表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人気のゲームには死は付き物!?  作者: 稲荷 里狐
2/5

1話 真実

 眩い光が消え目を開けると、リラの言う通り目の前には見たことない世界が広がっていた。

 自分がいる周辺には芝生が生え、海も見える。現実では見ることがなかった。現実の世界は10メートルぐらいの堤防が国を囲んでいたため、海なんて絵の中の物だけだった。それが、今、僕の目の前に広がっていた。

 海は青く、陽の光に反射し、キラキラ光っていた。

 「ゲームだとしても、すごいな。こんなに綺麗なものが一面に広がっているなんて、向こうじゃ考えられなかった。芝生もな」

 動き出そうとした瞬間、目の前に3枚のパネルが現れた。

 一つは地図。もう一つは自分のパラメーター。最後は「チュートリアル」と書かれたパネルが現れた。

 最後のパネルに手を伸ばすと、石みたいな感触と共に「チュートリアル」のパネルが切り替わり、操作方法のパネルになった。

 そのパネルには、道具の取り出し方や使用方法。呪文の使い方や剣の使い方などゲームをするには必要なことが書かれていた。 

 僕は次にパラメーターのパネルに触れるとそこには、

 名前:カルト

 職業:術士 レベル:1

 体力:50 魔力:50 攻撃力:25 知力:25 防御力:20 精神:25 素早さ:20 器用:15

 武器:装備なし 防具:皮の鎧 装飾品:装備なし

 と書かれていた。

 僕は分からない用語があったので操作方法のパネルを見るが、書いていなかった。

 「あれ?どこに書いてあるんだ?」

 パネルをタッチすると本みたいに捲れ「用語説明」のパネルに変わった。

 僕は「知力」・「精神」・「器用」・「魔力」を探す。

 パネルにはこう書いてあった。

 知力…魔法攻撃力の意味。レベルが上がるごとに与えるダメージ量が上がる。

 精神…魔法防御力の意味。レベルが上がるごとに受けるダメージ量が下がる。状態異常に強くなる。

 器用…レベルが上がるごとに攻撃時にクリティカルがはいる確率が上がる。

 魔力…呪文を発動するのに必要。レベルが上がるごとに値が増える。

 「結局のところ僕は強いのか弱いのかイマイチ分からないな。って武器はどこ行った!」

 自分の腰回りを見ても武器らしい物はなかった。僕は慌てて操作方法のパネルを見ると、そこには『装備欄のパネルをタッチ』と書いてあった。それにしたがってタッチしてみると、『装備一覧』と言うパネルが現れた。

 「武器の欄に杖と剣がある。うん~どっちでもいいっか」

 僕は剣のアイコンをタッチすると腰あたりに剣が現れた。

 剣は初心者用の「鉄の剣」だった。

 幸い、攻撃力と知力が一緒でよかった。これが極端に知力がデカかったりすると杖を装備せざる負えないし設定に感謝。

 武器を装備し終えた僕はその時やっと気づいた。

 「敵とかプレイヤーがいない」

 普通、チュートリアルだと雑魚キャラ一体は出てくるのだが、なぜにか出てきていない。それに、不安になった僕は操作方法のパネルをよく読むと、奇妙な文があった。

 「『敵が出てきたあなた!さようなら』だと……じゃあ、この状況はラッキーなだけか」

 その文のしたに探していた文があった。

 『チュートリアルを終えたいあなたへ、2回連続パネルをタッチしてください。最後に注意!この後すぐ敵が出てきます気を付けてください』

 僕は剣を構えパネルをタッチするとまた眩い光に包まれた。

  

 光が消えた瞬間、獣の唸り声が聞こえた。場所としては森だった。

 声からして2匹。今の自分に倒せるか分からないが戦ってみることに。

 僕は念のために呪文のパネルを見てから剣を構えなおすと、木の陰から黒い獣が出てきた。

 その獣を視認すると、小さいパネルが視界の端に出現した。いきなりの出現に驚きパネルを見るとそこには、獣の名前に種族が書かれていた。

 「なっ!狼だって!ゴブリンとか期待したのに!ええい!仕方ない『フレイム』!」

 僕がそう言った瞬間、剣先から小さい火の弾が出てきて一匹の狼に着弾した。着弾された狼は燃え、あっいう間に消失した。骨を残さずに。だけど、安心するのはまだ早い。もう一匹狼がいるからだ。

 残った狼は相方の狼の灰を見ると、こちらに突進してきた。が、僕は容赦なく眉間に剣を突き刺す。突進してきたスピードが相まって簡単に刺さった。

 バキッ!っ硬い音がした。確かに剣は狼の脳に達した。僕は剣を抜くと傷口から止めどなく血と脳漿が流れてきた。僕はそれを見てからボソッと一言。

 『フレイム』

 すると、血と脳漿を流していた狼に火が付きあっという間に全身を包み込んでいった。肉を焼く匂いに僕は気付いた。

 (僕は誰だ?)

 さっきの行動は明らかに自分自身が考えて行ったものではなかった。現実の世界では包丁をロクに使えないのに今の行動は明らかに変だった。

 そう考えた時はもう遅かった。さっきまで使っていた剣が僕の心臓に標準を合わせ空中に止まっていた。

 僕はさっき見た呪文のパネルに記されていた2つの呪文の内もう1つの呪文を口にする。

 『ホーリーデス!』

 すると、僕を中心に眩い光が現れた。自分からしたらただ単に眩しいだけだったが、いつの間にかさっきまで浮いていた剣は地面に刺さっていた。何が起こったのか理解できなかった僕は刺さっている剣を抜こうとしたら黒い靄みたいのが剣から出てきた。

 「な、なんだ」

 突如発生した黒い靄は徐々に人の形をしていき、最終的に2メートル近くの巨体になった。

 僕は逃げようとした瞬間、黒い靄が喋りだした。

 「名もなき旅人よ。貴様はある審査に合格した。今まで来た数多くの人間は無能なやつばっかだったが、貴様は違うらしいな。感心した。貴様の名を聞こう。合格者よ」

 「その前に、審査ってなんだ?」

 「そうだった、教えなければいけないな。これはプレイヤー審査と言って、私の攻撃を防ぐことが出来る者を選定する。出来た者は正式なプレイヤーになれる」

 「じゃ、じゃあ、正式なプレイヤーになったのはこれで何人目だ?」

 「貴様を入れて1人だ。それじゃ、貴様の名を聞いても?」

 「カルトだ」

 「カルト……なるほど貴様であったか」

 何を言っているのか分からないが黒い靄はぶつぶつと何か言いだしたかと思ったら、こちらを向いた。

 「カルト。貴様はこの世を生きたいか?」

 「当たり前だ。現実に帰ったところでやることもなく暇だからな」

 「カルト、貴様は知らんのか?貴様は二度といや、ある条件をクリアしないとこの世界から出ることはできない」

 「はい?冗談じゃない――」

 「冗談じゃない。試しに設定パネルを出してみろ」

 言われた通りパネルを出してみるとそこには『ログアウト』の文字が無かった。やっとわかった。リラがあの時「いい余生」と言った意味が分かった。この世界で死ぬと現実の自分が死ぬ。となると――

 「死ねないじゃん!」

 「そうだが。それがどうした。人や物は無限の命を持つことはない、どれも有限の命だ。これは不変の常識だが忘れたのか?」

 「忘れてなんかいない。なぁ、聞いていいか?」

 「左様。なんでも聞くがよい」

 「俺以外のプレイヤーはどこ行った?」

 「早速それか、簡単に言うと貴様以外のプレイヤーはおらんよ。貴様以外の人間はさっきの狼に殺されたか儂に殺されたかして死んでいった。どの職業でも対処できるように準備はしてあったはずなんだが、全員が何もせずに死んでいった。儂としては十分な時間を与えたはずなんだが」

 「と言うことは、現実の世界からのプレイヤーは僕だけってことか?」

 「左様」

 だとおかしいことが1つ。プレイする前に見た取説にはプレイヤー人数が1億人と書いてあったがどういうことだ。日本の総人口の2倍もの数の人が死んだとは考えにくい。だとすると……

 僕が考えていると、黒い靄は僕の疑問が分かったのか答えてくれた。

 「貴様の疑問はもっともだろう。儂が説明してやろう。人には現世の命と来世の命がある。現世の命を終えた時にごくまれに来世の命に現世の情報が書き込まれる。これを貴様たちの言う生まれ変わりとかいうだろう。だが、ここでの死は現世の命と一緒に来世の命まで持ってかれる。すなわち、二度とその人間は現実に生を持つことが出来ない」

 「ま、待ってくれ。それだと僕以外の人類は滅んでいるんじゃないか!」

 「そうだ。貴様以外の人間は滅び、その代わりにアンドロイドが入っている」

 「母さんや父さんやほかの人は皆アンドロイドだというのか!」

 「そうだ。衝撃的だが、わかって欲しい」

 「わかって欲しいだ?ふざけんなよ!僕の今までの日常は何だったんだよ!僕以外全てがアンドロイド?そんなのどうせ嘘だろ!答えろ黒野郎!」

 僕は黒い靄に向かって怒鳴るが、靄は落ち着いた声色で話し始める。

 「貴様は合格者としてこの世界で死んでいった人間の分まで生きるのだ。儂も貴様に辛いことを言っているのはわかる。だが、貴様にはそれを背負う義務がある。それを忘れずにこの世界を生きろ」

 「無理だよ」

 「無理ではない。やってないのに無理だと言うな。貴様は命を背負うと同時に人類を救う鍵となる」

 「鍵だと?」

 「貴様がこの世界をクリアした暁にはこの世界で死んだ人間の命を返そう。これはクリア報酬だ。だが、貴様が冒険の途中で死んだ場合、貴様の母国の日本の人類は儂らアンドロイドの物だ。それが嫌ならクリアするがよいこの世界を『ラストアース』を!」

 黒い靄はそう言うとどこかに消えてしまった。鉄の剣を置いて。

 僕はまだ真実を受け入れなくて座り込む。

 「何でだよ……なんでこんなことに……」

 ガサッ。

 「な、なんだ!」

 耳を澄ますと先ほどの狼と同じ唸り声が聞こえた。数は先ほどの数倍。さっきの怒鳴り声につられてきたタチだろう。剣を取りに行こうにしても少し距離がある。およそ、僕が動いたと同時に襲い掛かってくるだろう。ならやれることはただ一つ。

 『ホーリーデス』

 小声で呪文を唱えると森一帯が明るくなった。よく見るとかなりの狼が居ることがわかった。僕は急いで剣を手にし、少し離れた位置にいる狼に向かってフレイムを打ち込む。

 少しだけど時間稼ぎになるだろう。狼が燃え上がっている間に僕は狼の群れを突っ切る。

 「こんなところで死ぬわけにはいかない!」

 走っていると、急にパネルが現れた。そこには『レベルアップ!レベルに5になりました!体力:+15 魔力:+10 攻撃力:+9 知力:+9 防御力:+10 精神:+11 素早さ:+8 器用:+10 スキルポイント:+30』と書かれていた。

 スキルポイントと言う文字に一瞬困惑したが、すぐにスキルツリーのパネルを開いて素早くポイントを消費していく。僕は30ポイント消費して新しい呪文と技を覚えた。僕は後ろから迫ってきている狼たちに新呪文の『ウォーター』と『ブリザード』を放つすると、水をかぶった狼がたちまち凍っていた。

 「これなら、突破できる!」

 僕は地面にウォーターを放ちすぐにブリザードを発動する。すると、地面がスケートリンクみたいに滑りやすくなった。案の定、狼たちはそこで滑り狼の山が出来た。僕はその山にウォーターとブリザードで凍らせ、すかさずフレイムを打つ。

 かなりの数がいた狼は氷の欠片となって砕けた。全滅したことを確認すると、パネルが現れた。

 『レベルアップ!レベル12になりました!体力:+18 魔力:+20 攻撃力:+20 知力:+18 防御力:15  精神:+17 素早さ:+17 器用:+23 スキルポイント:+60』だった。

 僕はポイントを振り分ける体力がなくそのままにして歩いていると、町が見えてきた。

 「や、やった!町だ!」

 僕は町まで残された体力をフルで使い向かう。


 現在ステータス

 レベル12

 体力:83 魔力:80 攻撃力:54 知力:52 防御力:45 精神:53 素早さ:45 賢さ:48

 残りスキルポイント:60

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ