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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
金色王 編
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第十九話 絶望を送りし王

泥臭い水を顔にかけられると目を覚ました。


「おい、起きろ。ボスがお呼びだ」


黒服にサングラスを掛けた、いかにもな男がグレンを呼びに来た。

奴隷を扱うかのように極めて乱暴な扱いをされると背中にハンドガンを突き付けられながら牢を出る。

牢から出て左手にある石畳の階段をコツコツと登っていく。


「…」


所々体が痛む、言葉も出ない。下を剥いてただひたすらに階段を登る。随分と長い階段だ。だが、地上が見えてきた時、グレンは自分の居場所を把握したのでだった。

外に出ると向かい側は岩壁、真下にはすぐ地面が見える位置だった。つまるところ、ここは渓谷最下層なのだろう。反対に真上を見上げると何層にも重なるプレートの町が、そして右上に見える見覚えのある橋はグレンたちが居たはずの段々畑へと登る橋だった。


「歩け」


「つ…」


この一言が強烈だ、歩けと言われただけだが変に高圧的だ。やはりマフィア。

男が床にハンドガンを向けると一発だけ撃つ。パンッ!という音と共に石片が舞い上がる。

威嚇射撃だ。

グレンは再び黙って歩き出す。

岩壁沿いに架かる階段を登ると側面には大きな屋敷が見えた。

男は五回ノックをすると合言葉を言い放つ。


「合言葉は?」


「埋蔵金は星の上」


「入れ」


屋敷の中には武装した黒服の男たちが。そのまま幹部室と書かれた部屋へ連れていかれる。

物々しい扉を開けると張り詰めた空気が肌に伝わってくる。幹部と思われる人間が7、8人座り中央にはボスと呼ばれた男がプレッシャーを放つように座っている。

白髪混じりの髪に左頬には裂けたような傷痕、左腕は…これは義手なのか?とにかく身体がボロボロだ。


「こいつが…?」


「ほう…こんな若造が…」


「…」


「目覚めはどうだい?グレン・ルークラフト」


見るからに武道派な男、美麗な女幹部、寡黙な幹部、そしてグレンを襲った盗賊たちのリーダー。大幹部の四人がピストルを構えると躊躇無く発砲した、威嚇射撃だが一発はグレンの頬をかする。

すると端に座る幹部が口を開く。


「やめておけ…そいつは手強いぞ。なんでもあのサイラス少尉を殺したとの噂だ」


「ハンス…貴様いつからそんなに偉くなったんだ?」


「ふん、大幹部がそれだと組織も腐敗するな」


「貴様っ!」


逆上した武道派の大幹部が末端の幹部の胸ぐらを掴むと壁へと投げつけた。

よくある組織の上下関係の様子だ。もっともこんな暴力はマフィアやギャングでしか見られないのだが…。


「痛ったいなぁ…」


痛いとは言ったものの動じてはいないようだ。その様子が気に入らなかったのか脳天をハンドガンで撃ち抜いた。どろどろと流れ出る血にグレンは目を背ける。


「…」


幹部たちはゲラゲラと嘲笑っている。


「今よりハンス一族を破門にする…」


これまでの様子を見ていたボスがついに口を開いたと思ったらいきなり破門の宣言だ。幹部たちは皆拍手をしている。

全会一致のようだ。


「さて…見苦しかったかね?」


「い、いえ…」


ボスが話始めると皆黙り混む。


「一つ問おう、こいつは貴様のロウボットか?」


「ロウボット…?」


まさか…!と口を開こうとした瞬間、背にある扉を破壊しながら巨大な何かが侵入してくる。

ボスはニヤリと笑う。

グレンは後ろを振り向いた。

そこに立っていたのはロウ。


「お前のだろう?」


果たしてここで答えて良いものか…目の前にいるのはれっきとしたマフィア、答えによっては殺される。そう覚悟していた。


「…」


「違うのか?そうか、そうか。ではやはりこれはホロウス軍の所有物なのだな」


間違っちゃいない、確かにロウのCPUはホロウス軍の戦場で拾ったものだ。それは軍にとって重要な機密なのかもれない。


『…』


ロウも喋らない。


「のう?"タブー"よ」


『イエス ボス』


「ロウ!」


ロウはタブーと呼ばれ、そしてボスに従っている。洗脳か?記憶操作か?


「ほう…お前はロウと呼んでいるのか?」


ロウとの関係性を感づかれてしまう。

おや?と言う表情をし始める幹部たち。

ざわざわと小言を言い出してくる。


「嘘は良くないねぇ…グレンくん」


「本当だな」


嘘だと分かると表情が変わる。一発触発、絶体絶命、ハンドガンがグレンに向けられる。


「いでよ!金色兵(ゴールドマン)…!」


もう片方の壁、ボスの背からはもう一人のロウボットが突き破ってきた。

金色に輝くその姿は目が痛くなるほどだ。

二体のロウボット…対立するでも無くグレンを囲んでいる。


「お前たちは何がしたいんだ!」


「答える云われは無い…お前はただ、タブーを我がゴルドマンズ会に委ねれば良いだけだ…」


「なぜ!」


「タブーはこの世界を壊しかねない存在だ。その力を一個人に任せるには危険すぎる」


「ロウが…世界を破壊する存在…」


「そうだ」


文字通り崩れ落ちるグレン。ボスの口から語られる衝撃の事実にただ呆然とするしか無い。

深い闇の中に落ちていくように気を失っていく、疲れも溜まりただ倒れ込む。

最後に見た光景は美しく光輝く、黄金のロウボット。ボスが繰る、それはまさに金色の王だった。

金色王編完結です。

今回はかなり短い章となりました、次回は少し長編になりそうです。

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