プロローグ ラストアース
2550年。車は自由に空を飛び、アンドロイドが人間に代わり多くの仕事をし、人類は働き手を失った国、日本。
プログラマーやサラリーマンなどの機械を扱う仕事の他に教師や車掌など、今まで人の働きがあったからこそ成り立っていた仕事は、いつの間にかアンドロイドに奪われ多くの家庭が崩壊した。そして、人類は2200年を皮切りに段々と衰退してきた。昔と言ってもかなり昔の2000年の時点では人口は1億2千万人いたが、現在の人口は5000万人しか存在しなくなった。
理由は明白だった。仕事が無くなったため収入がなくなり、生活することが難しくなったからだ。その筈なのに、この「ラストアース」と言うVRMMOのプレイヤー人数は1億人いた。
普通、VRMMOなどのオンラインゲームと言えば全国の人と通信してプレイするのだが、このゲームは日本だけでしか出来ない。そして、皆は思うだろう。日本に来ている外国人がプレイしているからプレイヤー人数が多いと。残念ながらそれは違う。
日本は100年前に外国人が日本に来ることを禁止した。そして、よくRPGに見られる1人のプレイヤーが複数のデータを所持してプレイしている状態も考えたが、このゲームはどうやらそう言うことが出来ないらしい。
僕は取説を読むと驚愕した。そこには、『このゲームに命の保証はありません。それでも良い方はプレイしてください』と。
僕は嘘だと思いながら、パソコンにインストールしVRマシン『ラース』を付けベッドに寝転がる。
VRマシン『ラース』とはゴーグル型のマシンで、装着者の意識をゲーム内に連れていく。今までにVRマシンは幾つもの種類が発売されているが、個人的にはゴーグル型が気に入っている。
基本的にVRマシンを使うときは、長時間プレイできるように安全なところでプレイするようになっている。そのため、ほとんどの人はどこかしらに寝転んでプレイしている。
僕はベッドに寝転がり『ラース』の電源を入れ呼吸を整えスタートボタンを押すと、僕の意識はゲームに吸い込まれた。
僕が目を開くと、少し離れた場所に緑色の髪をした女性がデスクトップチェアに座っていた。
その女性は僕に気づいたのか、微笑みながら近づいてくる。
「初めまして。私の名前はリラ。これからプロフィールを作るからそこにあるイスに座ってください」
リラと名乗る女性は先ほどまで座っていたイスに戻り、バインダーを取り出し僕が着席するのを待っている。
僕が着席したのを見ると、リラが訪ねてきた。
「まず、あなたの名前となりたい職業を言ってください。職業については剣士・弓兵・術士・暗殺者・獣人・龍使い・賢者の8つから選んでください」
どこにでもある、一般的な質問である。
「名前はカルト。あっ。1つ質問」
「はい。なんでしょうか?」
「術士って剣とか使える?」
「はい、可能です」
「んじゃあ、術士で」
僕が選択し終えるとリラが「最後の質問です」と僕に近づきながら言ってきた。そして、その質問に僕は唖然とする。
最後の質問はこうだった。
「私にあなたの命を預ける勇気はありますか?」
さすがに即決出来るわけなく考える。
(命を預けるだと……やっぱり取説に書いてあった通り命を賭けるのか……少し不安だけど、僕はその気でプレイしたんだ)
「リラ。君に僕の命を預ける」
「いいんですね?」
「ああ。後悔などしていない」
ああ、してないさ。この人生に後悔しても、この選択には後悔していない。
一通りの質問を終え、カルトから離れた場所で答えの書かれた紙をみてリラは微笑む。
「これで今月は何人目ですかね?ここまで来たのは。私も少し調子が乗り過ぎたかもしれませんね。術士のくせして、剣を装備など普通は出来ないんですけど今回はおまけですかね。これもこの世界を生き抜くために必要なのですから」
今の独り言は「カルト」とか言う青年には聞こえていない。
今から死ぬ人間にそのようなことを言っては意味がないのだから。
「あなたの知っている人たちのほとんどはもう死んでいますし。やっとあなたの番が来て私は嬉しいです。『カルト』いえ、加藤透さん。あなたが死んでも現実の世界では私たちアンドロイドがあなたを演じるので、気兼ねなく死んでください。……さて、そろそろ戻って転移させないと」
そう言うとリラは、カルトの所まで歩き出した。
「お待たせしました。転移の支度が整いましたのでこの椅子に座って力を抜いて待っててください」
僕は先ほどまで座っていたのと違うイスに深く座る。
「はぁー緊張してきた。いかん、力を抜かなくては」
僕はだらんとして待っていると、リラが来た。
「カルト様。今から目を閉じてください。つぎ目を開いたら目の前には新しい世界がひろがっていますので。では、いい余生を」
え?余生?僕がその言葉に違和感を感じた瞬間、目の前に眩い光が放たれた。
こうして、僕はラストアースの地に降り立った。
今回はVRMMOです。
「あの日から僕は」と並行して書くので遅かったりします。
一話一話を少し長くします