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キミの気持ちが分かっても、恋というものは分からない。  作者: 中山おかめ
2章 真面目なんだと分かっても、怖いことに変わりない。
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親友と幼馴染

◆◇五里守まひる◇◆


 あれから一週間が経過した。

 藤峯クンは返事を待って欲しいと言った。そしてわたしもそれを了承した。

 でも……返事を待っている間についてなんだけど、彼に話し掛けてもいいのかな? やっぱり話しかけたらウザって思われるのかな? それとも逆に、話しかけないでいたら気持ちが離れていっちゃうのかな? そもそもいつまで待っていればいいのかな?

 等々、様々な不安が重なり、情けないことにわたしは身動きが取れないでいた。藤峯クンとどう接すべきなのか、さっぱり分からない。恋って難しい。


「はあ……」

「辛気臭い溜息ついてんじゃないよ。アンタらしくない」

凛花りんかちゃん……返事を待ってる間はどうしたらいいのかな?」

「変に意識せず、普通に話し掛けりゃいいだろ」

「話し掛けてもいいの? ウザいって思われない? 嫌われない?」

「こりゃ重症ね……」


 凛花ちゃんがお手上げのポーズを取った。


「っていうかさ、今更だけど、あんな陰気キャラの何処がいいの?」

「その言い方はひどいと思います」


 凛花ちゃんの棘のある物言いにカチンと来た。だが凛花ちゃんは続ける。


「っていうかさ、アンタと余りにも対照的過ぎない? 悪く言いたくはないんだけどさ、藤峯っていつも独りでいるし、前髪で目を隠してるし、無口だし暗いし、何考えてるか分からないし、まひると釣り合うとは思えない。っていうかさ、ド・モールで誘拐犯から子供を助けたって話、アンタの勘違いじゃないかって疑ってんのよ」


 好きな人を散々扱き下ろされ、わたしは頬を膨らませた。同時に、藤峯クンがそこまで悪く思われていることがショックだった。


「よーく分かった……凛花ちゃんは勘違いしてる。ちょっと来て!」

「ちょっ、まひる!」


 わたしは凛花ちゃんの腕を掴み、藤峯クンの所へ無理矢理連れて行く。好きな人が友達に誤解されたままなのは我慢ならなかった。


「藤峯クン!」


 彼の名を呼ぶと、藤峯クンは左右のイヤホンを外しつつスマホから顔を上げた。わたしは連れてきた凛花ちゃんを彼に紹介する。


「この子はわたしの友達、夏木凛花なつきりんかちゃん」

「知ってる。1年の時同じクラスだった。1年ぶり」


 藤峯クンが喋ると、凛花ちゃんが酷く驚いた表情をした。


「あ、アンタ話せるんだ……」

「そりゃ人間だからね」

「いやでも、1年の時地蔵だったじゃん」

「そうだね」


 凛花ちゃんの失礼な物言いに対し、特に気にした様子のない藤峯クン。心の広い人だと思うと同時に、彼の取り合わない様子がちょっと腹立たしかったが、それよりもわたしより先に凛花ちゃんが藤峯クンと出会っていたという事実が、少し悔しかった。


「御三方なーにしてんの?」


 そこに軽薄な男の声が乱入してきた。


亮平りょうへい邪魔。今藤峯クンと話してるの」

「うっわ冷てえ。んなこと言わずに俺も混ぜてよゴリラのゴリちゃん」

「ゴリラ言うな! 相変わらずデリバリーがなってない」

「ピザ屋の配達員に対するクレームかな」


 藤峯クンがそう言うと、凛花ちゃんが噴き出した。


「ゴフッ! 確かに辻ってピザの配達員っぽい」

「夏木ちゃんヒデーな。俺ってばどんなイメージ?」

「っていうかさ、アンタ冗談とか言うんだね。ゴメン。まひるの言うとおり、アンタのこと大分勘違いしていたみたい。っていうかさ、最後の1年よろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


 そう挨拶を交わす藤峯クンと凛花ちゃん。良かった。凛花ちゃんの藤峯クンに対する誤解は無事解けたようだ。


「無視はヒデーな。俺も混ぜてくれよー」


 そこに割り込む亮平の猫撫で声。


「……あなたは?」

「えーっと藤峯だっけ? 俺は辻良平つじりょうへい。この雌ゴリラの飼い主だ」

「だからゴリラ言うな!」


 藤峯クンの前でゴリラ扱いされるのは、なんだかもの凄く嫌だった。しかし、この男は全く悪びれることなく――


「えー。でも1年の時までゴリラ神の五里守ごりかみですってノリノリ――」


 わたしは慌ててて、わたしの黒歴史を撒き散らす悪漢の口を両手で塞いだ。フガフガと亮平は苦しそうにしているが、いっそこのまま息の根を止めてやろうか。


「仲良いんだね」


 藤峯クンは羨ましそうな目でわたし達を見比べながらそう言った。わたしは亮平から即座に離れ弁明する。


「ち……違うよ! このチャラ男はただの幼馴染だよ」

「家が近所なんだ。こいつの弱点知りたかったら教えてやんよ」


 やはり息の根を止めてしまえば良かった。


「まひるさんの弱点か……ちょっと気になるかも」


 藤峯クン? 小さく呟いたみたいだけど聞こえてますよー。


「先輩!」


 突如わたしを呼ぶ声。教室の扉が荒々しく開かれるのと同時に現れたのは、陸上部の2年の後輩だった。彼女は焦燥した様子でわたしに助けを求めてきた。


「先輩お願いします助けて下さい! 先輩だけが頼りなんです」

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