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〇〇な人  作者: 紡葉
6/8

出先の荷物が増える人

 もしコンビニに行くなら、何を持っていくだろう。必要なものは?まず外出するから家の鍵。それから財布。ちょうど今日からレジ袋も有料化したから、エコバックを持っていく人もいるかもしれない。

 じゃあスーパーに行く人は?それに加えてポイントカードを持参するだろう。気づけばポイントカードは増えるばかりで、でもどれもよく使用するからカードケースと財布は別々。

 大学に行くときは?通勤するときは?デパートに行くときは?

 持参する荷物は、「目的地に行くための時間」「目的地での過ごし方、滞在時間」「帰宅する際の時間」などを考慮して増減すると露木は考えている。

 家というのは基本的になんでもあり、そこ空間にいることで完結できる。多少足りないものはあっても、日常的最低限の生活を、あるいは最高の生活をそこで過ごすことができる。しかし一歩外に出てみれば、家にはあっても外にはないものがたくさんある。

 外出先で快適に過ごすためには、家からその快適さを構成するものを持参しなくてはいけない。露木は決して快適さを求めているわけではないけれど、上記の三点を考慮するとなぜか荷物が増えるのだ。しかし出先で使用しないことも多い。

 先日新幹線で東京まで行った。2泊3日の旅立った。ハンドバックには財布、カードケース、絆創膏、エコバック、リップクリーム、予備バッテリー、ガイドブック、スマホ、アダプター、ハンカチ、イヤホン、マスク、ペットボトル、小説、傘、など。家の鍵はカードキーなので、交通系ICカードを一緒にパスケースに保管している。これらは宿泊のためではなく、日常的に持ち歩くものである。最低限これを持参すれば出先で困らない、というレギュラーメンバーである。

 これに続くは、機内持ち込み可能サイズのトランクで、着替えやお土産に続き、東京での試験を受けるための参考書(大量)、パソコン、新聞、スキンケア用品、替えの靴、それから細々とした資料。

 今回はカプセルホテルに泊まり、設備は予め確認していたのでシャンプー、リンス、ボディソープは持参せず。洗顔も持参し忘れたのは痛かったが。

 受付を終えて、さあ明日の試験に向けて勉強しようと参考書とパソコンを取り出すものの、結局使用した文献は1冊のみだった。移動しかしていないけれど、座っているだけ、電車を乗り換えるだけ、その間に荷物を持ち運ぶだけでも露木の根本的にHPはすぐにジリ貧である。

 結局早々に就寝して翌朝試験会場まで向かうものの乗り物酔いの心配と地理的不安から使用したのはスマホとイヤホンのみである。試験会場でも1冊熟読する暇もなく試験は終わりを告げた。

 露木は今までの出先でもあれこれ心配して荷物だけは増えてきたが、結局使用せずに自由行動の制限をかけるハメになっていることを反省した。「快適」を追求した挙句、「不自由」になってしまっているのだ。

 女性は旅先で身嗜み、特に化粧をしなくてはいけないので荷物が増えるといくが、基本的露木が持参したのは日焼け止め、櫛、フェイスクリーム、オイルである。スキンケアに対するこだわりが日常的に欠如していたとはいえ、これは少ないほうだろう。家ではもう少し使用しているものはあるが。

 つまり露木にとってスキンケアは妥協や我慢が利く分野であると言えるだろう。しかしそれに対して10冊以上参考書を持参し、1冊しか使用しないとは。露木は今回の試験に対して真面目に勉強はしてこなかったので、一夜漬けでどうにかなるとも思ってはいなかったにもかかわらず、本だけはたくさん持っていった。1冊しか使用しなかったけど。これは露木が試験に対して不安を抱いていたことがわかる。

 参考本を買えば満足しがちな露木は、「とりあえず持っていけば使用するかも」「ないよりある方がまし」という思考回路のもと今回の不自由な旅に繋がった。つまり参考書は露木にとって「精神的快適さ」をもたらすモノにすぎず、実利的にはほぼ無価値であった。

 ここから「精神的不安を物質的に補おうとすると、とんでもない量が必要になる」ことがよくわかる。しかし結局それはモノにすぎず、使用しなければ始まらないのだ。露木は使用することまで想像はしても、使用する時までの体力ゲージを見誤り、ただただ荷物が増えたと言える。

 同じような反省を幾度となく繰り返し、それでも切り捨てられず毎度不自由な思いをするのだ。

 そもそも家でやらないことを出先でやろうとすることが間違いであり、できないことである。時間があってもなくても、露木の行動決定は、その時の残存する体力とやる気に依存する。結局帰宅してから新聞を読んだ。

 世の中にこれがあれば大丈夫!というものは存在しないけれど露木のハンドバックはそれに当たる。しかし旅という要素を考えるとハンドバックでは小さすぎる。入れ物というのはゆとりがあるくらいが望ましいのかもしれない。日常的に使用しているモノに加え、何かしら足しても余裕がある、と考えるとかなり大きなサイズになる。含有物より入れ物が大きすぎると日常的自由は脅かされているかもしれない、では快適さは?それは精神的快適を増長するだろうか。

 出先で家と同じレベルの快適さを求めないこと、家でやらないことを出先に持ち込まないこと、出先で増えることを想定して、日常的最低ラインに常に余裕を持たせること。

 当たり前のようでどうしてこんなに難しいのか。次の遠出までに露木の理想は達成し得るのだろうか。


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