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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
金色王 編
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第十六話 金の使い道

「何っ!?サイラスが死んだだと!」


「はい、グレンダ大佐」


「それは確かな情報なのかっ!」


怒るグレンダ。サイラスによるゴルドガルド進行作戦は失敗に終わった。

部下を喪った悲しさは無い、冷徹な表情を見せる。


「だが…データは取れた。セラドンの複製を急げ!」


「はっ!では整備長にその旨を伝えます」


「それと例の機体の調整を!」


「イエス、大佐!」


再び動き出したホロウス軍、コールランドとの争いはまだ続く。


───────────────────────


金に囲まれた町…と言えば聞こえは良いがこの地での金の価値は鉄屑同然だ。


ボロボロになった列車から下車するグレン、周りはざわついている。当然だ、この様子では軍警を呼ばれるのも時間の問題だろう。尋問されると厄介だ、とグレンはロウを引き連れて移動する。

とにかくロウの修理を急がなければ…そう思い整備場を探し始める。


「なんだ…これは…」


路上には数多くのロウボットが行き交っている。この国では一家に一台ロウボットを所持するのが普通なのだろう。


「こっちもあっちもロウボット…!」


装甲が融解したロウの姿は醜い、すれ違う人々がこちらへ視線を向けてくる。

洋服店に飲食店、八百屋には色とりどりの果実が並んでいる。中でも目を引いたのが商店街の中心部にそびえる大工場。どうやらロウボットのパーツを生産する工場らしい。そして通りの門にはこじんまりとした整備場が。ここなら人目につかないだろうと考えたグレンは足を運ぶ。

職に似つかない爽やかな見た目の整備士が出迎えてくれた。


「らっしゃっせー!うおっ!凄い客が来たなぁ…!」


ロウの姿に整備士も驚く。


「あの、相棒の整備をお願いしたいのですが…」


「こんなロウボットを連れてきたのはお客さんが初めてだよ」


「直せますか…?」


「ああ!任せてくれ!」


見たところ整備士はこの男一人しか居ない。整備場の規模から考えるに恐らくフリーランスの整備士なのだろう。珍しい。


「んー、こいつは電力式か。まさかお客さん…ホロウスからやってきたのかい?」


「え…いや…そのー…」


「いやいやすまない、別に通報するつもりは無いよ」


しまった!このコールランドでは蒸気式のロウボットが主流だったのを忘れていた…!と慌てるグレン。


「幸い内部に異常は無いようだね。それじゃあ外部パーツの付け替えだけか…。それじゃ…パーツ代から考えて…」


男は代金を計算する。


「5,050c…と言ったところだな」


案外安く済むのだな、と頷くグレン。

列車での食事で160cを支払った、財布の残りは9,840c。修理代を支払って残りは4,790c…流石にそろそろ働き口が欲しいところだ。


「わかりました、では」


「今は前金の2,000cで良い、また明日の早朝に取りに来てくれ」


グレンは前金を支払うとロウに目配せをする。少し笑っているようにも思えた。

相棒を任せて整備場を後にする。さて、どうしようか?


「とりあえず…宿を探さないとな」


商店街を抜けると二層目の区域へと足を運んだ。この街は山の側面に建造されている。先ほどグレン達が居たのはこの街の最上層で商業区に当たる場所だ。その下の二層目は宿場町となっている。

巨大なロープウェーから降りる、山上からの眺めは最高だ。反対側には大きな屋敷のようなものが見える。恐らく領主邸だろう、この地方はコールランド政府からやってきた領主が治めているのだ。

宿場町に降りても金、金、金…。一面に金のオブジェクトで目が痛くなる。


なぜこれほどの金が採れてそれが他国には流通しないのか?それには理由があった。今からおよそ150年ほど昔、この国コールランドにて"炭鉱掘の大号令"が出された。山々を開拓するにあたり金鉱石が大量に採れるのが分かったのはちょうどそのときだった。

無限に沸いてくる金鉱石は小さな田舎街だったゴルドガルドを潤した、もちろん納税金は政府に納入した上でだ。

しかしその様子を危惧した大陸連合はコールランドにレアメタルの輸出を制限する"貴金属輸出取締法"を締結させた。

と、ここまでは国史の教科書にも載っていることで問題はここから。この大陸連合にはもちろんホロウスも関わっている。最初こそは小さな新興国であったが今では複数の中小国家を植民地にするなど大陸でも随一の帝国だ。その帝国の前にコールランドが立っていられるのはロウボット技術を独占出来ているからこそだろう。

とにかく巷ではこの貴金属輸出取締法はホロウスの策略だと囁かれているのだ。

こうなるともう採り過ぎた金は自国で消費するしかなくなってしまう。

この国際法のギリギリを狙った条約はコールランドの民を絶望へと追い詰めていった。


そんなことがふと脳裏を過るグレン。

休戦命令からはや四年、昨日の今日、ホロウス軍のサイラス少尉とブリーザ鉄道の癒着。やはり休戦解除も間近なのか?と考えつつも宿を探す。目に入った看板には「ホテルゴルド」と書かれている。ここで良いや、と早々とエントランスに入るグレン。予約はしていないが部屋は空いていた。金で装飾された様子はどこから見ても高級ホテルにしか見えない。


「なかなか広いなー」


それは大人一人にしては広く感じる部屋だった。机も金、食器も金、挙げ句の果てには床も金だ。

採り過ぎた金はこのゴルドガルドで消費する他無い、その結果がこれだった。


「この様子じゃ出てくる料理も金なんじゃないか?」


グレンの予想は見事的中した。金と言っても金箔なのだがそれはもう見たことが無いほど盛られている。健康に害しそうなほどの見た目だがコック曰く食用金箔にはリラックス効果があるのだと言う。

デザートに金の延べ棒が出てきたと思ったらそれはケーキであった。まさに料理の芸術だ、観光で賑わうゴルドガルドならではのスイーツだ。


「しっかしこれで312cとは…安く済んだな…」


グレンはそう呟くと早々と就寝したのだった。

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