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キミの気持ちが分かっても、恋というものは分からない。  作者: 中山おかめ
3章 たとえボクを嫌っても、ココロの穴は埋まらない。
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体育祭のしのぎ方

◆◇田宮亜美◇◆


 水無月みなづきという名に恥じぬ炎天下の元で、日が天辺に差し掛かる手前の頃に、少年少女達が汗を弾かせながら大きな声を張り上げていた。グラウンドの中央にて2対の集団がお互いに正面を向き合い火花を散らせ、そして小さな花火のような渇いた破裂音の合図の後、彼等は一斉に一本の長い綱を握り締め、掛け声を上げながら互いに引っ張り合っている。

 そう……今日は文科系人類にとっては親の仇よりも憎い体育祭で、クラス対抗の綱引き真っ最中だった。綱引きはクラスの4分の3以上が強制参加させられる競技だが、私はその熱狂を離れた位置から冷めた目で見ていた。別にサボっているのではない。私は忠実に与えられた職務を遂行している最中である。なぜなら私は救護班のメンバーであり、怪我人の治療の為に救護テントに待機していなければならないからだ。

 運動が苦手な私にとって、救護班の仕事を口実に極力競技に参加せずに済むのは大変ありがたい。競技に参加しない別の手段として応援団を務めるというのもあるのだが、私は目立つことも大声を出すことも苦手なため、その選択肢は真っ先に除外。体育祭実行委員という手もあったが、あれはあれで競技の準備で日差しの下を駆け回る必要があるため除外。

 故に、極力汗をかかず目立ちもせず、かつ不良のようにサボらずに真っ当に体育祭を乗り越える手段として、保険委員である私が救護班の仕事を引き受けたのは当然の成り行きだった。しかし……私は早くも後悔し始めている。何故なら……


「しっかし兄貴。今日は本当にあっついっすね。まだ6月っすよ」


 と、私の左隣には地獄から召喚された鬼こと、札付きの不良1年鬼瓦隼人。


「うん……暑い。早く家に帰ってクーラーで涼みたい」


 と、私の右隣には不気味で陰気なスクールカースト最底辺の3年藤峯シンヤ。


 そして悪名高い1年生と3年生の間に挟まれている一般生徒が私、2年田宮亜美(たみやあみ)

 今日は長くて辛い一日になるだろうと、私は身を震わせた。

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