表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/92

10.甘さ控えめはどのくらいからですか?

 前回に引き続き、殿下がえr……あ、いえ…。

 その…え、っと……。


 す、砂吐き注意です…!




「ぁ、ぅん……あるふれっど、さまぁ……」

「はぁ……カリーナ?そのように可愛らしい声で、私を誘わないでおくれ?」

「ぁ、ン……さそって、なんか……」

「誘っているよ?可愛い可愛いカリーナ。私の妃」

「ん、っふ……」


 真昼間なんです、今。

 信じられます?殿下昼間っから、こんな感じなんですよ。


 ちなみに言うと、ここは王弟殿下の執務室。

 ちょっとお呼ばれされて席を外しているセルジオ様のせいで、殿下のキスが止まらない。


 セルジオ様がいれば…!!何とか止まってくれるのに…!!


「は、ぁ……」

「どこもかしこも……吐息すら甘いのだな。私のカリーナは」

「ぁ、ふ……」


 離されたと思ったら、また塞がれて。

 合間に少しだけ言葉を零したかと思えば、すぐに甘い口づけが再開される。


 優しい、けれど。強引では、ないけれど。


 止まらないそれに、頭がくらくらして。


 私の限界は、すぐそこまできていた。


「ぁ、だめ……んっ……も、むりぃ……」

「無理ではない。いっそ私に身も心も全て委ねてしまえばいいのだ。ほら、カリーナ?」

「っ……」


 背中が震えそうなほどの色気を伴って、唇が触れ合ったまま囁かれる。



 あぁ、もう、だめだ……おちる…………



 そう、思った瞬間。


「殿下!?一体何をされているのですか…!!」


 聞こえてきた声に、ようやく正気を取り戻した。


 私も、殿下も。


「……セルジオ…いいところで邪魔をして……」


 ごめんなさい、訂正します。

 殿下は正気じゃなかった。


「何を仰っているのですか!!あぁっ…!!妃殿下がぐったりしておいでではないですか…!!いくら何でもやりすぎです!!」


 あぁ、常識人。常識人がここにいる。


「ソファでも仮眠室でも、カリーナを休ませてやれる。問題はない」

「問題あります!!時間通りに妃殿下がお戻りにならなければ、他の者達が要らぬ心配をしますよ!!」

「私に愛されているせいだと正直に言えば良い」

「いいわけありません!!この間の事といい、殿下はいい加減妃殿下のお体の事も考えて下さい!!」


 セルジオ様、それは言わないで下さい。恥ずかしくて顔を上げられませんから。


 この間のお仕置きと言う名のあれやこれやで、すっかり参ってしまっていた私は。

 その後も、いつも以上に、その……あれですよ、あれ……。く、口にするのも恥ずかしい状態に、なってしまっていて……。


 結果、翌日の休憩時間は全て取り消し。

 殿下は当然のように休憩なしで働いていたそうです。


 そこは殿下が自分で蒔いた種だから、仕方がないとして。


 私が休む理由を、当然のように全員に知られているという事が。

 もうどうしようもなく恥ずかしくて恥ずかしくて。


 しばらく外に出たくないと、拗ねた私に。

 それなら他の男に見せなくて済むからいいと、割と本気で殿下が言い出したので、私の方が先に折れたという経緯があったりする。



 というか、そもそもなぜこんなことになったかと言えば。



「アルフレッド様の甘さ控えめはどのくらいからですか?」


 という、ごく普通の問いかけが発端だった。


「甘さ?ふむ……」

「甘いものが苦手なのは知っています。なので逆に、どの程度であれば口にできるのかと思いまして…………」


 途中で言い淀んだのは、驚いたようにこちらを見ている淡い瞳と視線がぶつかったから。


「あの……?」

「気付いていたのか?私が、甘いものが苦手だと……」

「え?あ、はい、まぁ……。なので私、ハチミツの件以降甘いものをお出ししたことはないと思いますが……」

「…………そう言われてみれば……確かに、そうだったな……」


 え、むしろそっちに気付いていなかったんですか!?殿下が!?


「珍しいですね」

「……いや、そうでもない。殊カリーナに関して言えば、私はかなり盲目になるらしい」

「……そう、なんですか?とはいえチーズがお好きなのは割とすぐに分かりましたけど、甘いものは媚薬の件を知るまで気づきもしませんでしたよ?」

「…そう、だったな……。好みを早い段階で知られた事には、気付いていたが……。私としてもその方が何かと便利だったので、何も言わずにいたな…」


 今ならどうして食べ物の好みを知られないようにしていたのか、特に嫌いなものを知られないようにしていたのか分かる。

 そもそも甘いものが苦手だから、甘い香りの媚薬を簡単に避けられるのであって。それが知られてしまえば、今度はどれに薬を盛られるか分からないから。


 だから、誰にも悟られないようにしてきた。


「だが、まぁ、そうか……甘いもの、か……」


 この時、私は気づくべきだったのだ。

 この殿下の言う"甘いもの"が、既に食べ物の事ではなくなっていることに。


「はい。なので教えていただけませんか?アルフレッド様の思う、甘さ控えめを」


 でも気付かない私は、無邪気に問いかけた。


 問いかけて……。


「ふむ…。なるほど、いいだろう。私にとっての甘さ控えめとは……」

「甘さ控えめとは…?」

「……この程度、だな」


 唇に降ってきた、触れるだけの口づけ。


「…………え……?」

「だが菓子はともかく、君と言う甘さであれば……控える必要など、私には一切ない」

「え、ちょ、まっ……!!」


 遅かった。

 そう、既に遅かったのだ。


 気づくのも、止めるのも。


 すぐにおかしいと思うべきだった。

 お菓子の話なのにと、抗議すべきだった。



 それを、しなかったから。



「妃殿下への負担を減らしてくださいと申し上げているんです!!」

「毎回ではないのだ。たまにくらい許せ」

「一度の限度を超えないように調整してください!!」


 今、こんなことになっているわけで。



 と、いうか、ですね。


 セルジオ様、それじゃあ結局同じ事です。


 分散するか、一度に来るか。


 その違いしか、ありませんよ…?



 本当は違う目的で聞こうと思っていたのに、結局分からずじまいだった。



 殿下の思う甘さ控えめって、本当にどのくらいからなんだろうか……?




 セルジオの仕事に、殿下のストッパーが追加された…!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読む側はエロいのは良いけど、王子は節度がほしいですな(笑) セルジオが過労で倒れてしまいそう(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ