後日談らしきもの
とある出来事の後日談らしきものを少女の手記から抜粋したもの。
※この小説を見つけてしまった人へ
身内内でのTRPGセッションの後日談を書いたものです。傍から見たら意味不明だと思いますので、ご了承ください。
いつ削除するかもわかりませんので、その点もご留意ください。
あの時、あの場所で、《あれ》を葬ったことを、私は生涯忘れることはないだろう。
私はつい最近、恐怖的な体験をした。と言っても、テレビ番組で特集として組まれているようなものではなく、現在の常識では計り知れないような、どちらかといえばフィクション小説に近いものである。今となっては、その部類の大抵のホラー小説も生ぬるいと思うようになってしまったが。2週間前にあったあの5日間の出来事は、今でも本当に現実であったことなのか疑わしく思える。ただ、あれは実際に現実であったことであると、今書いている私も認識している。
始まりはいつものように生徒会メンバーで雑務をしていた時だった。その頃からもうこの街では人が失踪したり自殺したりするのがニュースでは流れていた。ただ、自分たちの街のこととは言え、身近な存在が関わってもいなかったので、関心はあってもそれ以上の興味はなかった。
学校の先生から、うちの学校でも失踪者が出た、ということを聞いて原因をそれとなく探ってみてくれないか、と言われた。その時はまだ何も知らず、素直に引き受けてしまった。これが、《あれ》らと関わることになってしまった原因であろう。
初めはせいぜい新興の宗教か犯罪が関わっているのだろうかくらいの気持ちで、自分たちの手に負えないよであればそこで中断しようと思っていた。いくら学校で生徒会長をやっていて、多少自衛手段には覚えがあるとはいえ、1個人で対処できることはそう多くない。それが、世の中の仕組みだっていうのはそれなりに賢しいつもりでいたその時の自分でも薄々気付いていたし、正しいことがすべて賞賛される、なんて純粋に思い込んでいるほどこの世の中を信じてもいなかった。世の中で認められて一目置かれる、なんてことは少しも考えていなかった。せめて、自分の身の回りの人たちの中では、《純粋で優しく頼りになる生徒会長》を演じているくらいで満足だった。
ただ、その後、様々な場所や人を調査して、少しずつ真相に近づいていった。いや、それは少し違うか。結局のところ、本当に何が起こったのかを一字一句解明することはできなかったのだから。初めはふとした疑問や違和感だったが、時が進むにつれてどんどんこのことが現実的にありえないことである、と認識していくようになった。毎日の悪夢、鏡を見るたびに起こる幻覚、精神の崩壊。精神病というのは一概にまとめられるものではないとは言え、流石にあそこまでおかしくはないはずだ。そして、それが自分一人ではなく、全員が同じものであったならなおさらだろう。
最後の5日目、この街の郊外にある山。あそこで全てが終わった。
小屋の中にあった瓶を割ったら全てが元に戻った。完結に文章にするなら、これだけで済んでしまうだろう。だけど、あの場所であったことは、言葉では表しきることができないくらいに、鮮明で、醜悪で。私の記憶から消えることはないだろう。いや、消すことは許されないだろう。
私は《あれ》を殺した
私は覚えている。記憶している。認識している。
思い出そうとすれば全て思い出せる。光景も、音も、臭いも、味も、感触も。心理状態も全て。
あの場所にいた、いやあったのは、人でなき人。名前をつけることはできないが、私は《あれ》と呼ぶことにしている。
《あれ》は生きていた。人ならざる姿で。
《あれ》は見ていた。目という視覚器官もないのに。
《あれ》は認識していた。醜悪な塊の形をして。
《あれ》は発していた。言語化された文字の羅列を。
そして
《あれ》には知性があった
人間とそれ以外の生物。その2つを区別するものは理性である。定義としては様々あるのだろうが、これは一般常識である。じゃあ《あれ》はなんだ?《あれ》には知性があった。理性があった。器官がなくても、見ていた聞いていた発していた感じていた。じゃあ《あれ》が人間だとでも言うのか?私には、それを認めることができなかった。
だから、コロシタ
あんなものが人間であるだと?だったら、ニンゲンとはなんなのだ。これ以上書き綴ると思考のループが発生するのでやめておく。結果として、私は《あれ》を許せなかった。だからこの手で葬り去った。それだけのことだ。あれが人間であると認識してしまうのは自分だけで十分だ。だから、《あれ》という人間を殺したのは、そう認識しているのは、私だけでいい。私だけしかいないから、私だけは絶対に忘れてはいけない。そうでなければ、《あれ》という人間は存在しなかったことになるのだから。
私は忘れない。だから、永遠に消えてくれ。
あの出来事の概要について記していたつもりだったが、話がそれたようだ。
これを再び読んだときに思い返せるように、後日談というか、今書いている時のことも記しておこうか。
あのあと、各場所に報告したあと、1度みんなと別れて、死ぬように眠った。ほとんどの人が徹夜明けだったし、極度の緊張が解けたということもあって、1日近く眠ってしまった。
再びみんなと集まった時、解決おめでとうパーティをやった。深く関わった人を全員呼んで(じいさんは来なかったが)、大量の料理を3人掛りで作って(あきちゃんは予想通りだったけどしゅうくんも料理ができるのは予想外だった)、私の部屋を使って、飲んで食べての宴会まがいのことをした。みんなこの一週間暗い出来事が多かったのもあって、反動で面白おかしく騒いで楽しんでいた。
そして、それ以降はまた元の生活に戻った。みんなどこかしら変わったところはあったのかもしれないが、あの出来事の前と変わらない生活をはじめた。ただ、全員あの出来事を忘れることはないだろう。
ほかのみんなはどうかは分からないが、私に関して言えば、何点か今までと変わったところがある。
まずは、斜に構えて物事を見るようになってしまった。この世の中はきれいごとで成り立ってはいない。そう、この一連の出来事の中で何度か深く感じてしまった。無事だったから良かったものの、あきちゃんが自殺しかけていたのに薄っぺらい言葉しかかけていなかった大人たち。清廉潔白でいろなんては言えないけれど、もう少し何かしてくれなかったのか、とは感じた。あの一件は自分の力不足も感じているので、正しいことをやっていればそれが正解になるというわけではないと、深く身にしみた。そのせいか、物事に対して疑惑的に一歩引いて俯瞰するようになってしまった。
次に、じいさんのところに直々顔を出すようになった。あのじいさんに対しては、今回は完敗だった。だから次は痛み分けくらいまでは持っていけるように、というのもある。それと、あの時は緊迫していてそれどころではなかったが、オカルトに興味を持つものとして、あそこは宝庫以外の何物でもない。実際に現実にあのような事がある、と分かってしまった今では、少しでも世の中の真実を知ろうと思うのは間違っていないはずだ、という強引な理由付けをして、じいさんの家には遊びに行っている。なんだかんだ言って、じいさんも迷惑そうにしながらも毎回入れてくれるし。ぽつぽつとだけど、私の話にも答えてくれるし。
連絡先も知りたかったのだが、そっちは頑として未だに教えてくれていない。なので、直刃さんに頼み込んで直刃さんの連絡先を教えてもらった。あの二人との関係は良好と言えるだろう。
そして最後に、もっと純粋に私個人に関わること。それは感情の変化というやつだ。まあ、何が言いたいのかというと、恋したいなぁ、ということだ。
はじめくんとあきちゃんは現在、いい感じである。みおちゃんが何も知らずに妨害してくることを除けば、だが。あれは本当にやめてほしい。私がいつも気を使って、というか楽しんで2人をくっつけようとしているのに、あれはない。ほんとない。
まあ、それは置いておくとして、身近な人たちが恋愛をしているのを見ていると、自分もしたいなぁ、と思うようになったのだ。このへん私も女の子なんだよね。だからといって誰でもいいというわけでもないし、私だって運命の出会いってやつに期待をしているし、今は誰が好きというのではないのだが。その点、あの2人は誇張でもなく命を助けてるし、十分運命の出会いって呼んでいいやつだと思う。いいなぁ。
なので、今はあの2人を応援しつつ、自分も恋してみたいという想いをもって過ごしている。誰かいないかな。
こんなところだろうか。最後に少し私情が混ざったが、私はこの出来事は忘れないだろう。
ただ、物事に絶対はないし、何かしらで忘れてしまった時のために、これを記しておく。
忘れるな。絶対に。このことを。
とある少女の日記より