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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
THE INFINITY
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第四十話 終局への序曲

長かった艦内生活も終わりを告げ、グレンは久しぶりに大地に足を着けた。

あの大戦以来、大陸には乾いた赤土が残るのみでこの土の瑞々しさは実に久しいものだ。

そんな地理を持つ帝国ホロウスが世界最強の国家で居られるのはやはりロゼッタストーンの存在が大きいのだろう。今ではロゼッタ粒子が遺伝子に組み込まれた新人類"エル"がその主導権を握り国を動かしている、それも僅か八歳に満たない子供たちがだ。彼(いや彼女と言った方が良いのだろうか?)らは男性器と女性器の両方を兼ね揃える特殊な身体構造をしている。これは半陰陽の構造に酷似しているが彼らの体は人工的に組み込まれたものだった。

かつての大戦のNWaNm作戦、その計画の真意は大陸全土にロゼッタ粒子をばら蒔き、新生児の体に定着させることだった。妊婦の体から吸収された粒子は胎内で合成される。

だからあの大戦以降、両性の特徴を併せ持つ赤子が産まれているのだ。


────────────────────


「ノア着陸、ロディニアに辿り着いたようです」


「了解。では第一作戦艦隊を浮上させろ!」


「イェッサー!」


────────────────────


けたたましい銃声と共にノアの影に潜んでいたホロウスの艦隊が姿を表しはじめる。

未だロディニアの外は分厚い雲海に囲まれていて、そこにはサイレン音が鳴り響き戦艦は大地への攻撃を始めていた。


「機甲団!貴様らの大空挺は我らが包囲した!大人しく屈服しろ!」


それは、グレンには聞き覚えのある声だった。


「この声…グレンダ!でも、いやまさか…」


「落ち着け、グレン!今はやつらから逃げるんだ、良いな?俺達は今からこのノアであの艦隊を殲滅する!お前はロウと共に大陸の奥に進むんだ、俺らが絶対にあいつらを近づかせない!」


「ジャック…!…分かった、ロウ行こう!」


『イエス、マスター』


グレンとロウはノアの裏口に向かって走る。

何重にも重なる扉をこじ開けるとそこは格納庫だった。今はもうロウボットはグレンのロウしか残っていないがまだ拡張パーツは残っていた。

彼は出動用のゲートを開く、そして下を覗く。着陸したと言ってもまだ地面は遠い。風も強く、今にも落ちてしまいそうだった。


「これは…飛行用の拡張パーツが必要か。確か…あー、どこだったっけかなぁ…」


『マスター!コレデハ?』


「ん…あっ!それだ、それ!ロウ、ナイス!」


彼はロウから拡張パーツを受けとるとデッキのクレーンにくくりつけた。それからパネルを操作してロウの背中へと近づけた。


「ロウ、もう少し右!あ、そこだそこ!よし、そのまま動かないでくれよー!」


『リョウカイデス!』


飛行用エンジンのバックパックを二対背中に取り付ける。それともう一つ、空気抵抗を抑える為の翼を取り付けていた。これはかつてグレンが八年前の大戦で対峙した鳥の翼を持つホロウスのロウボット(通称、鳥翼のロウボット)からヒントを得た機甲団が量産したパーツだった。

あの機体は恐らく鳥をモチーフに製造された物だと考えていたが形は歪だった。体は通常のロウボットのように人を模した形だが両腕は彼らがよく知る翼を持っていたし両足には鳥類のような鉤爪が付いていた。


「こうして見ると…やっぱり天使を思い出すな」


そう、そのシルエットは教会が所持する教本に描かれる天使と呼ばれる存在によく酷似していたのだ。それはバックパックと翼を取り付けたロウも風貌は同じく見えた。さしづめ、ロウ天使翼(エンゼルフェザー)と言ったところだろう。


「さて、行くか。ロウ?」


『マスター、ヘルメット ト ゴーグル ヲ忘レテマスヨ!』


「あ、そうだった!よし、これでオーケー!」


『ジャア、行キマスヨ!』


「うす!」


グレンはロウの背中の取手を掴むと安全装置を付けた。そうしたのをロウが確認すると勢いよくゲートから外へと飛び出したのだった。



風が心地よい。そう思ったのも束の間、何か熱い物がグレンの左頬を擦った。

そこから流れ出る液体を体に感じ、それがロウ背中に流れ落ちるとその正体が判明した。


「血!?まさか!」


彼は後ろを振り向くとそこには一機の藍色のロウボットが飛んでいた。


「グレンダの機体か!ロウ、行けるか!?」


『任セトケ!』


「来るぞ!」


彼女の機体がこちらに銃口を向けたのを確認するとロウを右に傾けた。それとほぼ同時にレーザーが飛んできたのだから流石の危機察知能力と言ったところだろうか。

続いて第二波、第三波と飛んでくるが難なく避ける。


『避ケテルダケジャア!始マラナイ!』


ぐるりと旋回するとロウは藍色の機体インディゴの前へと躍り出た。それから右腕のレーザブレードを展開するとグレンダに斬りかかった。


「流石の腕前だな、グレン!そしてロウ!」


「ああ、そうさ!俺はお前に復讐する為にだけに生きてきたんだ!そう簡単に死なれちゃあ、困る!」


一瞬の気の緩みが戦いの決着をつけそうな様子だが、二人には喋る余裕すらもあった。

ロウがインディゴの左胸の装甲に傷を与える。

インディゴの散弾レーザーがロウの装甲に弾かれる。グレンが優勢に見えた。


「さて…まだまだこれからだ!」


『行クゾ!マスターグレン!』


加速するロウ。しがみつくインディゴ。

取っ組み合いをする二機の戦いの舞台は大陸の奥へと変わっていったのだった。


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