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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
河口大戦 編
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第二十二話 気上降下

「先ずは君にこの酒場の使い方を教えないとな」


ローランがそう言うとワインを一本、棚に嵌め込んだ。すると地鳴りが聞こえてくる。地震か!?と焦るグレンであったがそうでは無かった。周りは皆立っている。


「椅子に座ってると危ないぞ!」


「え?」


え、と言おうとした瞬間、座っていた椅子が急降下し始めた。呆気にとられて転がり込む。

痛てて、と立ち上がると今度は目の前にあった筈のカウンターが無くなっていた。いや、これは収納されているのか?


「店が…無くなった…!?」


周りを見渡すと店内がもぬけの殻になっていた。その姿はまるで引っ越してきたばかりのぼろ屋敷だ。


「驚いたかい?うちは非公式の組織だからね政府にとってはマフィアとそう変わらないのさ。だからガサ入れをされる前にこの形にカモフラージュするんだ」


なるほど、確かに。とグレンは納得する。

ぼろ屋敷もとい機甲団隠れ家、さらにローランがワイン棚の左から五段目のワイン瓶を取り出す。するとどうだろう?今度はベニヤ板の床が段々に下がっていき地下への階段が現れた。


「さっ!入った入った!」


ローランに言われるがまま、グレンは階段を下ってゆく。

ベニヤ板の床とは対称的に内部の壁は機械的な物であった。鉄パイプのダクトが無数に繋がっている、どこに続いてるのだろうか?

謎に包まれた機甲団隠れ家、細長い通路を抜けるとグレンの目の前には巨大な工場のようなものが現れた。


「これは廃工場ですね、でもなんでこんなところに…?」


「驚いたか?ここを発見した時は俺らも驚いたものさ。なんせコールランドの技術力では無し得ないような機械的かつ大規模な工場跡だからな」


工場…というより工廠に近い気もするがいづれにせよこの場所はまさにオーパーツ、オーバーテクノロジーだ。

錆び付きの少ない鉄階段を降りていく、これは機甲団が配置したものだろうか?まだ新しく見える。


「ここだ」


"ファーストゲート"と刻まれた大きな扉をくぐる。照明パネルに反射して白く輝くその巨人の姿に圧倒される。


「これも、ロウボットだ」


その大きさは規格外、通常タイプのロウボットは大人二人分ほどの大きさだ。とてもこいつ一機が自律して動くとは思えない。

と、魅力されるグレンの前には見覚えのある整備士が作業をしていた。


「やあ、久しぶりだね」


「あっ!貴方は!」


グレンは一度彼と会っている。ニッコリを笑う顔には文字通り「また会ったね」と書かれている。

そう、彼はゴルドガルドでロウを修理したあの整備士だ。


「大変だったね、ロウくんが消えたんだって?」


「お!なんだお前ら知り合いだったのか!」


「そうなんですよ団長。ほら、この前話した黄金腕をカッコいいと言ったお客の話、覚えてます?」


「ああー!そうか!思い出したぞ!」


ローランとの会話が盛り上がる彼。胸ポケットのネームプレートを見ると「ジャック」の文字が見えた。


「ジャックさん…ですか?」


「あっ、まだ名前を言ってなかったね。そう、僕の名前はジャックだ。ま、偽名だけどね。でも大丈夫、気軽にジャックって呼んでよ?」


「はい、ジャックさんよろしくお願いします」


「さん、は余計だって!」


ハハハハ!と笑いが起こる。グレンとジャックはお互いに握手をすると機甲団の硬い絆が結ばれた。


「さて、まだ君の名前を聞いていなかったね?」


一段落が付くと、今度はグレンに名前を問うてくる。


「僕の名前はグレ…」


「グレン・ルークラフトだね?」


「なっ!なんで知ってるんですかっ!?」


ローランがふざけたように一笑いしながら名前を答えるとグレンのフルネームを答えた。驚愕して腰を抜かしそうになるグレン。一体なぜ知っているのか?今度はこっちから問いただしてみた。


「ほら、この手配書を見てごらん?おまえさん、有名人だぞ」


渡された一枚の紙切れをまじまじと見つめる。


大陸国際指名手配犯

少尉殺し

グレン・ルークラフト

罪状:殺人、第一級窃盗

懸賞金 1,050,00,000cains


大陸国際指名手配とは…またもや厄介な書種だ。だが、殺人には思い当たる節があるものの窃盗とはどういうことだろうか?


「これはホロウスが出した手配書でね、つい先日コールランドに差し出してきたのさ」


「少尉殺し、か。この罪状は重いねぇ。なにしろホロウスの幹部を殺したんだ、このコールランドにいる以上国際問題に発展するのは時間の問題だな」


次の瞬間、手配書を投げ出し走り出した。カンカンと地面が鳴り響く、古びているせいか所々鉄板の凹みが多くつっかえそうにもなる。


「待て!どこに行くっ!」


「安心してくれ、僕たちは君を捕まえたい訳じゃあ無い…!」


違う、グレンは逃げているわけじゃ無い。彼が向かった先はコールランド軍ゴルドガルド支部だ。とはいえそんなことはローランとジャックには分からない、彼らにはただグレンが逃げているようにしか見えていない。


「参ったな…あいつ完全に勘違いしてやがる…」


と困った表情をしている一方でグレンは力強く酒場の扉を突き開けると一目散に走り出したのだった。

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