11.血の奇跡の欠点
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結婚してから一年が経とうとしているある日、ふと気付いてしまった。
「……私…何で妊娠しないんだろう……」
普通に考えて、もうお腹の中に一人くらい子供がいてもおかしくない。何なら今生まれていたって何一つ不自然ではないのに。
「もしかして子供が産めない体、とか……?」
考えたくないけれど、でもそうでもなければ説明がつかない。
だって、あんなに、殿下に、その……あ…愛されてるのにっ……。
それ以外は至って順調で、私が提案したお茶会も着々と準備が進められていて。
ただ今回初めてという事で、かなり期間をもらっていた。特にそこで出すお菓子の選定や、誰を呼ぶかの選定はかなり慎重にとのことだったから。
だからその事ばかり考えていて、他の事なんて気にする余裕もなかったはずなのに。
まだお小さいお世継ぎの王子殿下を御連れすることが出来ないのだと、王妃様が少しだけ寂しそうにお茶の時に零していて。
その時は何気なく聞いていたし、出歩けるくらい大きくなったら三人でお茶をしましょう楽しみにしていますと、そう答えたけれど。
部屋に帰ってきてお子様かぁと、可愛いんだろうなぁと、考えていて気付いてしまったのだ。
どうして私には子供が出来ないんだろう、と。
今までだって気づく機会は何度もあったはずなのに。何なら殿下が前に言っていたのに。「子を成す事を望まれている」って。
なのに、どうして今更。
しかもこんな、一人きりの時に思い出してしまうのか。
「どう、しよう……」
もしも本当に、子供が産めないとしたら…?
離縁……は、あり得ないのか。私が血の奇跡である限り、その管理は王族がするもの。
何より貴族令嬢だった場合は、ほぼ例外なく王族に嫁ぐのが決まりみたいだし。
だから大丈夫。
そう思いはするけれど、まるでそれは自分に言い聞かせているかのようで。
実際私の手は、無意識のうちに強く強く、握りしめられていたから。
そう、だから。
私の変化にいち早く気づく殿下が、不思議に思わないはずがなくて。
「カリーナ?」
怪訝そうに呼びかけられたその声に、先にベッドに入っていた私は一瞬体を強張らせる。
昼間に考えていたことを、今この場で暴かれそうな。得体の知れない罪悪感を覚えて。
「どうした?何かあったのか?」
「……いいえ…特に変わったことがあったわけでは、ありません…」
そう、何もなかった。生活には、何も。何一つ。
ただ。
私が気付きたくないことに気付いてしまったこと以外は。
「……素直に言えぬとなれば、私にも考えがあるぞ?」
「っ…!!」
聞こえてきた声は、どこか冷たくて。
嫌な予感がしてそーっと顔色を窺えば、それはそれは綺麗な作り物の笑顔をした殿下がそこにいて。
「あ、の……」
「君がそこまで思いつめるような事だ。放っておいていいこと等一つもない」
あぁ…。全部、見透かされている……。
「アルフレッド様……」
当然だ。殿下が気付かないはずがないんだから。
この人に私が隠し事なんて、出来るわけがない。
「話してごらん?もしかしたらカリーナが考えている以上に、とても簡単な事かもしれないのだから」
「…………はい……」
そしてこの優しさに、私は抗えない。
特に心が弱っている今、一人で抱えられないかもしれないと不安になっている今。
何より私一人だけの問題ではない事だからこそ。
私は言われた通りに、昼間に思った事を正直に殿下に伝えるのだった。
そう、伝えたのだ。
かなりの勇気をもって。
それなのに。
「あぁ、なるほど。その事か」
なんでこのお方は、こんなにも軽い口調で頷いているんでしょうかね?
しかも、だ。
「気にする必要など何一つない。そもそもにして、王族が子を成すというのはそういう事だ」
とか。
「……はい…?」
何も聞かされていなかったし、予備知識だってあるはずがない私は。
つい、そう問いかけてしまって。
でも殿下は特に気にしたような様子もなく。
「周りの誰も、その事を口さがなく言うような事はなかったのではないか?」
「それは……そう、ですが……」
「それはな、カリーナ。宮殿に住まう者達全てが、そういうものだと知っているからだ」
「え、っと……」
「王族のみが持つ、特殊な能力の事は知っているだろう?」
「あ、はい」
私が殿下に嫁ぐ一番の理由になったのだって、その能力を私が持っていたからだ。
本来ならば王族しか持たないはずの特殊な能力。全てを把握できている人はいないのではないかと、そう思われているのだと王弟妃教育で教わった。
「この力のせいなのか、どうにも子が出来にくい体質らしくてな。おそらくは魔力とは別の体系なのだろうと言われているのも、それが理由だ」
「えっと、つまり……?」
「早ければ一年以内に子を宿す事もあるが、まぁ稀な方だろうな。基本的に一年以上はかかる」
「そんなにですか!?」
「そんなに、だ。何せこの能力を生むための力を、妃となった者に注ぎ込み続けねばならぬのだから」
「…………はい……?」
今、ちょっと、聞き捨てならない単語が、聞こえたような……?
「注いでいるだろう?口づけや夫婦の営みで。私の体液を」
「んん……!?」
どういう、こと……!?
「どうやら体液と言うのは例外なく、血液から作られているようでな。血に宿る力だ。注ぐにも一度血であった必要があるのだそうだ」
「え……えええぇぇーーーー!?!?」
じゃあちょっと待って…!!まさか所かまわず口づけされてるのって、そのせい…!?
「いや、違うぞ。単に私が君を愛したいだけだ」
「ソウデスカ……」
ただの愛情表現が、激しすぎる……。
「とはいえ、カリーナの場合はまた異なる理由もあるな」
「異なる理由、ですか?」
「あぁ。何せカリーナは血の奇跡だ。その場合、さらに子が出来るのは遅くなるらしい。必ずではないらしいが、詳しい事はまだ誰にも分からぬ」
えぇーー……。
「お互い特殊な能力を持っているために、もしかしたら王族の血そのものに染まりにくいのかもしれぬ」
「王族の血……」
「私の持つ血の力が、カリーナの持つ血の力と相殺し合う可能性がある、と言う話だ」
「それだと…………子供、出来なくないですか……?」
不安になって問いかければ、優しい目をした殿下がそっと私の頭を撫でて。
「案ずる必要はない。王族が子を成せなかったという記録は、今のところ存在せぬからな」
そう、教えてくれる。
「とはいえ長くて五年かかったなどという話も、割とよくある。だからこそ簡単に子が出来ずとも、誰一人焦ったりはしていないのだ」
「五年……」
それは……周りは良くても、本人はつらいんじゃないかな……?
愛されているのに。欲しいのに。
望んでも子供は出来ない、なんて。
待ち続けたその人たちは、どれだけつらく寂しい思いをしていたんだろうか……。
なんて。
もしかしたら自分もそうかもしれないなんて、他人事に思えなくて考え込んでいたのがいけなかったのかもしれない。
「それでも不安だとカリーナが言うのであれば、仕方がない。一日でも早く子が出来るように、私も君を安心させてやらねばな」
「……はい…?」
気づいた時には、もう遅い。
「今日もたっぷりと注いであげよう。私の愛と、王族の血の力を」
「え…?んぅっ…」
言うが早いか、私は殿下に優しくけれど軽々と押し倒されて。
口づけも、それ以上も。
宣言通り、たっぷりと愛を注がれたのだった。
最近の殿下は積極的過ぎますね(笑)




