第四十一話 藍の対峙
まるで閃光のように輝く二機のロウボットはロディニアの山々をかけていた。
藍色の巨腕が大きく一回転するとロウの左足へと直撃した。それからロウはバックパックの火力を底上げするとグレンダの機体へと直進していった。僅か一瞬、僅か一瞬だが体勢が崩れた。これを見逃さなかったグレンは咄嗟にロウに指示を出す。反対にシールドを展開するグレンダ。ロウは右腕の粒子波動砲の砲身を藍色の機体へと向けた。シールドに気がついたグレンはロウを右に旋回させながら今度は左腕をドリルへと変形させる。
そして回転させながらシールドにドリルを当てるとまるで硝子を割ったような鋭い高音が山々に轟いた。
グレンダの機体が見えた。それから再び粒子波動砲を構える。砲身は既に藍色のフェイスの目の前にあった。勝負あったか!?二人の戦いを見ていた艦隊の軍人は誰もがそう思った。
だが、次の瞬間…粒子波動はフェイスの右頬をかすっていた。
「くそっ!外れたか!?」
『ソンナ…!確カニ当テタハズダ!!』
「危なかった。これが直撃していたら私は死んでいたな…貴様、なぜコックピットの位置が分かった?」
「河口大戦の時だ!あの時、お前は俺と対峙した!俺はまだ覚えてるぞ、お前の機体の左腕を折ったこの感触を!!」
グレンダは一瞬だけ悔しそうな目を見せる、そして赤い髪を靡かせながらこう言い放った。
「失策だったか…」
「そうだろう!俺はお前に復讐をする為だけにこの人生を捧げてきた!生きてて良かったよ、これでお前を殺せる!」
そうしてグレンとグレンダの戦いは第二ラウンドに突入していった。
ロウは翼に身を任せて藍色の機体の周りを一周しすると脚部に備えられているレーザー光線を発射した。時間差がありながらも全てグレンダの機体に直撃し、芸術的な爆発はやはり軍人たちを魅力した。
「すげぇぜ…あの小僧。グレンダ様を圧倒してやがる…!」
一人の軍人が言った。
「敵ながら見事だ」
「おい…どうするよ?俺達も応援に向かうか?」
「いいや、そんな無粋なことをしなくてももうじき決着するだろう」
次にはグレンダが反撃に出る。既に機体には黒い煤が出来ていた。
「これで終わりだと思うなよ!グレン・ルークラフト!!変形、インディゴ06-Re.scale!」
その時、彼女の機体は光に包まれた
そして、無数の鱗状の盾が現れた!
「あいつも姿を変えられるのか…!ならこっちだって!ロウ、真紅色!ロッソの魂を受け継いでゆけ!」
ロゼッタの光がロウを優しく包み込んだ。
懐かしきその姿は彼らの戦闘力を上げた。
藍と真紅が対峙する。
「ほう…それがロウ真紅色か。サイラスのレポートで知っていたが…まさかな」
「戦いの続きです。さあ、かかってきて下さい!」
ロウが拳を構える。機動性の高いこの形態は戦いを加速させる。
しかしその欠点は熱暴走。燃えるような赤色はまさに炎を纏っているかのような風貌だ。
「むっ!」
最初にグレンダが動いた。
鱗状の盾は彼女の機体の周りを旋回しながら巨大なドームを作り出していた。
それでもロウの拳は鋭く、正拳付きをしてみせると鱗の盾を二つ破壊。さらに体勢を建て直すと続けて攻撃を開始した、鱗は段々と剥がれ落ちていく。暫くロウに攻撃させるとグレンダは遂に反撃に出る。ドームを解除させると次には鱗は巨大な槍と化したのだ。もちろん、質量は無い。が、しかしグレンダが腕を大きく掲げるとそれが命令となり槍は疾風の弾劾となってロウの眼前に飛び出した。
「危ねぇ!」
この瞬間、ロウは更に姿を変えた。
再び翼を持って空へと鱗の弾劾を回避したのだ。
「天使翼か!」
「知っていたんだな!」
インディゴ06は空を見上げる。
そこにはバックパックで浮くロウの姿があった。逆光も相まってかその姿は伝説上の存在『天使』のように見える。
この間、僅か二秒。ロウは際限無く次の攻撃を下す。両腕のレーザー砲が牙を向き、インディゴ06に襲いかかる。それは審判を下す天使の姿そのものだった。
「くっ…これ以上はスケイルが持たない…!」
「変形、真紅色!行けぇぇぇぇぇぇぇ!!」
天空でロウは再び真紅色の形態へと変化し、流星の如くインディゴへ降りかかる。
「最大防御!!」
青いパネルが展開されて彼女の機体にはシールドが現れた。衝撃波も既に蒼く、もう一方の紅い拳を振りかざす機体と対になるような位置へとぶつかる。
「絶対に負けられねぇんだぁぁぁぁぁ!!!」
「私だって!もう後が無いのよ!!」
意地と意地のぶつけ合い、互いに先を譲らない。火花が散るなか、二機は爆発する。山々に轟音が響き渡ると同時にやはり艦隊の軍人たちはその光景に魅入られていた。
「すげぇよ!まるで花火だ!」
「余所見するな!ノアが動き出したぞ!」
中佐は魅入られてた部下を目を覚まさせる。
それとほぼ同じ瞬間、大空挺からの無数の閃光がホロウスの艦隊たちを貫いた。
戦況は機甲団が押しており、戦いは大空へと変遷していったのだった。