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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


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封印の旅『神山編』  その7

大鬼が全て消え去り静寂の世界が広がる中、辛うじて生き延びた一際大きな大鬼が、唸り声をあげて空と優に飛びかかってきた。


「仏身一体の行スキル 神技 破邪斬断はじゃざんだん!!」

空の身体が金色に煌めき、一閃の斬撃が奔る。


そして優も金色の煌めきを剣に乗せた。

「仏()一体の行スキル 神技 鬼速抜刀!!」


二人が振り返ると、大鬼の身体が十字に断ち切られ…その奥に封印の間に繋がる扉が現れた。




空達が纏身を解いて、封印の間に入った。

「あれ?いつもと封印の模様が違わないか?」

優が、台の上の模様を見てつぶやく。


「うん。三角形が二つ重なってるね!」

海も台を覗き込む。


「これは、六芒星だな!」

空もその模様を認めて告げ…

「なるほど、それで媛巫女が呼ばれたんだな」

と納得して頷いた。



そこに、いつものように日孁ひるめの幻影が現れた。


日孁がいつもと違った様子で優を見つめ…

「優様が最初になるとは…。しかし、あの時の子供がたくましくなられました。流石は母神様と小角殿が目を掛けただけのことがありますね」

と、誰にも聞こえない声でつぶやいた。


そして、海に向かい頭を下げた。

「海様のお陰で、須佐之男の想いと大宜都比売おおげつひめ様の願いを知ることが出来ました。何より、良くぞ鬼の籠を抜けられました」


そんな日孁に空が問いかける。

「今回の封印は六芒星のようですが、何か特別な意味があるのでしょうか?」


「はい。この神山の地は神界の影響が強いため、仏界と神界の双方の力を合わせて封印を施していました。この為、神界の三角と仏界の三角を統合する意味を持つ六芒星が使われております」と答えた。


「これまでの巡所でも、新たな封印には神力を纏わせていますが、この地の封印は元々神力と仏の御力が融合していたのです」

日孁が空達に説明を終えると、封印の修復に取り掛かった。

「それでは、媛巫女と優様、そして妾が神界の三角をかたどりますので、空様と海様、前鬼後鬼で仏界の三角をかたどってください」


全員が配置に付くと、

「さあ、九字印を切ってください」

日孁の声が響いた。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

全員の声が重なると、薄まっていた六芒星が輝き出した。


日孁と媛巫女が声を合わせて祓詞はらえことばを上げる。

『掛かけまくも畏かしこき伊邪那岐大神いざなみのおおかみ…』


やがて、輝きが消えると、新しく鮮やかな六芒星が台座に描かれた。



その六芒星を満足気に日孁が見ながら、媛巫女に声を掛けた。

「媛巫女よ、須佐之男すさのおのこと申し訳ありませんでしたね。しかし、海様のお陰でわだかまりも解けたでしょう」


「はい、最早須佐之男様に思うところは御座いません」


そう言い切った媛巫女に

「ならば、本日より日女巫女ひみこの名乗りを許します。この地では、貴女が2人目の日女巫女となります。精進しなされ」と笑いかけた。


そして、何かを言いたげな空に向かい、

「空様がお聞きしたいことは、自らの手で答えを導き出すしかありません。しかし、文殊菩薩に加えて虚空蔵菩薩までが導いている空様であれば、早晩答えを見つけ出すでしょうね」と告げると、その姿は光に返った。




その帰り道


何かを考え込む空に優が話しかけた。

「おい空、あの時日孁様が言ってた、お前が聞きたい事って何なんだ?」


空が優をじっと見つめ

「優が神狐の神力を纏った時、何か違和感は無かったのか?」と尋ねる。

「いつも通りだったけど、どうかしたか?」

「いや、それならいいんだ。よし、隠れ郷に帰ったら温泉に入って、鋭気を養おう。今日は前鬼は俺たちと入ろうぜ!」


それを聞いた海がガッカリした顔を見せ、それとは対照的に前鬼の顔が綻んだ。




空はそんな海と前鬼を温かく見ながら、「神力と御力…どういう事なんだろう」とそっとつぶやいた。



ーーーー



高野山秘の院


「空様達は無事に神山の巡所を封印いたしましたよ」

日孁が御簾みすの前にひざまずく直公を安心させるように声を掛けた。


「おぉ、無事に鬼の籠の試練を超えましたか」

直公が安堵の息を吐く。


「この度は海様に感謝しています。それと、優様が神狐の神力を纏いました」

「何と…優様が目覚めましたか?」

「いえ、大宜都比売おおげつひめ様の使いが現れ、吉祥天の導きでのこと故、優様も御自身がなさったことの意味はまだわからないでしょう。しかし、空様は気が付き掛けていましたね。流石は智慧を司る文殊菩薩と虚空蔵菩薩が気にかけているお方です」

直公を温かく見ながら、空を褒め称えた。


「しかし、神界がこれ程までに関わってくるとは…」

直公が日孁に問いかける。

「それだけ、島喰いが復活する危険を感じているのでしょうね」

日孁が暗い顔を見せた。


「ならば…剣の山にて、宝剣を手に入れることが出来るかが重要となりますな」

「そうですね。厄災もそれはわかっているはずなので、剣の山には死天王が出てくるでしょう。厳しい戦いになるとは思いますが、三種の神器の力を持って、四国の大地を安定させる為、空様達には御尽力いただきましょう」

と日孁が遠くに霞む四国山脈に目を向けた。



ーーーー



四国山脈の某所



「厄災様、修験者達が鬼の籠を超えまして御座います」

玉藻が奥深い洞窟に向けて頭を下げた。


「おや、媛巫女と須佐之男が協力したとはねぇ。大宜都比売のことがあるから、神山の巡所の封印は出来ないと踏んでいたんだがねぇ」

洞窟の奥から、妖艶な、しかし全てをてつかせるような声が聞こえてきた。

「まあ良い。玉藻よ、其方は美しの郷に先廻りしなさい」


そして、その声が一際高く響く。

飫炉血おろちはいるかえ?」


闇の中から返事が来る。

「厄災様、我はここに!」


「其方は剣の山に向かい、修験者共を迎え討ちなさい」


「お任せください。長年の怨み…ここで果たして見せましょう」

飫炉血がその二股に割れた長い舌を出して、ニタリと口元を歪めた。



ーーーー



神山の温泉で、優は空に抱き抱えられた前鬼を睨みつけた。

「おい前鬼。海と一緒に温泉に入って…まさか変なこと考えてないだろうな!!」

優が前鬼を問いただす。


そんな優をゴミを見るように見ながら

「ならば、優が海を止めれば良いなり!」と突き放す。



『そもそも後鬼の御力で、海の姿は顔しか見えぬなり!!』

その呟きは、優には届いていなかった。




平和を取り戻した神山村と隠れ郷を、夜空に煌めく一番星が温かく見守っていた。



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