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人気のゲームには死は付き物!?  作者: 稲荷 里狐
4/5

3話 能力分析器

 転移してから2日目。

 僕は宿を出て、町を歩いていると未だに町の名前を知らないことを思い出した。

 (そうだった、名前。あの時は走り抜けちゃったからなぁ)

 町の入り口にある柱に行くとそこには『始まりの町 アルバ』と書いてあった。

 「ネーミングからしてゲームの世界だな」

 今日1日、特にすることの無い。いや、何をすればいいのか思いつかない僕は町を散策することにした。(RPG系のゲームからしたら基本だろう)今の僕は情報を持っていなさすぎのため、町にあるギルドに向かう。

 アルバの町はかなりの広さで、東京ドーム2倍ぐらいの広さをしている。その町の中心にギルドが建てられていた。ギルドは木造で、宿の2倍の大きさだった。具体的に言えば、少し大きめのアパートといったところだろう。

 ギルドを眺めていると、不意に誰かに話しかけられた。

 「あの~旅人の方ですか?」

 驚いて振り向くとそこにはモンハンに出てくる受付嬢みたいな服装で茶髪の少し気弱そうな女性だった。見た目からして、17歳ぐらいだと思うけどこか大人びている感じがした。

 「はい、そうですが。何か?」

 「お名前を聞いても?」

 「カルトです」

 「どこかのギルドに所属でもしてますか?」

 「いえ、してませんが

 僕がそういうと、女性は手にしていたバインダーに名前を書くとバインダーごと渡してきた。

 「えっと、これは?」

 「これを持ってギルドを入って左手にある受付に見せてください」

 「わかりました。……あなたの名前は?」

 「ミラです」

 ミラさんはそういうと、ギルドの中に小走りで入って行ってしまった。

 ポツンと放置された僕は受付に向かった。

 

 ギルドに入るとそこには冒険者だと思われる人が山ほどいた。ナイトやウォーリヤー、パラディン、ガーディアンにサモナーなど数多くの職業を持つ人が仲良く酒を飲んだり談笑したりしていた。

 僕はそんな楽しそうな冒険者を横目に受付で先ほどミラさんから渡されたバインダーを渡すと青色の水晶を出された。

 「これはどういうものですか?」

 僕が受付の女性に聞くと丁寧に教えてくれた。

 今僕の目の前にある水晶は能力分析器で、水晶の上に手をかざした人間のステータスを読み取り最適な職業を数種類出してくれる。その結果を見て今の職業のままにするか新しい職業に変えるか決めるらしい。

 僕も水晶に手をかざすと目の前にパネルが表れた。そこには現時点のステータスと最適な職業が書いてあった。

 『レベル12

  体力:83 魔力:80 攻撃力:54 知力:52 防御力:45 精神:53 素早さ:45 賢さ:48

  最適な職業:全て』

 大変なことが起きた。最適な職業がすべてをたたき出してしまった。

「えっとーこの場合ってどうすれば?」

 僕は目の前のパネルを受付の女性に見せると、すぐに受付が騒がしくなった。その騒がしさにさっきまで談笑をしていた冒険者たちが一気にこちらを向いた。ギルド内のほとんどの目が僕に一点集中。学校でダジャレ言って滑った時みたいな気持ちに僕はなった。

 「お待たせしました」

 先ほどの女性が慌てた様子で戻ってきた。

 「すぐに別室に案内しますのでもう少々お待ちください」

 そう言うと、またどこかに行ってしまった。

 再び一点集中タイム。どこぞの英雄が『真の英雄は目で殺す』とか言っていたが、それは冒険者でもできそうです。100人以上必要だけど。

 そんな、時間を過ごすこと5分。やっと来たかと思ったら先ほどまで対応してくれていた女性ではなく30近い男性が来た。

 「お待たせして申し訳ございません。私、このギルドの受付リーダーをしておりますガランと申します。別室の準備が整いましたのでご案内に参りました」

 ガランと名乗る男性はそういうと歩き出した。


 別室はどこの会社にもある普通のゲストルームだった。

 「まぁ、お座りください」

 「失礼します」

 どこか面接チックな感じになって緊張してきた。

 「えー、先ほどの能力分析器の件なんですが、このような事は経験が無く対応が遅れてしまったことにお詫びします」

 「えっ、まぁはい」

 「さて、いきなりですが本題に入りましょう。今回、最適な職業が全てと出ましたが詳しく言うと職業には下・中・上・天上の4つ階級があり、私たちが使用している能力分析器では上級までの職業が出るようになっています。その数、100種類。下級40、中級30、上級30種類ずつとなっており天上級は10種類となっています。ここで何か質問はありますか?」

 「1つだけいいですか?」

 「はい」

 「天上級になるにはどうすればいいんですか?」

 今のところ最大の疑問だ。さっき言っていた『私たちのところでは上級まで』と言っていたが本当はこの世に存在している分析器では上級までしか測れないのだろう。どんなゲームでも無条件で最高ランクのクラスになれる訳がない。よってこのような疑問が生じたのだがどうだろうか?

 「そうですね~では、例えを使って説明しましょう。天上位の中には『バースク』という職業が存在します。この職業になるには上位で習得できる『タブー』と『グレートマジシャン』と『アーク』のレベルを最大値つまり、レベル100にならなければ習得出来ない職業です。ついでに説明しときますと。『バースク』は相手及び仲間の状態異常の発生。あらゆる生物に死を与えることが出来ます。そして、『タブー』は主に禁忌とされた魔法を使うことが出来ます。『グレートマジシャン』は中位の『マジシャン』の進化系です。『アーク』は魔法の効果およびダメージを大幅に上げる魔法を使うことが出来ます。ここまでで質問はありますか?」

 「ないです……」

  一気に情報が押し寄せてきてパンクしそうだ。まぁ、どういうものかはわかったから十分です。

 「では、続きます。今回では結果を見させてもらいました。そこで、私の独断んと偏見ですが上位の『バーサクマジシャン』はどうでしょうか?この職業は中位の『バーサーカー』と『マジシャン』の特性を兼ねそろえています。カルト様のステータスなら申し分ないでしょう」

 確かに、『ナイト』とかの戦士系統だと魔法が使えるものが少ないが、昨日までの戦闘を見ると明らかにぴったしだったのは明確だった。

 「因みに、ほかの職業はありますか?」

 「そうですね~特に思いつかないですね」

 「じゃあ、『バーサクマジシャン』にします」

 「わかりました。ここに契約書を。……カルトさん、私からお願い事があるのですが聞いていただけますか?」

 最初に対応してもらった女性に契約書を持ってこさせると、ガランさんはさっきよりも真剣な顔をして訪ねてきた。

 「いいですけど……」

 僕がそういうとガランさんは聞き覚えのある名を言った、

 

 ガランさんに呼ばれてからすぐにゲストルームの扉が開き一人の女性が入ってきた。その女性はうつむいていたが顔は赤かった。

 「ご紹介します。私の娘のミラです」

 「よ。よろしくお願い……え?」

 「え?」

 僕とギルドの前にいたミラさんの間で時が止まった感じがした。

 「えっと、娘と認識がおありで?」

 「ええ。さっきギルドの前で登録用紙を貰いました」

 「なるほど、そうでありましたか。そういうことなら話は早いですね。私の娘ミラと旅に出てもらいませんか?ミラはこれでももう16歳となります。この世の女性は16歳になると仲間1人以上を見つけえて旅に出るのですが、残念なことに娘だけ仲間が出来なく手てでして未だに街にいます。理由もわかっています。娘は他の同級生と違い下位の職業しか出なかったことです。そこで、優秀なステータスをお持ちのカルト様にお願いします。娘と旅に出てやってください!」

 ガランさんはそういうと頭を下げてお願いしてきた。その姿は娘思いの良い父親といったところだった。きっと今まで多くの人に声を掛けてきたんだろうミラさんの顔が曇っているのが見て取れた。

 「少し聞きますがミラさんの職業は?」

 「『白魔導士』です」

 「わかりました。その願い叶えましょう」

 そう言った瞬間、ガランさんは凄い勢いで頭を上げ僕の手を取ってきた。そして、ミラさんは嬉しさからか泣いていた。

 「本当にいいのですか?」 

 「はい。僕も旅を始めたばかりで右も左もわからないですが、2人なら大丈夫です」

 「ありがとうございます。ありがとうございます。……」

 ガランさんは僕の手を握ったまま何回もありがとうを言ってきた。なんか、こんなことになったのは初めてでどんな感じでいればいいのかよくわからなかった。

 

 

 

 

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