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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


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封印の旅『徳島編』  その2

並べられた朝食を前に、元気が無い前鬼と後鬼。

「センちゃん、ゴキたん…大丈夫?」

海が心配そうに声を掛けた。

「ねえ…昨夜何かあったの?」



朝食を食べ終えた3人は、藍香姫の案内で城下町を散策することにした。

前鬼と後鬼を腕に抱きしめ、海が上機嫌で徳島城の城下町を歩く。


閻魔大王の御力みちからにより、戦闘時以外は元の身体に戻れないことを知った前鬼と後鬼は、血の涙を流していた。

「最早、我らに希望は無いなり!」

「くっ、たとえこの身体…好きにもてあそばれようと、妾の心は許さないなり!!」


そんな前鬼と後鬼の声が聞こえていないのか、「良かったね、センちゃんゴキたん。これからも、ずっと可愛い姿でいられるんだね〜!」と、頬を擦り付けた。



その時、人々が逃げ惑い「邪鬼が出たぞ〜!!」と声が聞こえてきた。


藍香姫と護衛の剣士達と共に、声がした方に慌てて駆けつけると、小鬼と妖狐の集団が領民に襲いかかっていた。


「優、海、皆んなを助けるぞ!」

「だけど、領民が邪魔で飛斬が出せない!」

「破魔の弓も狙いがつかないわ!」


邪鬼と領民が入り混じり、妖狐に追われた領民が逃げ惑うため、剣を振る余裕がなく、飛び道具も使えない。


小鬼に叩き伏せられ、血を流しながら地面を這う領民に、妖狐が容赦なく牙を立てる。

『拙い…このままでは、死者が出る…』


その時、凛と響き渡る声が響き渡った。

「妾は後鬼ごきなり。後鬼ごき護鬼ごきなり」

海の手を離れた後鬼が邪鬼の前に立つ。


その姿は、先程までの身体より少しだけ大きくなっていた。

後鬼が杖を掲げると、襲われていた領民達の前に結界が現れ、領民と邪鬼を引き離す。


海が、破魔の弓を引き絞りながら「ゴキたん、ありがとう!」と邪鬼を射抜く。


空と優は剣を手に、小鬼と妖狐を斬り伏せていく。

前鬼も、少しだけ大きくなった身体で、邪鬼を叩きのめす。


何とか邪鬼を倒し終えたが、その惨状は目を覆いたくなるものだった。


我が子を庇い血塗れの母親に「お母ちゃーん。死んじゃやだー!」とすが幼子おさなご

頭を殴られて痙攣する子供を前に「医者、医者はまだか〜」とオロオロと泣き崩れる男女。


海がその姿を見て涙を流しながら「私達も何か手伝いを…」と空の腕に縋りついた。


『そこな弓使いよ…われを呼べ!』

頭に響く声に、海が周りを見渡す。

「大丈夫か、海?」

心配して空が声をかけた。


「大丈夫よ!」と海が空の腕を離し、天を見上げると両手を前に出し、ぎこちなく九字印を切った。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


すると、光の道が天に伸び、「其の方(そのほう)の想い受け取った」と両手に弓を持つ仏身が顕現した。


「吾は十二神((1))が一将『波夷羅はいら』。本来なら吾を纏うにはレベルは足りぬが、薬師如((2))の願いを受けておる。さあ海よ…吾が御力を纏うが良い」


「我が身体は既に仏身なり、仏身宿りて我となす。『入我我入にゅうががにゅう ((3))


「お願い、あの人達を癒やす力を私に授けて…仏身一体 波夷羅纏身はいらてんしん!!」


『ムウ?やはりレベルが足りんか…!』


波夷羅を纏う海がスキルを発動しようとするが、レベルが足りないためスキルが発動しない。


海が泣きそうな顔で空を見た。

空が思わず海の身体を後ろから抱きすくめた。

それは、はからずも海が空を纏う形となる。


「我ら比翼の鳥となり、連理の幹をなそう」

空が天に叫ぶ。


すると、2人の脳内に波夷羅の声が聞こえた。

『おぉ、この者のレベルを足せばスキルが発動できる…』



2人の声が重なる。

「「仏身一体のスキル 神技 癒光慈界ゆこうじかい」」


海の身体から後光が発し、辺りを照らした。

その後光に照らされた怪我人の顔が、たちまち穏やかに変わっていく。


『其の方らのレベルでは、2人分を足しても完治には足りぬが、命に関わるような怪我は癒せたであろう』の言葉を残し、波夷羅は天に帰って行った。


「空…私もっとレベルを上げて、皆んなを助けられる人になる」

周りの人々の笑顔を見ながら、海が珍しく真面目な決意を口にした。


そんな海を眩しそうに空が見つめるが…

「そ〜ら〜!何でいもうとに抱きついたのかな?死にたいのかな?体育館の裏に行きたいのかな?」と優がウザ絡みしてきた。



そこに藍香姫(すくい)が駆け寄る。

「邪鬼を倒すだけでなく、怪我の治療まで…。領民をお助け頂きありがとうございます」

藍香姫が空達に礼を述べた。


「しかし、まさか妖狐が出るとは…」

と考え込む藍香姫に

「妖狐が何か?」

と空が尋ねた。


「この四国では、遥か昔にお大師様が狐を全て追い払いました。なので、四国には狐はいないはずなのです」


「なるほど、やはり厄災の封印が切れかかっている影響が出ているのか」

目の前の眉山びざんに目を向けながら空がつぶやいた。



それから2日間は邪鬼の襲撃もなく、空達は徳島ラーメンを食べたり、阿波踊りを満喫した。



そして3日目の朝、藍香姫の道案内で3人は第二の巡所の入り口に来ていた。

「祠の後にある洞窟に岩戸。ここが巡所で間違いないな」と納経軸を取り出した。




「よし行こう!!」




3人が納経軸を掲げると、岩戸が『ゴゴゴ』と動き出した。





用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【十二神将じゅうにしんしょう

十二神将、又は薬師十二神将とは、薬師如来の世界とそれを信仰する人々を守る天部

1.宮毘羅くびら大将

2.伐折羅ばさら大将

3.迷企羅めきら大将

4.安底羅あんちら大将

5.頞儞羅あにら大将

6.珊底羅さんちら大将

7.因達羅いんだら大将

8.波夷羅はいら大将

9.摩虎羅まこら大将

10.真達羅しんだら大将

11.招杜羅しょうとら大将

12.毘羯羅びから大将


(2)【薬師如来やくしにょらい

病気や怪我から人々を救い、心身の健康を守る仏様


(3)【入我我入にゅうががにゅう

仏の三密(身(身体) 口(言葉) 意(心))が自身に入り、自身の三業(身(身体) 口(言葉) 意(心))が仏に入ることで、仏と一体の境地になること。


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