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情報

 エルサが言いよどんだので、フィオーレは助け舟を出すように言った。

「いえ、そんなことを聞かれても困るわよね。この城にいたらソルクス様との接点なんてないに等しいのだし……」

 ましてメイドという立場ならなおさらだ。アーグムたちから間接的に何かを聞いていたりしないだろうかと思ったのだが、それがないならソルクスの情報など表面的なものしか知らないだろう。まだフィオーレの方が彼のことを知っている。……肝心なところを何も知らないことは否定できないが。

 だが、フィオーレの予想に反してエルサは言った。

「パルセノ殿下が何を以てそう仰ったのかは分かりませんが、私はソルクス殿下を信用できる方だと思っていますよ。フィオーレ様が相手なら、なおさら」

「え……? どういうこと……?」

 あまりに意外なことを言われ、パンを食べる手が止まる。期待しないで聞いてみたら意外な方向から答えが返ってきた感じだ。

 エルサも意外そうな表情になった。瞬きをし、ああ、と納得したように頷く。

「フィオーレ様はご存知なかったのですね。だからパルセノ殿下のお言葉が気になったと。でもフィオーレ様、『一番の親友』のことをお疑いにはならないでしょう?」

「………………。…………え!?」

 パンがぽろりと手から落ちた。皿の上だからマナー以外の問題は何もないが、それよりもエルサの言葉が大問題だ。彼女は今、何と言ったか。

「あの……わたくしの『一番の親友』は、名前も知らない女の子で、庭で一緒に遊んだ子で……ソルクス殿下とは何の関係もないのだけれど……」

 まさか、と思いながら言葉にしていく。エルサはその言葉を引き取るようにして言った。

「その女の子がソルクス殿下なのです、フィオーレ様。実際には女の子ではなく、女の子の装いをした王子様であったわけですけれど」

「え、え…………!? ちょ、っと待って……!?」

 フィオーレはこめかみに手を当てた。はいそうですかとは受け入れられない内容なのだが、エルサは至って真面目な調子だ。からかっていそうな様子など微塵もない。

(あの子が……ソルクス殿下!? 女装していたってどういうこと……!?)

「ちょっと待って? あの子は淡い金髪だったけれど、ソルクス殿下はもっと色の濃い、橙がかった金髪で……」

「お母様のプルーウィス王妃殿下がご用意になったかつらを被っていらしたからですね。ドレス類も王妃殿下のお見立てだったとのことで」

「ええええ……!?」

(確かに、王妃殿下のお部屋にはドレスや宝飾品だけでなくいろいろな小物などもあったけれど! かつらもあったけれど……!)

 そして王妃が着せ替え遊びを好むのも知っている。人形ではなくフィオーレでの着せ替えを心から楽しんでいたようだった。

(……そういえば、何か気になることを仰っていたような……? ……そうだわ、本物の女の子は違う、というようなことを仰っていた……!)

 本物ではない着せ替え対象となると人形くらいしかないだろう。そう考えて、王妃は着せ替え人形を持っているのだろうと結論づけてそれきり忘れていた。だが……思い返せば、王妃の部屋に人形などなかった。

(本物ではなく人形、という意味ではなくて……女の子ではなく男の子、という意味だったの……!?)

 フィオーレは口をぱくぱくさせた。エルサの言葉を裏付けるような心当たりが次から次へと出てくる。

「その、エルサ……あなたはそういったことをどこで知ったの……?」

「わたしは当時、メイドの中でも経験が浅くて、でも家柄がしっかりしているからということで、年齢の低い賓客のところに遣わされることが多かったのです。経験の浅さは先輩方がカバーしてくださいますし、それなりの家柄というところが物を言ったので。ですので、ソルクス殿下のお部屋を整えにも参りました。そこで漏れ聞いたのです」

(直接知ったというわけだったのね……!)

 それはもう、疑いようがない。もともとエルサを疑う要素などなかったのだが。

「なんでも、ソルクス殿下はお国で大変な目に遭われたそうなのです。状況が落ち着くまでは身分を伏せて国外に出ていた方がいいということで、プルーウィス王族の姫としてモンティスに滞在しておられたのですね。女装は……まあ、王妃殿下のご趣味もあったかもしれませんが、必要だったようですね」

 説明し、エルサは上機嫌に続けた。

「殿下はわたしと同い年くらいでしたが、人を厭うようなところがおありで、表情にも乏しくて、なんだか心配になるような危うさがおありでした。でも、だんだんと明るくなっていかれて……『大切な友達』に会うことをいつも楽しみにしておられました。……もうお分かりですね?」

 エルサはフィオーレのところにも出入りしていた。フィオーレがお菓子などを持ってうきうきしながら庭に行くところも見ていたはずだ。フィオーレとソルクスの両方の部屋に出入りした彼女の中では、情報が結びつくのは必然だっただろう。

「……それって……わたくしの、こと…………!?」

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