誕生日パーティーにて
サラ、前世を思い出します
伯爵令嬢であるサラ・ルワンダ。
領内でこの名前を知らない人はいないだろう。
悪い意味で。
今日、そんな令嬢の誕生会が伯爵邸で行われる。
使用人が慌ただしく準備している中、廊下で甲高い声が響いた。
「なんで豪華なパーティーを開いてくれないの!?それに親戚なんて呼ばないでっっ!!」
誰であろう、今日の主役であるサラだ。
「お、お嬢様、落ち着いてください」
茶髪の髪を後ろで編み込み纏めている、メイド服の少女。
メイドのリエだ。
孤児院から引き取ったという少女だ。
癇癪を起こすサラに言葉をかける。
「何よ!!!あなたなんかに言われたくないわ!」
「そんなこと言わないの、サラ」
そう優しく声をかけるのは、私の叔母であるハイナ・ルワンダだ。
白髪で、皺が刻まれた顔、今年で64歳の高齢。
流行り病で父と母を亡くしてからは、母方の祖母、ハイナがサラを育てた。
「私のことなんてどうだっていいんでしょ!!私、知っているのよ、叔母様が母様のことを恨んでいるから私に辛く当た「違うわ!!!サラ、そんなこと言わないでっ!」」
サラの声にかぶせて、遮ったのはハイナ叔母様だ。
「………!なんなのよ!」
顔を真っ赤にさせて憤るサラはそう言い放ち、どこかへいってしまった。
「奥様、ありがとうございます。助けていただいて」
おずおずといったお礼を言うメイドのリエ。
「……いいえ、そんなことないわ。貴方にはいつもめいわくをかけているわね」
悲しそう顔をしてサラが行った方向を見つめる。
「いえ、そんなことないです。ここで雇って頂けて生活出来ているのですから」
「そう言ってくれて嬉しいわ。私はサラのところにいくから、パーティの準備をよろしくね」
そう言って、サラを探しに行く。
叔母様と入れ違いに執事のレイヤが事件現場に来た。
「どうしたんだ?リエ、教えて欲しいんだけど」
サラと同じ銀髪に茶色の目の執事服の男性。
走ってきたんだろうレイヤが息を荒くして問いかける。
レイヤが来たことに戸惑いながらも、顔をほんのり赤らめながら状況説明をするリエ。
「先程、お嬢様が盛大なパーティをと親戚の招待をやめてほしいと言われたのですが、私にはどうすることも出来ず。
叔母様が今、お嬢様を探しにいっています」
「ああ、またあの癇癪か。すまない」
レイヤが察して呆れたような声を出した。
「ぃえっ、大丈夫です!あの、叔母様がパーティーの準備をと言っていました」
リエの声が裏返ったらしい。
「わかった。引き続き準備をたのむ」
「はい!」
***
こうして準備は進み、夜、サラの誕生日パーティーが始まった。
サラは渋っていたが、使用人の必死の説得により参加することになった。
「本日は、私のためにお集まりいただき、嬉しく思います。
親戚の方しか集まっていないのは残念ですが、楽しんでください」
一応挨拶をするサラ。
声は届いたか届かないかぐらいの大きさで。
「聞こえないぞー!」
あっははと笑いながら、空気の読めない叔父さんがいう。
「…………!」
顔を真っ赤にさせて、ぶつぶつと何かを呟やく。
一部のものには、うるさいうるさいうるさいというのが聞こえたらしい。
「叔父さん、悪ノリはやめましょう!」
空気を読んだ女性が止めに入る。
「あ、ああ。すまないな」
なぜ怒られるのかは分からないという顔をしている。
「気を取り直して、ケーキを食べましょう!」
レイヤが無理やり話題を変える。
「そうだな!」
「サラもすきだったわよね?」
「……ええ、まあ」
「さっそく食べましょう」
運ばれてきたケーキを見る。
皆が嬉しそうな顔をしている中、サラだけは複雑な顔をしていた。
「何このケーキ……」
サラが自分にだけ聞こえるような声でいう。
周りの人は聞こえているのか聞こえていないのか、ケーキに夢中である。
「さあ、皆様頂いてください」
切り分けたケーキをメイドのリエが配った。
それはもちろんサラの元へも届いた。
「どうぞ」
「このケーキって」
「お嬢様のお好きなガトーショコラでございます」
「そういうことじゃなくて!……いえ、なんでもないわ」
自分でも何をどう言えばわかって貰えるのかわからないようだった。
そんなサラにリエは?マークを浮かべるが、何もないのならいいのだろうと戻った。
「なん……なの。この記憶、貴方は誰」
1口食べたサラが不思議なことを言い出した。
「どうなさったの」
親戚の1人である女性が心配そうに語りかける。
「い、いやぁぁぁぁー」
叫んで気絶してしまったサラ。
その場は、水を打ったように騒然とする。
レイヤは、ハッとしたようにサラに駆け寄った。
「お嬢様!!大丈夫ですか!?」
この日を境にサラが変わってしまうなど、誰も思いもしなかっただろう。
サラはこれからどう変わっていくのか
見どころです