表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミの気持ちが分かっても、恋というものは分からない。  作者: 中山おかめ
2章 真面目なんだと分かっても、怖いことに変わりない。
16/48

お神さんがみている

◆◇鬼瓦隼人◇◆


「そういえばオニトさんって料理ジャンル的には何が得意?」


 調理部に入部後しばらくしてから、部長がそう尋ねてきた。


「自分イタ飯が得意っす。祖母がイタ飯好きで、しょっちゅう手伝わされていたっすから」

「イタリアンかあ。ますますオニトさんだ。因みに何が作れる?」

「ミートソーススパゲティっすね。祖母が作ってくれるのが本当に好きで、よく練習してたんす」

「へえ! じゃあ今度材料準備するから作ってみてよ!」

「部長ばっかりズルい! わたし達もオニトさんのミートソース食べてみたい!」

「勿論す! でも、祖母から聞いてたレシピがどうにもうろ覚えで、再現に四苦八苦してるところっすから、余り期待はしないで欲しいっす」


 部員達は嬉しそうな声を上げ、自然と自分も笑みが浮かぶ。そして笑うとカワイイと茶化されてしまい、照れ臭さから反射的に声を荒げてしまった。でも、もう誰も自分を恐れていない。顔の作りも、笑顔の凶悪さも、短気なところも何も変わっていないというのに、今この場にいる人たちは、自分を恐れない。


『善行を積み重ねなさい。お神さんが見てくれています。必ず誰かが見てくれています。本当の隼人に気付いてくれます』


 ばあちゃん……本当だな。長いこと時間がかかったけど、ようやく気付いて貰えたよ。

 ばあちゃん。もしばあちゃんの言うとおり、お神さんが見てくれているというのなら、空に行ったばあちゃんは見てくれているのか? 自分、今すっごく楽しいぜ。

 それと……あの時くたばっちまえ何て言ってゴメン。最期の言葉が、あんなので本当にゴメン。今はばあちゃんの説教が恋しくてたまらねえよ。


 不意に、ミートソーススパゲティを作っている時のばあちゃんの顔が脳裏に浮かんだ。ばあちゃんは笑っていた。ばあちゃん特製のミートソーススパゲティが食べたくて堪らなくなった。

 だが、ばあちゃんはもう居ない。ならば自分が作るしかない。ばあちゃんのように上手く作れるかどうか分からないけど、そうするしかないのだ。

 すると、降って湧いたように、うろ覚えだったレシピを克明に思い出すことができた。そしてそれを部長に伝えた。

 後日、レシピ通りミートソーススパゲティを作り、皆に振る舞った。美味しいとの評判の中、自分もミートソーススパゲティを口に運んだ。ちゃんと、ばあちゃんの味になっていた。情けねえことに、また涙をこぼしちまった。



――2章 真面目なんだと分かっても、怖いことに変わりない。了

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ