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真冬の闘争  作者: 小夜
第二章 女の戦い
13/50

女の戦い …10

 自分への視線の集中は一向にゆるむことがなく、居心地悪いなあと思いながら、モナは有力貴族の顔と名前を覚える暗記学習に励んでいた。


 「あの人はだれ?」という質問に、賢いラッティ少年はさまざまな解説付きで、よどみなく答えてくれる。派閥の人間がかたまって集まっている舞踏会の会場での実地学習は、まるで整理された資料を閲覧しているかのようで、とても効率が良いものだった。


 自分に集まる視線さえ気にしなければ、学習環境もそれほど悪くない。あたりには耳に心地よい音楽が流れているし、喉が渇けば通りかかった侍女に飲み物も頼める。


 モナにとって、宮廷人たちから仲間外れにされる程度のことは、どうでもいい問題であった。


 べつに宮廷人と深いおつきあいができなくても、仕事場に行けば友人知人が山ほどいたし、やりがいのある役目もたくさん抱えている。


 むしろ最近では、予定が重なって時間のやりくりに苦労することのほうが増えてきていて、もっと仕事を手伝ってくれる人を増やさなければなあと、思っているくらいだ。


「モナ様、立ちっぱなしで疲れませんか。サロンのほうへ移動されてはいかがでしょう」


 舞踏会の会場の壁際で一人立つモナを心配して、ラッティがたずねてくる。


 大広間の東側には広い廊下が並行して走っており、その廊下と広間の境目には装飾がみごとな列柱が並んでいた。普段は廊下として使われている空間を、大広間と通じるサロンとして使える設計になっているのだ。そこにはたくさんの椅子や小テーブルが運び込まれていて、踊りつかれた人々が休憩できる場所となっていた。


「そうねえ」と、モナは首をかしげた。


 今夜は自分のせいで、舞踏会の会場へ人が集まる時間が早まってしまった。椅子は二、三人のグループも、ちょっとした集団も、それぞれ楽しく語らえるように工夫して配置されていたが、8割方がすでに着席者で埋まっている。


 王子の小姓であるラッティに頼めば、王子の側近につながっている下級貴族あたりに席を譲ってもらって座る場所を確保することもできるだろうが、今夜はモナが何をしても、宮廷人たちのあら探しに話の種を提供してしまいそうだ。


 おそらく意地悪な女たちは、モナが王子殿下の威を借りて下級貴族をサロンから追い出したなどと、言い立てるにちがいない。


 いいがかりをつけられるのも不愉快だし、脚もべつに疲れてはいない。剣術と乗馬が趣味であるモナの身体は、作りからしてそもそも、そこらのか弱い貴族のお姫さまとはちがうのだ。


「そんなに疲れていないから、大丈夫よ」


 モナはラッティへ感謝の笑顔をむけながら答えた。


 ところが、その言葉に返事をしたのはラッティではなかった。


「モナシェイラ。疲れていなくとも、お座りなさいよ」


 あらと、モナは話しかけてきた相手を見た。今夜はだれからも話しかけてもらえないだろうと思っていたから、ちょっと驚いたのだ。


「まあ、ジャンニーナ。こんばんは」


「こんばんは、モナシェイラ」


 相手は王都大火のおりに率先してモナを助けてくれた、エテイエ子爵の未亡人ジャンニーナだった。


 彼女はまだ若いのだが、嫁いですぐに夫の子爵と死に別れてしまい、子供もいなかったので国王の寵妃エレーナ姫の侍女になったという人物だ。未亡人という立場上、いつも黒や紺色のドレスを好んで身に着けており、ローザニアで最も平凡な茶色の髪を堅苦しいほどにきっちりとまとめている、真面目そのものといった外見の持ち主である。


 外見から人々が想像するイメージを裏切ることなく、ジャンニーナは聡明で博識な女性だった。貴族身分にある王宮の侍女は、いわば貴人の話し相手のようなものだ。周囲の者たちは、賢い彼女なら、そのまま寵妃のそばに侍っていれば、いずれは宮廷の侍女長になれるだろうと思っていた。


 しかし、彼女自身は毎日着飾って何をするでもなくすごす毎日に、うんざりしていたのである。


 そんなおり、王都プレブナンに下町の3分の2を焼きつくす規模の大火が起こった。


 日頃から下町の貧しい人々の暮らしを助ける活動していたヴィダリア侯爵令嬢モナシェイラに敬意を感じていたジャンニーナは、野営病院の看護人を求める呼びかけに、迷うことなく馳せ参じた。


 彼女はたいそうな教養人だったので、モナが教えることを余すことなく吸収し、いまでは設立準備中の国営病院で働く看護人を教育する学校で、教師として教えることを副業にしている。国営病院設立準備委員会の理事に名を連ねているモナにとっては、同僚といってもよいくらい、親しい人物だった。


 知的な茶色の瞳を強い感情できらめかせながら、彼女はモナの腕に自分の腕をからめてくる。


「さあ、こちらにいらして!

 お偉い方々の、あなたへの態度ったら、ひどいなんてものじゃないわよ!

 もう黙って見てはいられないわ!

 エレーナ王妃陛下からは、サロンに席を確保しておいて、国王夫妻と隣国の王女方の御入来が終わるころ、あなたもお誘いするようにと言いつけられていたけれど。

 ちょっとくらいお誘いが早くても、王妃陛下は怒ったりなさらないわ!

 それどころか、『ニーナ、よくやりましたね』と、わたくしをほめてくださるに決まっています!」


 さあ、さあ、さあと、ジャンニーナはモナの腕をひいた。


 彼女が早足で歩くもので、未亡人の黒いドレスとモナの淡いすみれ色のドレスが、からまりあう。


 モナに注目していた宮廷人たちは、あっけにとられて、その姿を目で追った。


 エテイエ子爵未亡人に引っ張られていくヴィダリア侯爵令嬢は、抵抗こそしていなかったが、まるで人さらいにさらわれていくお姫さまのようによろめいていた。


 じつは、予測していなかった方向へ引っ張られたモナは、ドレスの中で足にからまるペチコートをさばききれなくなって、悲鳴をあげる寸前まで追い込まれていたのだ。普通の貴族の令嬢のように結婚相手を探してパーティーを渡り歩くようなまねなどしたことがないので、豪華な舞踏会用の衣装など、まだほんの数度しか着たことがないモナなのである。


 あれよという間に、モナは大広間とサロンを区切る列柱のあいだを通り抜けさせられ、宮廷人たちが座ってくつろぐ場所の真ん中へ連れ込まれた。


 そこには小集団が会話を楽しみながら舞踏会の会場を見渡せるスペースが、快適にしつらえられている。


 すでにその場所を占領していた先客たちは、にこやかに笑ってモナとジャンニーナを迎え入れた。


「ニーナ、おつかれさま」


「こんばんは、モナ」


「ああ、モナ! 気をもんだわ!」


「もっと早く、あなたを助けに行きたかったけれど」


「ニーナが、どうせなら、もっとも効果的な時機を見計らってやるわよと、言うのですもの」


「まさか、泣いたりしていないでしょうね?」


「大丈夫よね? モナは、この国で一番、前向きで元気なお姫さまですもの」


 集団の真ん中に座らされたモナは、嬉しくなって笑った。


 彼女を迎えに来てくれたのは、普段からいっしょに働いている未亡人や令嬢たちだった。


 令嬢たちは、令嬢と呼ぶにはいささか薹のたった年齢の女性が多い。とはいっても年頃は全員20代半ばくらいで、モナよりも少しだけ、お姉さんといった雰囲気の女性たちばかりだ。


 貴族の次男三男の結婚年齢が上昇すると、必然的に結婚相手を見つけそこねる令嬢の数も増えるのである。


 男というのはずうずうしい生き物で、自分はかなり歳を食っていても、結婚相手の女性には輝く若さを求める。貴族の女性の結婚適齢期である16歳から20歳までのあいだに結婚相手を見つけられなかった令嬢は、まだ花のように美しくても、オールドミス扱いされるのが世の常だった。


 家庭を営み子をなす役目が得られなかった貴族の女性は親族からも厄介者あつかいを受けて、父親や男兄弟が管理する領地の屋敷にひきこもって暮らしたり、修道女になって神さまと一生をすごしたりするものだ。


 しかし、ここに集まっているお姉さま方は、どの方も自分が大人の女性であることを誇り、生き生きと働きながら、毎日を楽しくすごしている。


 彼女たちの仕事も、看護人である。


 『すみれの瞳の姫君』の活躍のおかげで、看護人の仕事には聖女のイメージがついたのだ。いまでは国中の若い女性が、新しく作られる国営病院の看護人になりたがっていた。王都大火のおり野営病院で活躍した貴族の女性たちの聡明さや献身的な優しさは、ローザニア王国の女性のあるべき姿の、新たな手本であるとさえ言われるようになっている。


 モナは、特別意識していたわけではないのだが、ひと昔前なら自分の身の置き所にさえこまって不運を嘆いてひっそりと生きるしかなかった年かさの令嬢たちに、生きる意味と仕事を与えたのである。


 本来ならば社会から完全に抹殺されて、残された数十年を忸怩たる思いで生きなければならなかった彼女たちは、世間から敬意をあびて生きる喜びを得た。貴族の令嬢が働くなんてとんでもないことだと思っている彼女たちの父親や兄弟も、『すみれの瞳の姫君』のもとへ集って働くことは禁じなかった。彼女たちは『世界は愛に満ちている』と教え説くローザニア神教の教義を、身をもって表わす聖女となったのだから。


 そんな彼女たちは、自分たちに新たな未来をくれたヴィダリア侯爵令嬢を、何としても守らなければならないと決意していた。


 どの女性も、ぼんくら男と妥協して結婚するくらいなら、一生独身でいる覚悟を決めた女性である。しかも彼女たちには、王都大火で焼け出された人々を助けるという、人としてなさねばならない役目が自分たちに生じたとき、迷いなく現場へ飛びこんでいった勇気と行動力があった。


 大きな街が一晩で灰燼と化し、混乱した現場で絶望した人々の生と死にむきあう体験をすれば、人はさらに強くなる。


 彼女たちは、信じているのだ。


 自分たちが、この時代に生まれたことには、必ず意味がある。


 貧しいものや弱いものにも、生きる権利はあるはずだ。


 モナがこの国の王子妃になれば、きっと、女の生き方も大きく変わるだろう。


 男も女も、老いも若きも、富めるものも貧しきものも、分けへだてなく。すべての人が自分の望む人生を生きられる時代が、きっと、やってくるはずだと。






     **     **






 結局、ヴィダリア侯爵令嬢に意地悪な仕打ちをした三人の派閥の女頭首たちは、それぞれの立ち位置から、大憤慨でサロンの方向をながめやるはめになった。


 それぞれが、それぞれの場所で、それぞれの言葉を使って騒いでいるのだが、話の内容はすべて同じである。


「なんですの、あれはっ!」


「ほ、本来、サロンの中で一番いい位置のあの席は……!」


 王族に連なる女性たちが座る場所とされていたのだ。


 いままでは、王太子妃を担ぐアントレーデ伯爵夫人とその仲間や、国王の妹であるモローズ侯爵夫人、サンジュリ伯爵夫人とその仲間たちで、奪い合ってきた場所なのである。


 ヴィダリア侯爵令嬢の泣き顔を拝んでやろうと意気込んでいたせいで、すっかりサロンの場所取りのことなど忘れていた派閥の女頭首たちは怒り狂った。


 いつも使い走りに使われている下っ端の貴婦人たちは、頭首の怒りに恐れおののきながら、必死の形相で言いつのる。


「今夜は、エレーナ王妃陛下の侍女のエテイエ子爵未亡人が、舞踏会が始まる取り付きの口上がなされる前から、あの席に座っていらしたのです」


「我が国の女性の最高位においでになる王妃陛下があのお席を御所望とあれば、とても、わたくしどもでは太刀打ちなどできません」


「いままでエレーナ様は、あまり表へ出てこられない控えめな方でしたが」


「王妃陛下となられたせいで、エレーナ様も御自分の立場を主張なさるおつもりになられたのでしょうか」


「そうなりますと、王妃陛下にとって、わたくしどもは邪魔者以外の何物でもありませんわ」


「しかも、立場からいえば、わたくしどもは王妃陛下から見下されても仕方がない位置におります」


「エレーナ様は国王陛下のご正妃で、前王弟殿下の忘れ形見という生粋の王族。しかも、将来は摂政大公としてこの国を導かれるローレリアン王子殿下のご生母様なのですから!」


 女頭首たちは、焦ってサロンの方向へ視線をもどした。


 サロンの中央に陣取っている一群は、ヴィダリア侯爵令嬢を取り囲んで、楽しそうにさざめき笑っている。その集団の中には、国軍の有力者の令嬢や財務官僚の令嬢なども混じっていた。


 いずれも、知性が勝ちすぎているせいで男性から遠巻きにされ、婚期を逃したと噂されている女性ばかりである。


 彼女たちのさざめき笑いには知的な雰囲気があふれており、あの場所で繰り広げられている会話の内容が、くだらない噂話などでないことは一目瞭然だった。


 すでに、ヴィダリア侯爵令嬢は、おのれにふさわしい取り巻きを得ているのだ。いや、取り巻きというよりは、ブレーンという呼び方をしたほうがふさわしいのかもしれない。


 そのうえ、姑となる王妃との仲も良好である様子。


 なにしろ、王妃に場所取りを命じられていた侍女が、みずから侯爵令嬢を出迎えに行くくらいなのだから。


 わなわなと震える女頭首たちに、子分の貴婦人が告げる。


「もうまもなく、隣国の王女方と国王ご夫妻の入来があるころかと。ほら、ローレリアン王子殿下が会場の入り口のほうへ移動なさいます」


 舞踏会はあくまでも、臣下の者や外国からの賓客に娯楽を提供するための宴である。あまり早い時間から国王が臨席してしまうと場の空気が重くなるので、国王夫妻は別室で主賓の王女方をもてなし、宴もたけなわになるころ会場入りする予定になっていた。


 それまで主催者である国王の代理として、宴の進行を見守る役を務めていたのはローレリアン王子だ。本来、この役は王太子が果たすべきものなのだが、王太子はまだ会場に姿さえ見せていない。もっとも、王太子が行事に遅刻してくるのは、いつものことであるから、誰も気に留めてはいなかったが。


 側近をひきつれて会場内を移動するローレリアン王子は、道すがら大貴族たちとの挨拶を、そつなくくり返している。


 遠目に見ても、あいかわらず聖王子は見目麗しい青年だった。


 王太子妃の世話役であるアントレーデ伯爵夫人は、青ざめてわなわなと震えた。


「王太子と王太子妃さえ、もっとちゃんとしていてくだされば! 本当なら、次期国王となるはずの王太子のほうが、次男のローレリアン王子より格上であるはずなのに!」


 王太子妃アディージャ姫は、今夜も体調不良で欠席だ。王太子は、どこにいるのかすらわからない。


「わたくしは、ローザニア王国宰相カルミゲン公爵の一族に連なる、王国でもっとも高貴な身分にある女性の、ひとりであったはずよ! どうして、いまになってこんな、惨めな思いをしなければならないの……!」


 奢れるもの久しからずという言葉の意味を、アントレーデ伯爵夫人は初めて知った。


 舞踏会に集った宮廷人たちは、みな麗しい外見の聖王子の動きとサロンで談笑中のヴィダリア侯爵令嬢の姿に注目していて、宰相の引退と共に表舞台から去っていくことになる古い権力者のことなど見ようとはしない。


 もう、侯爵令嬢に後見人がどうのと文句をつける者もいない。ヴィダリア侯爵令嬢の後見人はわたくしですよと、行動によって王妃が、周囲に宣言をなしたようなものなのだから。


 アントレーデ伯爵夫人が、視線を返して自分の取り巻きをぐるりと見まわせば、相手の貴婦人たちは気まずそうに眼を伏せる。


 これが、宮廷の権力闘争に敗れるということなのだ。


 いったい、この中の何人が、次の集まりのときもアントレーデ伯爵夫人のもとへ来てくれるだろうか。


 遠方では、典礼官が隣国の王女たちの名を呼んでいる。


 さまざまな色のドレスに身を包んだ隣国の王女たちは、次々にローレリアン王子の前で膝を折って、優雅な礼を披露した。


 それはまるで、美しい者たちが集う、神々の国の宴をながめるような光景だった。舞踏会に集まった人々は、一斉に感動のため息をついた。


 ローレリアン王子との挨拶を終えた王女たちは、男性にエスコートされてダンスフロアの中央へ出ていく。


 王女たちの相手役は、ローザニア王国五公家の当主たちだった。


 しかしながら、五公家の当主のなかで最高齢のカルミゲン公爵は、踊ること自体が難しい年齢だ。代役はだれであろうかと、宮廷人たちは互いの顔を見あわせた。


 答えはすぐにわかった。


 五人の王女の最後に登場した北の隣国ノールディンの王女ファニア姫を、会場入りするときからエスコートしていたのが、王太子ヴィクトリオだったのだ。


 宮廷人たちはやれやれと、今度はあきれた調子のため息をつく。


 いったいどこへ行ってしまったのかと、不思議に思われていた王太子は、別室で行われていた国王夫妻と王女たちの宴に紛れ込んでいたのである。


 理由は容易に想像がつく。


 ファニア姫は五人の王女の中で一番年上であり、出るところがしっかりと出た豊満な肉体と、北の国の姫らしい白い肌と、美しい銀髪をもつ美女だった。つまり、王太子の女の好みを体現するような女性だったのだ。


 王太子は周囲に聞こえる大声で、ファニア王女へ話しかけている。


「どうか、ファニア殿。愚弟の無礼を許してやってほしい。

 弟は市井で育った粗忽者(そこつもの)ゆえ、いつまでたっても宮廷生活に慣れぬのです。ダンスひとつ、まともに踊れません」


 ファニア姫は赤い蠱惑的な唇を笑みにゆるませて答える。


「わたくしはこうして大国ローザニアの次期国王でいらっしゃるヴィクトリオ王太子殿下と御懇意になれただけで、じゅうぶんに素晴らしい体験ができたと思っております。

 これから王太子殿下と踊れるのも嬉しいですわ。貴国訪問の、もっとも良き思い出となることでしょう」


 さすがは一国の王女だと、周囲にいた者たちはファニア姫の態度に感心した。ねっとりとした嫌らしい目つきで胸元をのぞかれても、彼女はすらすらと王太子へ世辞が言えるのだ。


 王室同士のつきあいで外交を担う王族には、かくあってほしいもの。美女の尻を追いまわすような行為に走る王太子には、ファニア王女の爪の垢でも煎じて飲ませたいと、みなが思った。


 最後に典礼官が、国王夫妻の入来を告げる。


 音楽がとまり、ファンファーレが高らかに鳴り響く。


 すべての者たちが首を垂れた。

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