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現代妖怪奇譚  作者: かざふりょじん(風吹旅人)
【ろくろ首】編
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13/238

【ろくろ首】(13)

旗屋はたや欽之助きんのすけ梨田なしだ祐璃ゆうりの2人が連れ立って電車を降りると、改札の向こうに見覚えのある人影があった。

低い背をさらに丸めて、その上に丸い顔がついている。

山田やまだ小梅こうめである。


「こんにちわ」


欽之助から声をかけた。


「今から、『クレーム』に行こうと思っていたんです」


「ああ、まあ、だいたいの時間は聴いとったから、ここで待つことにしたんさ」


「皆さん、中におられるんですか?」


「いいや、私一人さね。まあ、こんなことに、いつまでもみんなを付き合わせておけんからのお」


小梅の気まずそうな顔を見て、欽之助は、あまり良い話にはならないのではと心配になった。


「ボウズ、今日はまた、きれいどころを連れてきたの」


連れの佑璃を見て、小梅が言った。


「申し遅れました。私、梨田佑璃と申します」


「ぼくの上司です」


「この娘さんがかい?あんたといくつも変わらんじゃろお?」


意外そうに小梅が返す。


「いえ、その、見た目ほどは・・・」


と言いかけて、キッと真顔になった佑璃に慌てて口をつぐむ。


今度は、佑璃から小梅に問いかける。


「あの、今日は逢坂おおさか結女乃ゆめのさんにお会いできますか?」


「ああ、ええよ。ゆめちゃんは、自分の部屋で待っとるから、直接会ってきたらええ」


そこへ、戸惑い気味に欽之助が口を挟む。


「あの、それで・・・」


「ああ、そおか。大丈夫じゃよ、わしがあんたらを案内してやる」


「それで・・・、あの後、結女乃さんはどうされてますか?」


前回、ふと欽之助が結女乃の手に触れたことで、彼女はひどく動揺した。そして、「気分が悪い」と言って、そのまま商談はお開きになった。

それを、欽之助は心配しているのだ。


「ああ、気にせんでいい。あれも男を知らんわけじゃないし。ただ、若い男に触れられたのが久しぶりだったんで、すこし動転しただけなんよ」


「それで・・・」


いたたまず欽之助が言葉を発する。


「ん?」


「結女乃さんは、本当に逢坂結女乃さんなんですか?」


立ってする話ではないと思ったものの、どうしてもその核心に触れずにはいられなかった。


「何だと?逢坂結女乃は、一人だけさ。他に、誰がおる?」


「と言っても、『朧の寒苦鳥』を書いた逢坂結女乃は、もう30年も前の人じゃないですか?それが、20代の若い女性を逢坂結女乃本人と言われても、とても信じることはできません」


「厄介なんは、の・・・」


そう言いかけて、小梅はしばらくひどく難しい顔をした。

そして、数十秒黙った。

その次の言葉を待つ間を、欽之助と佑璃はひどく長い間に感じた。


「厄介なんは、の、この辻褄の合わん、おかしな話が、これに関係しとる誰にとっても、切実なまでの現実っちゅうこっちゃ」


そこで、明らかに怪訝そうな表情を浮かべている欽之助と佑璃に対して、小梅は言葉を継いだ。


「分からんゆう顔をしとるな。ま、無理もない。しかしのお、考えてもみい。わしらにとって、現世うつしよとはなんじゃ?それは、目や耳や鼻や舌や、そんなもんから絵やら音を取り込んで、心に像を結んどる、そんなもんじゃろ?言ってみれば、わしらは夢の中に生きとるようなもんやし、夢ではなんでも起こるんよ。その一人一人の夢の世界が関わりおうとるのが社会というなら、どこまでか現実でどこまでが妄想かなんて、誰にも分からんと思うんよ」


「で、でも・・・」


「まあ、会うてくるがええわ。それで分かるんよ。あるいは、分からんかも知れんが、大した差ではなかろうて」

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