ストーカーを避けてたらヤンデレに出会いました。逃げていいですか?
ボーイズラブOKな方だけどうぞ。そうでない方は、プラウザバックを推奨します。
どうして、僕の隣に毛艶のいいデカイ虎さんが喉を鳴らしているのでしょうか。
僕は、しがない中流程度のソロ冒険者でした。
僕の出で立ちは、細身の体に少し汚れたグレーのフードを着た普通の冒険者なんです。
目立たないように隠れて狩りをしてフードを目深に被っていそいそと寝に宿に戻るという地味な生活を送っています。食事はすべて外で自給自足の生活です。ギルドでも、仲良くしてくれている職員がいる時しか報告しないようにしてます。
そんなのでお金に困らないのかって?
食事は魔物や動物を狩って自分で調理したものを食べるし、洋服も二、三ヶ月に一回最低限の下着を何枚か買うのみ。後は自分で毛皮を狩って作りますので、ご心配には及びませんよ。
身分は何かって?
そりゃ普通の平民ですよ。
王族とか貴族とかだったら大問題になってます。
なぜ地味な生活をしているかって?
そこなのです。自覚はなかったのですが、僕は見目がありえないぐらい良いらしいのです。最初に言っておきますが、決して自慢したいわけじゃありません。僕にとってはトラウマですから。
僕を見た物好きな方たちは、大抵変質者になってしまうようなのです。誘拐されたのなんて一度や二度じゃありません。闇市に売られそうになったことだってありました。さすがにその時は、人生詰んだと思いましたが、なんとか生還を果たしました。悪運が強いのでしょうね。
そんな僕ですが、今日もせっせと人目のつかないところで採集をしていました。採集場所は、大きな石がゴロゴロしている岩場です。そこで依頼である薬になる花を探していました。
ここにもももちろん魔物がでますから、狩をしながらです。いいお小遣い稼ぎにもなります。
あの時も魔物を狩って毛皮を剥いでいたのです。
ふと視界に柔らかそうな白黒の毛を蓄えた脚が見えたのです。その先に鋭い爪が地面に食い込んでいたのです。
ポタポタっと水滴が落ちてシミができます。
………考えるのを放棄したくなりました。
「ぐるるるっ…」
恐る恐る顔を上げてみれば間近に迫った唸る獣、
……とら?
いやもう、驚きました。
しばし金色の瞳と見つめ合ってしまいました。
体長は3メートルは軽くあるでしょうか。でかいです。
よだれがボタボタたれてます。
食べ物に認識されているのでしょう。それにしなやかな尻尾がブンブン揺れてます。ご機嫌でなにより。
いやいや、僕は窮地です。しかし、人間こうして命の危機に直面するとなにもできなくなるのです。
「食べますか…?」
思わず手元にあった魔物の肉塊を差し出しました。
「グフゥ」
がぶりと一呑みです。僕もああして食われるのでしょう。そう思ったときです。
がぶっと首根っこを食まれて宙ぶらりんになったとおもったら走り出しました。
「えぇっ?!ぎゃあぁっ!?」
せめて何かを言ってから走ってください。
まぁ、無理ですけど。おかげで脱げかけていたフードはどっか飛ばされました。
場所もわからない岩ぐらに連れ込まれた時には、酔って気持ち悪くなってしまいました。気持ち悪くて何もできないでいると鼻息を荒くした虎にベロベロとザラザラする舌で舐めまわされました。
そのあと?……察してください。
食われてはいません。別の意味で喰われましたが。
開かないでいい扉を開いてしまいました。
その後の虎さんはとてもご機嫌で、尻尾を腰に巻きつけて四六時中離れないのです。
街にも行けましたよ。
フードがなくても変質者と一緒に町の人たちも逃げていきましたが。
……虎さんから逃げていいですか?
勢いで書いてしまった話ですが、如何だったでしょうか。楽しんで頂けたら幸いです。