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現代妖怪奇譚  作者: かざふりょじん(風吹旅人)
【百鬼夜行】編
202/238

【百鬼夜行】(171)

「チリーン」「チリーン」


耳飾りのぶつかり合う音を響かせながら、宙を舞うように半妖の少女は聴衆の間をすり抜けてゆく。耳飾りの音を聴いた小鬼たちは、それに怖れて逃げ惑った。


少女に手を引かれて、梨田なしだ佑璃ゆうりもまた、小菊とタケハルたちが会場を沸かせているステージへと近づいていった。


トラックのステージは、周囲に眩い照明と音楽の地鳴りを振りまく。

佑璃がステージを凝視すると、『Cogy & Stray Dogs』のメンバーたちの頭上にはとりどりの極彩色が飛び回っていた。それは、龍の乱舞のようであり、複雑に絡まりあった絹のかたまりのようでもあった。


ボーカルが、ギターが、そしてパーカッションが演奏を盛り上げるたびに、極彩色の龍は人間の耳には届かない鳴き声を上げて、会場の空気を振動させた。それに共鳴して、会場から何度も何度も歓声が起き、観客たちにとりついている小鬼たちは、彼らの発散するエネルギーを思う存分喰らった。


それは不思議な光景だった。思わず立ち止まって目を奪われていた佑璃の腕を、また半妖の少女はステージへと強く引っばる。


ステージのトラックの前には、ライブの常連たちが群らがって大きな人垣になって、とてもステージまで近づくことはできなかった。しかし、少女の耳飾りが揺れて「チリーン」と大きな音を立てると、ステージに舞狂っていた極彩色が共鳴をした。


「チリーン」


「ウワアアアアアアアアアアアアン」


「チリーン」


「ウワアアアアアアアアアアアアン」


その共鳴は耳は届かないが、人を動かす力があった。


得体の知れない大きな力に押し分けられるように、トラックの前の聴衆は突然左右へと散り、そこを少女に手を引かれた佑璃が通り抜けた。


そして、トラックの前まで辿りつくと、少女はふわりと宙に舞い、佑璃は手を引かれながら彼女を見上げた。


(さ、あんたも上がってくるんだよ)


そして、佑璃は戸惑う間も与えられず、何かに身体を宙まで持ち上げられていた。


「え?ち、ちょっと」


彼女はあまりに突然のことに足をバタつかせる。


(ほら、暴れたら危ないよ)


しかし、少女の注意も虚しく、佑璃はバランスを崩して、ステージの上に投げ出された。


演奏は終盤だった。皆んな音楽に集中していたが、ステージに突然投げ出された女性に聴衆は一瞬目を奪われた。


(あ・・・、私・・・)


ステージで一斉に注目を集めてしまった佑璃はステージに投げ出された姿勢のまま顔を上げられずにいた。

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