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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


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封印の旅『ぬらりひょん』  その1

市場村から、次の巡所がある大歩危峡おおぼけきょうの近くまでは、魔導列車が運行していた。


「久しぶりの魔導列車だな」

座席に座り空が話しかける。

「車窓から見る景色が、元の世界と違って風情があるわね」

窓の外を見ながら海が答えた。

レベルが上がったから、歩きでも問題ないが、やっぱり楽だよな。それより、早く駅弁を食べようぜ!!」

優が、魔導列車に乗り込む前に買った駅弁に手を伸ばした。


「前鬼は唐揚げを望むなり!」

「後鬼は卵焼きが食べたいなり!!」

最早、食いしん坊キャラとなった前鬼と後鬼が、海に駅弁をせがんだ。


「ところで、妖怪屋根こじきの長老から、何か渡されていたが、あれは何だったんだ?」

ふと思い出したように、優が空に尋ねた。

「ああ、次の巡所がある大歩危峡には、妖怪の親玉がいるらしくて、その紹介状をもらったんだ」

「へー、それなら安心ね!」

海が後鬼の口元に卵焼きを運びながら笑う。


「いや、残念だけどあまり効果は期待出来ないらしい。その親玉はぬらりひょんと言うらしいんだけど、妖怪屋根こじきは市場村から動けないから、ぬらりひょんとはあまり関わりはないらしく、『単なる気休めにしかならないが』…と言われて渡されたんだ」


「まあ、無いよりはましだろ!」

楽天的に優が笑う。

「そうそう。当たって砕けろよ!」

海が可愛らしい力こぶを作る。


「いや、砕けたらダメだろう!」

空のツッコミに、車内は明るい笑いが響いた。





「これは絶景だな!」

魔導列車を降りた空達が、渓谷を覗き込んで感嘆の声を上げた。

「風も気持ちいいし、景色も最高ね!」

「だけど、この辺は小歩危こぼけと言って、まだ祖谷渓谷の入り口みたいだな」

空が地図を見ながら周りを見渡す。


「ふーん。この辺りでも十分山奥だけどね」

海の感想の通り、V字に切れ込んだ渓谷を、白波をたてながら清流が流れる。

周りの山々は緑が深く、何処からか『ピヨピヨ チチチ』と聞こえてくる小鳥のさえずりが耳に心地よい。


「ところで…気が付いているなりか?」

前鬼の目が鋭く光る。


「ああ、2体かな?」

優が素知らぬ顔で答える。


「甘いな、優。後ろの大杉にも一体隠れてる。全部で3体だよ」

空が油断なく訂正した。


「悪意は感じないなり!」

前鬼が呟く。

「単なる見張りなり!!」

後鬼が空達に告げた。


「でも…魔導列車を降りてからずっと見られてるから、何か嫌な感じ!!」

海が前鬼と後鬼をギュっと抱きしめた。


「なら、ちょっと話を聞いてみるか?」

「そうだな、このままずっと付き纏われるのもイヤだからな!」

「じゃあ、空はあの大杉のヤツね。兄貴は右手のヤツをお願い。私は後ろのを捕まえるから!」

海が少し怒気をはらんだ声で告げ、「今よ!!」と合図を送る。


その瞬間、3人がいた場所には前鬼と後鬼が残され、空と優、海の姿がかき消えた。


『『『え、消えた?』』』

3体の妖怪が息を呑む。


次の瞬間…

『グエッ』

『ギャッ』

『放せ〜』

と、声が響いた。


そこには、空と海、優に取り押さえられ、ジタバタと暴れる妖怪の姿があった。


「こやつらは小天狗なり!」

「何故、妾達を見張っていたか答えるなり!!」

前鬼と後鬼が、捕まえた小天狗を問い詰めた。


「まあ落ち着いて話をしよう」と、空が前鬼と後鬼をなだめる。

「俺たちは巡所の封印に来ただけで、妖怪を退治するつもりは無いんだ。それで、ぬらりひょんと言う妖怪に会いたいんだが…」と、捕まえた小天狗に屋根こじきの紹介状を見せる。


「フン、屋根こじきなどと言う妖怪など知らぬわ!」

「人間の言うことなど、信用できるか!」

「キサマら人間如きが、ぬらりひょん様に会いたいなど、片腹痛いわ!」

不貞腐れたように小天狗達がそっぽを向く。


「こいつら!!」

優が『スラリ』と、ガイアの剣を引き抜く。


そこに…

「修験者殿!お待ちくだされ!!」と、一際大きな声が響き、一回り大きな天狗が現れた。



ーーーー



「ささ、ぬらりひょん様…もう一杯如何ですか?」

シナを作り、女が酌をする。


「ふん、絡新婦じょろうぐもよ。このワシに今更見え透いたこびを売るとは、厄災はかなり焦っているみたいだな」

「まあ、何をおっしゃってありんすか。たかが修験者如き、厄災様が気にかけるとでも?」

ぬらりひょんが差し出したお猪口に酒を注ぎながら、絡新婦が膝を崩すと、着物の裾がはだける。


「おいおい、ワシに色仕掛けは通用せんぞ」

「あら、いけずでありんすねー」

絡新婦がぬらりひょんの太腿に手を乗せた。


絡新婦のはだけた裾に手を入れながら「それで、ワシに何をして欲しいのだ?」と、ぬらりひょんがニヤニヤ笑う。


「あの修験者達にはここで消えてもらいたいでありんすね〜」

厭らしく笑いながら、絡新婦がぬらりひょんのてのひらをつねった。

「お楽しみは、修験者を消した後でありんすよ!」



ーーーー



「ここからが大歩危峡となります。足元にお気を付けくだされ」

先程現れた中天狗に案内され、空達は大歩危の地に足を踏み入れていた。


「それで、ぬらりひょんには会わせてくれるのかい?」

空が中天狗に尋ねる。

「話はしてみますが…難しいでしょうね」

申し訳なさそうに中天狗が答える。


「何でだよ?俺たちは別にこの地の妖怪と敵対するつもりはないぜ!」

優が中天狗の答えに納得できずに問い詰める。


「厄災様の死天王をご存知でしょうか?」

優の問いに答えるように、中天狗が空達を見た。


『もちろん』と答える空達に、「少し前から、死天王がぬらりひょんの元を訪ねております。恐らくは貴公達についての願いでしょう」と、言いにくそうに呟いた。


「しかも、訪れたのは絡新婦にございます。我ら妖怪の棟梁の元に、あのような下賎な妖怪を寄越すとは、厄災は我らをバカにしておる。なのに、ぬらりひょん様は絡新婦に良いように使われ…」と、口惜しそうに拳を握りしめた。



「はー、やっぱり男って…人間も妖怪も一緒なのかしらね〜!!」

海の冷たい眼差しが優を見つめる。


「いや、ほら…あの〜その〜」

優がしどろもどろに意味のない言葉を発した。



空が笑いながら

「まあ、なるようになるさ」と優を庇う。


そんな空と優を『ジトー』とした目で海が睨む。


「空よ、間違っても海を怒らせてはならぬなり!」

「海の怒りは、羅刹らせつより怖いなり!!」


前鬼と後鬼の助言に素直に頷く空と優だった。





時は少しだけさかのぼり、空達が大歩危峡にたどり着く前のこと。


元の世界では、般若心経はんにゃしんぎょうとなえながら、鞍馬山の山道を分け入る直公の姿があった。



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