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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


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旅立ちの章  その6

【空VS熊童子】


牛鬼と豚鬼がいなくなり、再び空は熊童子と一対一で向かい合う。


熊童子の棍棒が振り下ろされる。

空がそれをなして、一撃を入れるが…ダメージを与えることができない。


牛鬼たちが現れる前と同じ展開が、再び繰り広げられていた。



その時、優と海の闘いに目を向けた空は、優が闇を纏い、海が光を纏う姿をみた。


そして…二人が牛鬼と豚鬼を倒す姿を…



『あれが、仏身一体の悟りか…』

空が、優と海の動作を思い出す。


『まず、九字印を切るのか』

直公に鍛えられた空は、九字印の意味を理解していた。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


すると、海の時よりも太く明るい光の道が、天に伸びていき、一体の仏身がそこに顕現した。


「ほう、其方は中々高いレベルを持っているようだな」とその仏身が空を見る。


「良かろう…我は、釈迦の十大弟子じゅうだいでし ((1))が一人、羅睺羅らごらなり。空よ、我が御力みちからを纏うが良い」


空は白衣の導きのまま、自然に両手を合わせ、呪文を唱えた。


が身体は既に仏身なり、仏身宿りてわれとなす…『入我我入にゅうががにゅう〜!!』 ((2))


それは、仏身と身体が一体となり、即身成仏そくしんじょうぶつ ((3))に至る悟りの境地だった。


「我に御力を授けたまえ…仏身一体、羅睺羅纏身(てんしん)!!」


「即身成仏の悟りには程遠いが…」と言いながら、羅睺羅が光となり空を纏った。




熊童子の棍棒が振り下ろされると、空がその棍棒を弾き返した。

「おぉ、この力があれば勝てる!」


「舐めるな〜!」と熊童子が一層激しく棍棒を振りまわす。


その棍棒を危なげなくかわしながら、金剛杖に羅睺羅の御力みちからを蓄える。


熊童子の棍棒が空を捉えたと思われた瞬間、空がその身をひるがえすと、思わず、熊童子の体勢が崩れた。


その隙を見逃さず、空が必殺の一撃を繰り出す。



「我が胸内に仏を見よ!仏身一体のスキル 神技 激爆杖斬げきばくじょうざん!!」


その一撃に、熊童子の身体は弾け飛び、二度と立ち上がることはなかった。





熊童子を退けた空に、「大日如来は其方を選んだか…精進するが良い」と羅睺羅が語りかけた。

そして、優が持つ剣をその目に捉えうなずいた。


「なるほど…神界も手を貸したか。ならば、厄災の封印が叶うやもしれんな」と言い残し、光となって天に昇華していった。




ーーーー



その頃、高野山奥の院の更に奥にある、秘の院に直公の姿があった。


御簾みすに向かい頭を下げる直公。

しばらくして、御簾の奥から声がかかった。


「直公よ、頭を上げなさい」


頭を上げた直公に、御簾の奥に座る美しい女性が笑いかけた。

その女性は、一見幼く見えるが、その醸し出す雰囲気には、妖艶さが漂っていた。


その姿は、直公が初めて御目通りを果たした30年以上前から、何一つ変わっていなかった。



「直公、何かありましたか?」


「はい、日孁様ひるめさま ((4))。我が愚息、空が召喚されました」


「愚息などと謙遜を。俊才と名高い空殿の噂は、この秘の院にも聞こえていますよ」


「それと、空の友人である優様と海様も、同じく召喚されたようです」


「そうですか。仏界が動いたのですね…」

日孁様と呼ばれた女性がつぶやく。


「それが…空と海様は仏界から渡ったようですが、優様は冥界に潜った気配が残っていました」


それを聞いた日孁が嬉しそうに「まあ、母君ははぎみのお力添えがありましたか。ならば…」と、その手を打ち鳴らした。


すると、御簾の奥から2人の男女が現れた。


須佐之男すさのお ((5))月読つくよみ ((6))…あちらの世界は空殿達に任せましょう。貴方達は、こちらの世界に残り手助けをするように」


月読と呼ばれた娘が「姉様、こちらの世界から手助けとは?」と尋ねる。


「あちらの世界には、母君の加護を受けた優様がおります。貴女の神力ならば、優様を強化できるでしょう」


「そして、須佐之男は海様に神力を与えなさい。空様は、直公殿が鍛えておりますが、海様はそうではありませんから」


「姉上、俺と月読があちらの世界に渡った方が確実なのでは?」


「いえ」と日孁が小さく首を捻る。


「あちらの世界は、仏の御力の世界。私達の神力は十分に及ばないでしょう」


「それに、空様と海様は大日如来が選びし者。それに、母君の加護を受けた優様もおります。厄災の目覚めに伴って、こちらの世界も揺れ動くでしょうから、貴方達は、こちらに残り支援を頼みます」




すると、黙って聞いていた直公が、「優様が召喚された跡には、イザナミ様の神力に混じり、わずかに阿修羅の御力を感じました。恐らくは、イザナミ様と阿修羅が協力したと思われます」と頭を下げる。


それを聞いた月読が、「ならば、役優婆塞えんのうばそく様も付いてますね。それなら安心です」と目を輝かせた。


「ふん!あんな軽薄な行者の何処がいいのか?」と、須佐之男が言い放つ。


「貴方には無いものね!大人の魅力は…!!」と月読が須佐之男を睨み、二人が「「フン!」」とそっぽを向いた。






そんな二人を温かく見守りながら、日孁がそっとつぶやいた。



「島喰いの復活だけは…何としても阻止しなくては」





日孁が見つめる先には、淡路島が…そして四国が遠く揺らめいていた。








小角は役行者えんのぎょうじゃ役優婆塞えんのうばそく)をモデルとしているので、本来なら五眼六臂ごがんろっぴ法起菩薩ほうきぼさつを纏うべきなのですが、他の仏との絡みもあり、メジャーな三面六臂さんめんろっぴの阿修羅を纏わせています。


用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【十大弟子じゅうだいでし

釈迦しゃかの弟子達の中で主要な10人の弟子

1.舎利弗しゃりほつ

2.目犍連もっけんれん

3.迦葉かしょう

4.須菩提しゅぼだい

5.富楼那弥多羅尼子ふるなみたらにし

6.迦旃延かせんねん

7.阿那律あなりつ

8.優波離うぱり

9.羅睺羅らごら

10.阿難陀あなんだ


(2)【入我我入にゅうががにゅう

仏の三密(身(身体) 口(言葉) 意(心))が自身に入り、自身の三業(身(身体) 口(言葉) 意(心))が仏に入ることで、仏と一体の境地になること。


(3)【即身成仏そくしんじょうぶつ

人間が現世の肉体のままで仏になること。生きたままで仏になること。


(4)【日孁ひるめ

天照大神あまてらすおおみかみの美称

太陽神であり八百万やおよろずの神の最高神


(5)【須佐之男すさのお

海洋神

日孁、月詠の弟


(6)【月読つくよみ

夜の世界の神

日孁の妹 須佐之男の姉









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