表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/20

封印の旅『徳島編』  その4

大人の腰回りより遥かに太い3本の立木が、狐尾娘こびじょうの姿を覆い隠す。


『動きを止めるには、どうすればいいか…』

空は立木の奥に潜む狐尾娘を前に、動きを決めかねていた。


『海が立木を斬り倒した瞬間に、動きを止めなければ逃げられる。どうやって狐尾娘に近づくか…』


その時、声が応えた。

『我は目連もくれん。我が神通((1))を使うが良い』


空の九字印に応えたのは、目犍連もくけんれん ((2))だった。




『この太い木を一撃で3本同時に…私に出来るかしら?』

ともすれば負けそうになる弱気を抑え込んだ時、その声が頭に響く。


『我が名は娑伽羅しゃがら。娘の頼みもある。我が御力を貸してやろう』


海の九字印に応えたのは、娑伽羅竜((3))だった。

「其方のレベルでは我が御力を振るえるのは、刹那せつな ((4))の時のみ。心して我が御力を纏えよ」




優はこれまでの闘いを思い出しながら、立木に潜む狐尾娘をにらむ。


『あの太い首を一撃で斬り落とすのか。しかも、太いだけでなく、しなやかさもありそうだ…』


『一撃の威力なら、あのサラタンを切り裂いたスキルか…頼む、来てくれ夜叉やしゃ


『ほう、我を選ぶか。良かろう、存分に我が御力を叩きつけるが良い』


優の想いに夜叉が応えた。





「みんな準備は良いか!行くぞ!!」

空の声が高らかに響き、海と優もそれに続く。


「「「我ら三位一体さんみいったい!!!」」」


空と海の姿が光に包まれ、優の身体が闇に覆われた。




海が狐尾娘を隠す3本の立木に薙刀を向ける。

自分の内に声が流れる。

『試練の巡所を思い出すが良い』


静かに目を閉じ、前にある立木の気配を探る。

『心の目を開きなさい。見るのではなく観るのです』

何処からか阿那律あなりつの声が聞こえた気がした。


その時、3本の立木に伸びる斬撃の軌道が浮かんだ。

『観えた!!』


「仏身一体 娑伽羅しゃがら纏身!」

「仏身一体のスキル 神技 竜斬一閃りゅうざんいっせん


その一撃は、一条ひとすじの光となり立木を斬り落とした。


『ふうっ』とひと息ついた海がつぶやく。

「次は空兄の番だよ!!」


海の一撃により、狐尾娘の姿があらわになる。

慌てて別の立木に隠れようとする狐尾娘の目の前に、いきなり空が現れる。



『神通力は修練により得られる人外の御力。其方のレベルでは、あの狐の懐に入るが精一杯であるぞ』

目犍連の声が空の内に響く。


その直後、邪魔になっていた立木が、一条の光と共に斜めにズリ落ち視界が開けた。


『良くやった、海!』


「仏身一体 目犍連もくけんれん纏身」

「仏身一体のスキル 神技 神足通じんそくつう



一瞬で空が狐尾娘の懐に入る。

「げぇ…いつの間に!」


「逃がさん!!」

慌てて離れようとする狐尾娘の太腿に、空の槍が突き刺さる。


「ぎゃー!!」

うずくまる孤尾娘。


その首筋に向け、刹那せつなきらめきがほとばしる。


「仕上げは任せたぞ、優!!」




『ほう、あの蟹を倒して少しはレベルが上がったようだな。よいか、キサマが必殺の一撃を繰り出す間合いは、敵にとっても同じく必死の間合いとなる。身捨拾命しんしゃしゅうみょう ((5))こそ、キサマが進む阿修羅道と心得よ』


優の想いに応え顕現した、夜叉の声が心に沁み込む。


「仏身一体 夜叉纏身!!」

夜叉の御力を纏い、その御力をガイアの剣に宿す。


「ぎゃー!!」

狐尾娘の悲鳴が響き渡った瞬間、優の身体は宙を舞っていた。


「空、海、後は任せろ!!」

「仏身一体のスキル 神技 鬼速抜刀!!」


優がガイアの剣を鞘に収めた時、静かに狐尾娘の首が地面に落ちた。



ーーーー



狐尾娘の身体が地面に吸い込まれると、封印の間につながる扉が現れた。


「さあ、入るが良い!」

何故かその場に残った娑伽羅竜王が3人を即す。

竜王と言いながらも、残念なことにその大きさは子犬程しかない。


海が目を光らせ「シャガちゃん…」と手をワキワキさせる。

だが、流石に竜王にはマズいだろうと、空が海の動きを止めた。



中に入り、その模様を確認した空がつぶやく。

「前と同じで薄れた五芒星ごぼうせいがあるな」


「空様、海様、優様。第二の封印をおこないましょう」

そこに、蜃気楼のように揺らめく日孁ひるめが現れた。


「日孁よ、気になることがある故、此度の封印は我も立ち会おう…」

娑伽羅竜王が日孁に声を掛けた。


「助かります。では前鬼と後鬼をお願い致します」


五芒星の頂点に日孁、空、海、優、竜王と前鬼後鬼が立つ。

「さあ、九字印を」

日孁の声が響いた。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

すると、五芒星が輝き出す。


その五芒星に日孁が祓詞はらえことばを上げる。


やがて、輝きが消えると鮮やかな五芒星が台座に描かれ、御朱印が現れていた。





全てが終わると娑伽羅竜王が日孁に声を掛けた。

「この早い段階で狐が出るとは、ちと異常ではないか?」


「はい。それだけ厄災が焦っているかと存じますが、二尾とは言え、良くぞ狐を退けて頂きました」

日孁が空達を温かく見据えた。


「『二尾とは言え』…とは、三尾、四尾といるのでしょうか?」


「はい。厄災の元には死天王と共に七眷属がおり、尾の数に応じて強力となります。ただ、七眷属は厄災の親衛故、外に出る事はないと思っておりました」


「3人がかりとは言え、良くぞ狐の一柱を撃ち倒したものよ」

娑伽羅竜王も感心して空達を見た。


「竜王様のお力添えのおかげ…」と言う日孁に、

「なに、娘がそこの海を気に入ってな。須佐之男も付いているようじゃからのう」と笑い、「では、更に精進せよ」の言葉を残して光となった。



「皆様、狐尾娘を倒したことでレベルが上がりましたね。空様と海様は、天部の召喚も叶うでしょう」


日孁が言葉を残し、霞のように消えていった。





洞窟を出ると、藍香姫が駆け寄ってきた。

「皆様ご無事で何よりです」


「この巡所の封印は修復しました。これで、城下町に邪鬼が現れることは無くなるでしょう」





眉山から城下町を眺める空達を、夕陽が優しく照らしていた。







用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【神通力じんつうりき

修行によって得られる、人間を超えた能力。

神足通じんそくつう: 瞬時に移動する能力

天耳通てんにつう: 全てを聴き取る能力

他心通たしんつう: 他人の心を知る能力

宿命通しゅくみょうつう: 過去や前世を知る能力

天眼通てんげんつう: 未来を見通す能力

漏尽通ろじんつう: 悟りを知る能力



(2)【十大弟子じゅうだいでし

釈迦しゃかの弟子達の中で主要な10人の弟子

1.舎利弗しゃりほつ

2.目犍連もっけんれん

3.迦葉かしょう

4.須菩提しゅぼだい

5.富楼那弥多羅尼子ふるなみたらにし

6.迦旃延かせんねん

7.阿那律あなりつ

8.優波離うぱり

9.羅睺羅らごら

10.阿難陀あなんだ



(3)【娑伽羅竜王しゃがらりゅうおう

天龍八部衆に所属する竜族。

龍宮の王であり大海龍王。

三女に竜女りゅうにょがいる。



(4)【刹那せつな

極めて短い時間や瞬間を意味する言葉であり、仏教においては時間の最小単位を指す。


(5)【身捨拾命しんしゃしゅうみょう

造語です。

身を捨ててこそ拾う命がある…の漢字を並べただけです



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ