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台風による長雨の影響について

作者: 宮ノ木 渡
掲載日:2016/04/08



今世紀初といってもいいぐらいの

少なくとも僕がこの部屋に引っ越してからは

体験したことが無い様な大型の台風が迫っていた。


その日は仕事の為、夕方には外出しなければならなかったのだが

その時はまだ雨が降っていなかった。


曇天の下、傘を携え自転車を漕いでいると

強風に見舞われ前に進めず、時折歩くことを余儀なくされた。

雨が降っていないことが嘘のような天候だったが

それでも行く道で困ることはなかった。

木々は揺れ、何か物が飛んでこないかと心配ではあったが。


仕事が終わり帰途に就いてもそれは変わらなかった。

雨が降り始めたのは夜になってからだった。


自室でラジオをぼんやり聴いていると雨音がDJの声に混ざって聞こえてきた。

それからしばらくして天井から滴が落ちて来た。

雨漏りには慣れていたので(それでも焦って)

プレスチックの洗面器と鉄鍋をその下に置いた。


ラジオではそんなに遠くない地域で避難勧告が出された、と言っていた。

僕はひとまず眠ることにして布団に入ったのだが

鉄製の鍋とプラスチックの洗面器に当たる雨粒の音が

まるで不規則に時を刻む時計の秒針の奏でる音の様に部屋に響いていた。


なかなか眠ることができず

しばらくしてから二つの容器を覗くと

茶色く濁った雨水が溜まっていた。

水滴が飛び跳ね周りの床がしたたかに濡れていた。

床を拭き、溜まった雨水を窓の外に捨てる。

暗闇の中、木々は濡れ、水が滴り落ちていた。

風はそれでもだいぶ弱まっているようだった。


それからしばらくして眠りに就くことができたが、三時間ほどで目が覚めた。

外は相変わらずの豪雨ではあったが

少なくとも朝日は覗いているようで明るくなってはいた。

台風とは無関係なようにのんびりとした小鳥の鳴き声が、時折聞こえてくる。


僕はその時初めて、この街は作り変えられている、と思った。

少なくとも昨日までの街の風景はもう見られないのだろうという

漠然とした喪失感と、それよりはむしろ大きな期待感があった。

台風が去り、雨が上がればそこにはきっと新しい世界があるはずだった。










ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

もし何か一つでも、胸のどこかでひっかかったり、静かに沈んだりするものがあれば、とても嬉しいです。

感想やブックマークをいただけると、次に進む勇気になります。

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