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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
蒸気機関車 編
7/51

第七話 その国の名はコールランド

男が広野を走ること数日、50里を行く。また、その隣には相棒とも呼ぶべき存在が一人。

それほど長く共に居るわけでも無いが、鉄板が曲がりかけ排気用のパイプは潰れかけていた。

そう彼はロウボットである。

名前はロウ、ロウボットだからロウ。

名付け親である彼はこの名前がかなり気に入っているようでことあるごとに名前を呼んできた。

彼らは村から逃げてきた。否、ホロウスの軍勢から逃げているのだ。


挿絵(By みてみん)


北のホロウス、南のコールランド。この二国間での争いは未だに収まらない。

彼らの村はホロウスの軍勢に滅ぼされた。生き残りは恐らく彼とロウの二人しか居ない。

彼の名はグレン。ホロウス…いやホロウスの将軍、グレンダ・ラヴクラフトに復讐を誓っている。

名は似ているがこの名前はホロウス帝国では一般的なものなのだと言う。

男児にはグレン、女児にはグレンダ。

どちらもホロウスの英雄の名から借りており比較的人気な名前らしい。

そのグレンは今、コールランド領のバンの大炭鉱付近の木陰で休憩中のようだ。


「だいぶ逃げてきたな…」


『イエス、マスター』


地図も無い、お金も無い。持っている物は修理用の工具一式と餞別に貰ってきたルビー一つのみだ。


「でも、もう少しで町の一つでも見つかるはず…」


『…』


「どうした?ロウ。調子でも悪いのか?」


『イエ、問題アリマセン』


「そうか、じゃあ行こうか」


『イエス』


日も昇ってきた頃、グレンたちは再び旅立った。コールランドが炭鉱の国と呼ばれる所以はこの大地にある。

平地が少なくゴツゴツとした岩場と山が多い。さらに、コールランド東部から南西部にかけて連なる山々からは鉄鉱石や石炭が大量に取れることで有名だ。

故にロウボット産業が盛んに発達していった。


「っと、岩場が複雑になってきたな…」


『マスター、背中二』


グレンがロウの背中を伝って岩を登る。一方、ロウはジャンプで岩に飛び乗った。少しぐらついたが流石の性能でテンポ良く飛び乗って行った。


『マスター、コレハ?』


かなり高い所まで登ってきたようで一気に景色が広がった。

ロウの指差す方角を見てみるとかなり大規模な炭鉱が現れた。

巨大な山を囲うように敷かれたそのレールの上には大量の鉄鉱石を乗せたトロッコが走っていた。


「これは凄いな…これだけ巨大な炭鉱は中々見られないぞ…!」


『ジェム村ノ炭鉱ヨリモオオキイ!』


確かに、かつてのジェム村の炭鉱よりも百倍…いやそれ以上に大きく見える。

元炭鉱夫のグレンにもこれにはどこか思うところがあるのだろう。


「ロウ!あそこに行ってみよう!」


『イエス!マスター!』


その巨大な炭鉱を目にするとグレンとロウはそこへ向けて走り出した。

程よい坂道が足取りを軽くさせる。

隣ではロウが足裏の鉄板を磨り減らしながらズルズルと滑っている。

またプレートを交換しなくちゃな、とでも言いたげにグレンはそれを見る。

麓まで降りてくるとその炭鉱の全貌が明らかになった。


「これは…」


炭鉱では数百人、数千人にも及ぶ炭鉱夫たちが働いている。それほど巨大な炭鉱なようだ。


「あの…すみません。バンまでの行き先を知りたいのですが…」


「後にしてくれ、ああ忙しい!忙しい!」


行き先を聞いただけなのだが変に忙しがられてしまった。

バンと言うのはコールランドの首都の名前だ。もっともグレンにとっては話に聞いているだけで実際に見たことは無い。


「おっと、すまない」


「いえ」


「ってなんだ、このロウボットは!」


威厳のある初老の大男にぶつかられるがどこか優しい口調で話しかけられたがまた別の炭鉱夫に割り込まれてしまった。

容姿からみてダンカン親方とは年が近そうな印象だ。


「ゲイラーさん、第一炭鉱の決済が終わりました!」


「ふむふむ…七千六百万c…か。昨日よりも5%ほど落ち込んでいるがどうした?」


「いえ、ペースは変わっていないのですが…」


「そうか、とにかくご苦労。持ち場に戻れ」


「はい」


班長と思しき炭鉱夫が決済の報告をするとそそくさと持ち場に戻っていた。


「おっと、ごめんよ。で、君は誰だい?見たところここの炭鉱夫ではなさそうだけど」


「グレンです、こっちは相棒のロウ」


「ほう…ロウボットを相棒と呼んでいるのか…。しかし、見たところ君も炭鉱夫のようだが…」


「少し前までホロウスの炭鉱で働いていたんですでも…」


「ふむ、なにか事情がありそうだね。事務所で話しをしよう。お茶でも出そうか」


「あ、ありがとうございます」


言われるがままに事務所へと案内された。

この国の一産業を支えるだけあり、かなり豪華な事務所だ。

そして案内された応接間と先ほどの炭鉱夫との会話からグレンはゲイラーと呼ばれた大男の役職をなんとなく察していた。


「で、グレンくんと言ったね。話を聞かせて貰おうか?」


「実は…」


自分の住んでいた村が焼かれたこと、ホロウス軍に追われていること。ここにたどり着くまでの全てをグレンはゲイラーに話した。


「ふむ、それは大変だったね。もしかしてだけどその親方さんの名前ってダンカンじゃないか?」


「!?親方を知っているんですか!」


「ああ、もちろんさ。彼とは長い付き合いでね…そうか…ダンカンが…」


『アマリ気ヲ落トサナイデ下サイ』


「ロウボットが喋った!?まさか、そんな…」


やはりこの人物も喋るロウボットに驚いたようだ。それでいて何かを知っているような素振りも見せた。


「これも何かの縁だ。君たちにこれを見て貰おう」


彼はそう言うとグレンとロウを事務所から離れた整備室に案内した。

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