封印の旅『徳島編』 その3
「やはり納経軸を持たない人は入れないのか!」
藍香姫と護衛の剣士達も洞窟に入ろうとするが、結界に阻まれ中に入ることができない。
「空様、優様、海様…あなた方に全てをお任せするのは心苦しいのですが、何卒よろしくお願いいたします」
藍香姫が空達の無事を祈り、洞窟内に送り出した。
洞窟内は、一番の巡所と同じように、明るく広さも十分にあり、3人は奥に進んでいく。
「あの徳島ラーメンは美味かったな」
洞窟内を進みながら優がつぶやく。
「だからって、生卵を2個は食べ過ぎよ!!」
海が呆れたように応える。
「確かに美味かったけど、俺にはちょっと味が濃すぎたかな。どちらかと言うと、この前の鯛塩ラーメンの方が好みだな〜」
空も昨夜の徳島ラーメンの味を思い出していた。
「前鬼は卵かけご飯が美味かったなり!」
「後鬼はその上に、ラーメンの豚肉を乗せたのが気に入ったなり!!」
「生卵も食べ放題で良かったでちゅねー」
護符から顕現した前鬼と後鬼を腕に抱えて、海が満足そうに笑った。
緊張感のない一行だが、洞窟の奥に進むと空が声を掛けた。
「前と同じなら、この先がホールになっているのかな?」
「なら、邪鬼の群れが出てくるな!」
「油断大敵ね!!」
先頭を歩く空が、前方の変化に足を止めた。
「あれ?洞窟内のはずだが、林みたいになってるぞ!」
「ダンジョンあるあるだな!!」
「気をつけて。ここは妖狐の巣みたいよ!!」
海が視線を向けた先では、妖狐が立木の陰から3人を睨んでいた。
「これは厄介だな!」
木の陰から襲ってくる妖狐に手を焼く3人。
「飛斬も木が邪魔で届かない!!」
「破魔の弓も駄目よ。薙刀も木に邪魔されて振れないわ!!」
そんな中、前鬼だけが確実に妖狐を仕留めていた。
「我は前鬼。前鬼は戦鬼なり!」
妖狐よりも小さな身体に、短い鉄斧のため、木が邪魔にならない。
しかし、しばらくすると「優の徳ではこれまでなり!!」と護符に返った。
「作戦を変えよう。海は薙刀で俺のガードを頼む。後鬼は、優を守ってくれ」と叫ぶ。
そして、金剛杖を槍に変えると、海が動きを止めた妖狐を突きで仕留めにかかる。
優も、剣を振るのを諦め、後鬼が攻撃を受け止めた妖狐に突きを振るう。
ほとんどの妖狐を仕留めた時、「妾もこれまでなり!」と後鬼も護符に返った。
残りの妖狐を3人で協力して片付けると、林の奥に扉が現れた。
「よし、ボス部屋が現れたぞ!!」
ーーーー
扉を開けると、やはり木々が立ち塞がる林の中だった。
そのボス部屋の様子に、空が顔を歪める。
「拙いな。ここも木が邪魔になりそうだ」
空がそうつぶやいた時
「其方らが、厄災様の封印を目論む修験者かえ?」と、鬱蒼とした木々の陰から、艶かしい声が聞こえた。
その声のする方に目を向けると、牛よりも大きな妖狐が木の後ろから空達を睨んでいた。
「妾は狐尾娘。厄災様の親衛隊の末席に連なる者に御座います」
その尻尾は二つに分かれ、狡猾そうな佇まいで、木の陰から油断なく声を上げた。
「さあ、妾が野狐達よ。あの者達を噛み殺しておしまい」
狐尾娘と名乗った妖狐が、周りの木の陰に隠れていた野狐に命令を下した。
その命を受け、野狐と呼ばれる妖狐より一回りは大きな狐が空達に襲いかかる。
しかも、大きいだけでなく、連携して攻撃してくるため、先ほどのように動きを止めても、別の野狐が助けに入り、トドメを刺すことが出来ない。
「パターンを変えよう」
空が野狐の動きを止める。
優が助けに入る野狐を追い払う。
海が動きを止めた野狐に破魔の弓を射掛け仕留める。
3人が連携して、一体づつ野狐を退治していく。
「よし、もう少しだ」
優がほっとした瞬間、一陣の白い風が優の身体を吹き飛ばした。
それまで様子を見ていた狐尾娘が、優の首筋に牙を向ける。
「兄貴危ない!!」
慌てて海が狐尾娘に矢を射掛けると、狐尾娘が優の身体から飛び退き、再び立木の陰に隠れた。
すかさず空が優の前に立つ。
「優、大丈夫か?」
「あぁ、吹き飛んだだけで怪我はない!」
ガイアの剣を構え直して、優が立ちあがる。
「ふん、その程度の力で厄災様の邪魔をするとは、身の程知らずですね」
立木の陰から狐尾娘がニヤリと牙を剥いた。
「二尾の妾にも勝てぬ者が、厄災様の封印などと大層な妄言を吐きますね」
嫌らしく笑う狐尾娘を冷静に観察する。
「優なら、アイツの首を一撃で斬り落とせるか?」
「ああ、だがあの太い首を斬り落とすには、かなりの溜めが必要だぞ」
「前にある木が邪魔よね」
3人が油断なく狐尾娘を見ながら話し合う。
「海、狐尾娘の前にある3本の立木だけど、一撃で斬り落とすことができる?」
薙刀を握る手に力が籠る。
「始まりの試練では一本だったけど…斬ってみせる!!」
「よし…海が前の木を斬り、俺が狐尾娘の脚を止める。優はその隙を付いて首を斬り落としてくれ」
「「「行くぞ!!! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」」」
作戦が決まり…3人の声が響き渡った。




