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キミの気持ちが分かっても、恋というものは分からない。  作者: 中山おかめ
4章 これが恋だと分かっても、今のままじゃ意味がない。
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似たもの同士

◆◇五里守まひる◇◆


++++++++++

藤峯クン

>明日暇?

++++++++++


 藤峯クンの方から送られてきた初メッセージ。全身に緊張が走り体は固まっていたが、内心はパニックを引き起こしていた。


 明日暇?

 明日暇?

 明日暇? 


 わたしは即座に『デートの誘いですか!?』とメッセージを返しそうになったが、直前で踏みとどまった。

 落ち着け五里守まひる……思わず飢えた肉食獣のように齧り付きかけたが、デートの誘いかどうかはまだ分からない。わたし達は曲がりなりにも受験生な訳だから、単に勉強のお誘いかも知れない。例えデートの誘いだったとしても、骨までしゃぶりそうな勢いを見せたら、卑しい女と思われ嫌われるかもしれない。だから、返信は慎重に慎重を重ねなければ……




~~1時間後~~




 いい文面がさっぱり浮かばず、わたしは未だにメッセージを返せないでいた。一度凛花ちゃんに電話で相談したのだが、「普通に『暇だ』って返せばいいだろ」とぶっきらぼうに言われそのまま電話を切られた。凛花ちゃん冷たい。

 そして結局は、凛花ちゃんのアドバイスを元に『お昼なら暇』と返信した。すると秒速で藤峯クンから返事が来た。


++++++++++

>藤峯シンヤ

 明日ド・モールで映画観ない?

++++++++++


 わたしの脳内で結婚式場のベルが鳴る。間違いなく、これはデートのお誘いだ。わたしは骨まで噛み砕く勢いで、藤峯クンの返事に齧り付いた。


++++++++++

<わたし

 観る観る絶対観る!!

 時間は何時頃!!

 お昼一緒に食べよう!!

 一緒に買い物もしよう!!


>藤峯シンヤ

 エクスクラメーションマーク多過ぎ


<わたし

 エクスラーメンションマーク??


>藤峯シンヤ

 エクスクラメーション


<わたし

 エクスクラムチャウダー??


>藤峯シンヤ

 エクスクラメーション


<わたし

 ブイヤベース??


>藤峯シンヤ

 腹減ってるの?


<わたし

 うん!!


>藤峯シンヤ

 www


>藤峯シンヤ

 ビックリマークのこと。


<わたし

 何が??


>藤峯シンヤ

 エクスクラメーション


<わたし

 !!


>藤峯シンヤ

 それ


<わたし

 また一つ賢くなったぜよ


>藤峯シンヤ

 何故T佐弁


<わたし

 また一つ賢くなっただっちゃ


>藤峯シンヤ

 何かいずい


<わたし

 また一つ賢くなったさ~


>藤峯シンヤ

 馬鹿っぽい


<わたし

 S弁の七不思議


>藤峯シンヤ

 それはそうと


>藤峯シンヤ

 明日の12時でどう?


<わたし

 大丈夫!!

 待ち合わせ場所はどうする!!

 何なら藤峯クンの家まで迎えに行くよ!!


>藤峯シンヤ

 長町南駅で


>藤峯シンヤ

 エスカレーター近くの改札口辺り


<わたし

 OK!!


>藤峯シンヤ

 はい


>藤峯シンヤ

 じゃあまた明日


>藤峯シンヤ

 おやすみ


<わたし

 おやすみねんごろり!!


>藤峯シンヤ

 寝るのに気合入れ過ぎw


<わたし

 おやすミンミンゼミ!!


>藤峯シンヤ

 それはつまらない


<わたし

 あう……


>藤峯シンヤ

 じゃあ


>藤峯シンヤ

 今度こそおやすみ


>わたし

 おやすみなさ~い

++++++++++


 文章からも伝わってくるダウナー調子の藤峯クン。きっと緊張とか、そういうのは絶対にしないんだろうな。それに対しわたしは極度の緊張とテンションの上り過ぎで、色々とおかしなメッセージを彼に送ってしまった気がする。しかし、とにもかくにも……


「明日はマジもんのデートだ!」


 わたしは布団の上で飛び跳ねた。

 万全を期すために、早めに風呂に入り就寝に付いた。正直明日が楽しみ過ぎて眠れる気がしなかった。

 それと、わたしは電気を消し瞼を閉じる中、一つ決意した。


 明日、キライって言っちゃったことを、ちゃんと謝ろう。


 ***


◆◇藤峯シンヤ◇◆


「文章でもテンション高いな……」


 もはやこのテンションの高さは才能だろう。文章だけで彼女がどんな顔をしているのか容易に想像ができる。ボクは自然と顔を綻ばせていた。

 メッセージを送ったら即座に返信してきそうな彼女だが、既読になってから1時間経っても返って来る気配がなかったから、ボクは内心焦っていた。でも、返信が来てからはいつもの彼女だったため、多分丁度都合の悪いタイミングと重なってしまったのだろう。それにしても……


「緊張したー」


 情けない声が口から漏れ出てしまった。知り合いに、それも女の人にメッセージを送るなんて初めての経験だった。いや、以前隼人君関連でまひるさんにメッセージを送ったことはあるから、正確には初めてではない。でも、一緒に遊ぶ約束や、下らない会話のやり取りはやっぱり初めてのことで、酷く緊張した。

 相手の顔は見えないし、共感能力エンパシーも働かないから、相手がどう思っているかは文章だけで推し量るしかない。だから普段話す時と同じようにテンションの高いまひるさんの文章は、変な話だが読んでて心が落ち着いた。きっと彼女は緊張と無縁な性格なのだろう。


 まひるさんを遊びに誘った理由は2つある。

 1つは体育祭以降、まひるさんとの間に隔たる変な距離感。これを何とかしたいと考えていた。そしてもう1つは……

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