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交友

 侍従が案内したのは、人払いのされた、小さめの応接室のような部屋だった。王族の私室があるような城の奥まった方ではなく、表の方にある、賓客をもてなすための場所だ。

 二人がイリストに招かれたことは広まっているらしく、そこに着くまでに二人は通りがかる人々からの視線を集めていた。目的の部屋が城の表の方、多くの人々が行きかうあたりにあったこともそれに拍車をかけている。イリストと二人の接触が大々的に喧伝されている形だ。もしかしてイリストの狙いはそこにあったのかもしれないとフィオーレはなんとなく思った。

 侍従がうやうやしく扉を開け、二人を中に通す。イリストはリラックスした様子で待っていた。二人がイリストの向かい側の長椅子に座ると、部屋の中にいたメイドが二人の前に飲み物を置いて頭を下げ、部屋を出て行った。

 ぱたんと扉が閉まると、イリストは微笑んで二人に挨拶をした。

「さっきの今ですが、よく来てくださいましたね。お二方と個人的にお話がしたいと思っていたのです」

 彼の視線がこちらに向いたので、フィオーレが応えた。

「殿下、ありがとうございます。お話とは、どのようなことでしょうか」

「色々ですよ。国内や国外の情勢、プルーウィス王国について、あなた方の個人的なことについても」

「そうなのですか? ……その……」

 フィオーレは躊躇ったが口に出した。

「殿下は、わたくしたちと話をしたいのではなく……わたくしたちと個人的に繋ぎを作ったことを周知させたいのではないかと思ったのですが……」

 ここへ来るまでの印象。話をしたいと言いつつも特定の何かを聞きたい様子がないこと。それらを考えあわせた結論を述べると、イリストは目を瞠った。

「……その通りです。聡い方だ。つくづく、貴女がモンティスにおられたときにあまり話ができなかったことが残念でなりません」

「まあ……」

 あっさり肯定されたことにも、話ができなくて残念と言われたことにも驚く。それではまるで、フィオーレがいた時から話がしたかったと言わんばかりだ。

 二人のやりとりを聞いていたソルクスが割って入った。

「私の婚約者を口説かないでいただきたい。それと殿下、猫を被るのもそろそろやめていただきたい」

「……え?」

 ソルクスの気安い口調に驚くフィオーレの前で、イリストはくつくつと笑い出した。

「では、そうしようか。フィオーレ姫の驚いた顔も見られたことだし、そろそろ明かしてもいいだろう。僕とソルクス殿下は前々からの知り合いなんだよ。表向き、今日はじめて顔を合わせて話をしたということになってはいるけれど」

「そうだったのですか……!?」

 フィオーレは驚いて二人の顔を見比べた。微笑するイリスト、少し冷たい視線のソルクス、確かに二人の様子は初対面のそれではない。距離が近い。

 ソルクスが軽く溜息をついた。

「知り合いではあるが、別に仲良しこよしというわけではない。利害が一致しただけの間柄だ」

「だが、仲が悪いわけでもないだろう?」

「いちいち確認するな」

(……仲、よさそう……)

 微笑の裏の真意が読めないイリスト、わずらわしげだが相手を嫌っている様子ではないソルクス。二人にはなんとなく通じ合っているところがある。

 ソルクスはフィオーレに説明した。

「モンティスはプルーウィスよりも小さいとはいえ、無視できない隣国であることは間違いない。そこの次期王位継承者があのようなぼんくらであってもらっては困る。私は隣国を侵略する趣味などないのでな」

「まあ、割に合わないだろうね。プルーウィスの方が豊かだから人がそちらに流れて混乱するだろうし、周辺国の非難も受けるし、両国民の反発も必至だし」

「他人事のように言うな。お前の国だろうが」

「僕の国ではないよ。まだ」

(…………「まだ」?)

 なんだか不穏な言葉が聞こえたような気がする。聞き違いかと思っていたが、イリストはさらに言葉を重ねた。

「そろそろ足場固めの時期は終わりだ。これからは僕も表に出て動いていこうと思う」

(兄を立てて陰に隠れている従順な第二王子像はどこへ行ったの……!?)

 穏やかではない話を聞いてしまい、フィオーレは冷や汗を流した。しかしイリストの思惑や本性は、やり取りから察するにソルクスは知っていたのだろう。

 そちらに視線を向けると、ソルクスは言った。

「あの第一王子をのさばらせておくわけにはいかないから、私はこの第二王子と結ぶことにした。ずいぶん前の話だ」

「僕たちの付き合いも長いよね」

「不本意ながらな。あと、付き合いなどという言葉を使うな。フィオーレが誤解したらどうする」

「わお、そこを心配する?」

 イリストがおどけたようにのけぞる。彼の豹変具合にも、情報過多にも、ちょっといろいろついていけそうにない。

 イリストはフィオーレに意味ありげな眼差しを向け、ソルクスに言った。

「僕はいろいろと君を助けてあげたと思うのだけど、そんなことを言っていいのかな?」

「一方的に助けたわけではないだろう。こちらの助力なしにお前の王位継承は難しいしな。第一王子はぼんくらだが既得権益層がそちらについている」

(……これ、わたくしが聞いていい話なの……?)

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