覚めた時に殿下が教えてくれた。

 だからそこは安心しているけれど、そもそもの発端は私がちゃんと異変に気づけなかったせいであって。


「私もしばらく、甘いものは控えます……」

「そう、だな……。犯人と出処を摘発するまでは、しばらく我慢してくれ」

「はい…」


 自分で作れるので、特にそこは困るわけではないけれど。

 せっかく仲良くなったご婦人方やご令嬢に、お手紙でしばらくは控えるつもりだという旨を伝えないと。


 そんなことを、考えていたら。


「カリーナ?私が目の前にいながら、私以外の事を考えるなど、随分と酷い事だな」

「…え!?いや、そんな…!!」

「食事を運ばせ終わるまで……少しばかり、仕置きが必要なようだ」

「えぇぇ!?」


 なんて。

 ちょっとご機嫌斜めになってしまった殿下に。


 本当に食事の準備が整うまで、ひたすら口づけされ続けたわけだけれど。



 …………準備してくれている女官の皆さんがいる前で、でしたけど…!?


 激しくはない代わりに、恥ずかしすぎて顔が真っ赤になったんですけど…!?



 確かに…!!確かに私にとってはこれ以上ないお仕置きでしたよ…!!


 殿下はよく分かってらっしゃる…!!



 でも、同時に。



 ようやく降ってくるようになった、愛情が熱と形を持ったかのような口づけに。


 喜び震える心があったのも、事実だから。



 きっとそれすら、殿下には気づかれていたんだろう。



 二度目のベッドの中の住人でした。


 ただ普段はベッドの中の住人にならない辺り、実はちゃんと手加減はしている殿下なのです。



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