表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/20

始まりの章  その1

「ここが淡路島か〜」と、優が背伸びをした。


「こちらの世界では、自凝島おのころしまだから!兄貴、間違えないでね!!」と、ご機嫌な声の海が注意した。

「ここから世界が始まったのか」

そんな2人を見ながら、感慨深く空がつぶやいた。



熊童子達を滅した空達は、始まりの巡礼地を目指し、自凝島を訪れていた。

そして…ご機嫌な海の腕には…前鬼と後鬼が抱きすくめられていた。



「センちゃん〜、ゴキたん〜…ダメな召喚主でちゅね〜!!」

赤ちゃん言葉で、海が前鬼と後鬼に話しかける。


呼びかけられた前鬼と後鬼が、腕の中からゴミを見るような目で海を睨んだ。

何故、そんなことになっているのか?


それは、優がこの世界に来た経緯を、空と海に説明した時の事。



ーーーー



「へー、兄貴は黄泉の国を通って、この世界に来たんだ。でも、その小角って人は何者なのかな〜?兄貴にセンちゃんとゴキたんの護符を渡して、仏身一体も教えてくれるなんて」


「センちゃんとゴキたん?」

「そっか!空は会ってないもんね…。ねぇ兄貴、ちょっとセンちゃんとゴキたんを呼び出してよ!!」



「我は前鬼せんき前鬼せんき戦鬼せんきなり!!」

「妾は後鬼ごき後鬼ごき護鬼ごきなり!!」


優の召喚により、前鬼と後鬼が顕現するが、周りの様子を確認する間もなく、その手が伸びる。


「いらっしゃ〜い!センちゃん、ゴキたん!!一緒にケーキを食べましょうね〜」

有無をも言わせずに、海が前鬼と後鬼を抱きしめテーブルに座った。



「なるほど…優のレベルが上がれば、本来の姿の大鬼になれるのか」と空がうなずき、海の腕の中で、モグモグとケーキを頬張る前鬼と後鬼を見る。


「センちゃんとゴキたんはこのままでいいから、兄貴はレベルを上げないで!ほらほらセンちゃん、クリームがついてまちゅよ〜」

前鬼の口元に付いた生クリームを拭いながら、海が優を睨みつける。


「そ、そんな〜」と優が絶望的な声を上げる。



「ところで、小角って何者?」

海に口元を拭かれる前鬼と後鬼に、空が尋ねた。


「小角様は、人の身において仏の称号を冠された、神変大菩薩しんぺんだいぼさつ様なり」と前鬼。


役行者えんのぎょうじゃとも、役優婆塞えんのうばそくとも呼ばれる偉大な行者なり」と後鬼が答えた。



そう言えば…と、優が手に持った剣を空に見せた。

「小角と一緒にいた、イザナミと言う女神から、この剣を預かった!」


「なるほど…、お膳立てはされているんだな。ならば、『始まりの巡所』と言うのに、行ってみようか!!」


ーーーー


そして3人は菊理媛に見送られ、自凝島の地を踏み締めていた。




「しかし、鬼がスイーツ好きとはな〜」


「ふん。いにしえの時代には、甘味は無かったなり!」

前鬼が空を睨む。


「これ、海よ。黙って抱かれてやるゆえ、早う新しいスイーツを買いに行くなり!」

後鬼が海に催促する。


この世界にコンビニは無いが、駄菓子屋があり、スイーツを含めて、お菓子類が充実していた。


自凝島にある駄菓子屋に入ると、厳かに前鬼と後鬼が宣言した。


「我は前鬼!前鬼は苺ショートなり!!」

「妾は後鬼!後鬼はチーズケーキなり!!」


「支払いは兄貴なり!!」



優が半泣きで、菊理媛きくりひめから預かった路銀からスイーツ代を支払った。




そんなやり取りを繰り広げながら、3人と2体の鬼は自凝島から漁船に乗り、沼島ぬしまという小さな島に降り立った。


島の中腹にある、鳥居の前に立つ3人は「ここが始まりの巡所か!」と感慨深く小さなほこらを見た。


「あの祠の裏にある洞窟から地下に入るみたいね」

海が指差した先には、洞窟が口を開けていた。


「とりあえず、入ってみるか…」


空を先頭として海が続き、優が後ろを警戒しながら洞窟内に足を踏み入れる。


しかし…

「む…我は結界に邪魔されて入れぬなり!」

「妾も無理なようなり!!」

と、前鬼と後鬼が護符に戻った。



3人が洞窟を進むと、大きな石の扉があり、その前に石像が一体建っていた。


「まるで生きているみたいだな〜」と優がその石像を見上げる。


「怖い事言わないでよね、兄貴」



その時、『ギョロリ!!』とその石像の目が開き、3人を見据えた。


「吾は天石門別神あまのいわとわけのかみ。吾が試練を乗り越えし者にのみ、封印の石戸が開く」

そう告げると、天石門別神が手を振った。


その瞬間、空の身体は何も無い空中に浮かんでいた。


そして、海の身体は深海の底にあり、優は闇に包まれた世界に飛ばされていた。


そして…それぞれの試練が始まった。



ーーーー



同じ時、元の世界の淡路島に、須佐之男すさのお月読つくよみの姿があった。


「面倒くさいな。同じ場所からでないと神力が送れないのか?」


「文句を言わないの。あちらの世界では、神力が弱まるんだから、空様達に合わせて、私達も移動するのよ」


「やれやれ、頼むから天岩戸あまのいわとの試練くらいで、つまずいてくれるなよ!」と須佐之男が呟きながら連絡船に乗り、沼島の中腹に辿り着く。



しばらくすると、異世界で空達の試練が始まった気配を感じた。


「須佐之男、祓詞はらえことば ((1))を上げて、海様に神力を送りなさい。わたくしめは優様を手助けします」


「空はどうするんだ?」


「空様は日孁ひるめ姉様が見守っていますが…恐らく空様に手助けは必要ないでしょう」


月読も優に神力を送るため、膝を折り手を合わせて、祝詞のりと ((2))を上げた。



けまくもかしこ伊邪那岐大神いざぎのおほかみ…』




やがて2人は立ち上がると、遥かに見える高野山に一礼し、四国に向けて歩み出した。







用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【祓詞はらえことば

神事の初めに唱えられるみそぎの言葉


(2)【祝詞のりと

神道の祭祀において神に唱える言葉


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ