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ロウ戦記 a master called me a rou.  作者: みそラーメン
蒸気機関車 編
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第十三話 列車戦場

目の前に現れた彼はグレンの知ってる男だった。


「君は…いや…お前はっ…!」


服装が変わっていたせいで気づかなかったが彼はグレンの注文を受けたボーイだった。

なぜ彼が?と考える暇も無しにその男は機関銃をこちらへ向けてくる。瞬時にロウが前へと出る、その様はまるでグレンを護る盾だ。

しかしロウが立ちはだかるとそっと機関銃を下げた。


「おっと…いけねぇ、こいつを傷つけると大佐に起こられちまう…」


大佐?村を襲撃してきたグレンダとかいう軍人のことか?と考えを巡らすグレン。

そして、機関銃には円を描く蛇の紋章が。


「ホロウスの国章…!?なぜ…!」


「あーあ、バレちまったよ。やっぱこの銃持ってくるべきじゃなかったな」


頭の中が真っ白になる。ここは完全にコールランドの領地、それなのに何故。


「悪いがこの列車はホロウスが乗っ取った。お前にはそのロウボットを残して消えてもらう!」


彼はそう言うと列車の荷台が大きく揺れ動いた。袋が破けるような音と共に巨大なそれは飛び出した。

青磁色の機体、それはロウよりも少しばかり小さく見える。

逆光でよく見えないが露出した回線や無骨なフレームはまだ発展途上に見える、さしづめプロトタイプと言ったところだろう。


『グレン ヲ 護ル』


「ほぅ…それなりに知能はありそうだな。セラドン!蹴散らせっ!」


セラドンと呼ばれたその機体は勢いよくグレンに飛びかかる。生存本能からか頭を下げてうづくまる、するとロウが大きく被さりグレンを護った。

この間、僅か3秒。

そいつはロウを避けると扉を突き破りエントランスに転がり込む。やはり狙いはグレンだ。


「あぶねぇ、あぶねぇ!そいつに傷つけるとこだった!」


「いい加減にして下さい!一体、誰なんです!」


この違和感…やはり何処かで一度会ったことがある気がする。


「集合!!」


集合、そのかけ声と共にぞろぞろと乗客が集まってくる。一号車、二号車、そして車掌。それら皆がロウとグレンを囲むかのようにして集まった。


「これは…」


そう、この列車の乗組員全員がホロウスの軍人だ。列車を乗っ取った…いや、もはやこのブリーザ鉄道はホロウスの手中にあるのだろう。どんな手段を使ったのかは分からないがもうコールランドにもグレンの逃げ場が無いのは間違いなさそうだ。


「いやぁ、ゲイラー上隊長からの通報があって助かったよ」


ゲイラーさんが!?何故っ!と、その男の発言に困惑するグレン。あのゲイラーさんがホロウスにロウを売った?あり得ない!

しかし、今の発言から明らかに現実のものだと確信させるには十分な状況だった。


「総員、構えろ!やつのロウボットには手を出すな!標的は飽くまでグレンだ!」


「「「イエス!!」」」


まずい…絶体絶命だ。三十…いや四十人か、とにかくそれだけの人数の軍人がグレンに銃口を向けている。


『マスター 掴マッテ下サイ』


「分かった、でもどうする?」


『ワタシ二 考エ ガ アリマス』


ロウの考え、それがどんなものかは分からないがグレンにはその一縷の望みに賭けるしか無かった。いつものようにロウに掴まると反対側の車両に飛び乗った。凄まじい銃声が鳴り響く。

グレンの右頬を銃弾がかすっていく、血が流れて行くが大したことは無い様子だ。


「貴様!ロウボットに撃つなと言っただろう!」


「す、すみません!」


若い兵士が叱られている。やはりあの男は役職持ちだろう。

そんな様子を横目にロウが反対側の車両へ。

同時にセラドンが位置を変える、そして再びグレンに向けて飛びかかる。

まるで殴りかかるようなそんな人間臭い動きをするセラドン。それをロウは左腕で受け止める。分厚い鉄板が盾の役割を果たした。

弾かれたセラドンはエントランスであった場所へ倒れ込むと列車が大きく揺れた。何名か下敷きになった者も居たがロウは気にせず追撃を放つ。人差し指に付けられたレーザー砲がセラドンを撃ち抜くと小さく爆発をした。


「やるな…だが!」


なにか合図のように腕を上げる。すると兵士たちによる一斉射撃が始まった。

グレンはロウの影に隠れるとオーナークラスの車両へと移った。

射撃が止む様子も無い。これまで耐えていたロウだったがとうとうプレートに穴が空いてしまった。飛び散る破片がグレンに怪我を負わせる。


「そうだ!ロウ!」


『ナンデス…カ?』


「連結器を外すんだ!」


『連結器…』


なるほど、と言ったような表情を見せるロウ。

次の瞬間、レーザー砲を連結部に向けると出力を上げて発射した。

地面が乾燥していたからか爆発の衝撃で埃が舞う。煙で良くは見えないが連結器は外れたように見えていた。銃弾も届かなくなりグレンとロウは安堵したのだった。

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