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空と海を継ぐ者 神も仏も居るんです  作者: 平木 ナヲル


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封印の旅『徳島編』  その1

『ところで、今日は何処に泊まるんだ?』

と、菊理媛から預かった地図を確認する空に尋ねる。


「そうだな〜。次の巡所は城下町のすぐ近くの、眉山びざんって言う山にあるみたいだから、徳島城の城下町に行って探そうか」と優に答え、「海もそれで良いか?」と声をかけた。


「何処でも良いけど、お風呂に入りたいよ〜」と、戦闘で汗と砂まみれの身体を払う。

「センちゃんもゴキたんも、一緒に入りまちょうね〜」と、前鬼と後鬼を抱きすくめた。


それを聞いた前鬼が、泣きそうな顔で優を見るが…優はそっと目を逸らした。

そして…そんな前鬼をゴミを見るような目で、後鬼が睨みつけていた。



魔道列車に乗るため、前鬼と後鬼を護符に戻し、3人は鳴門なるとから魔道列車に乗り込んだ。


「魔道列車の乗り心地は、元の世界と変わらないね」と話しながら徳島駅に到着した3人は、宿を探しながら城下町をぶらついていた。


川縁かわべりを歩いていると、「キャー」と悲鳴が聞こえた。

「行ってみよう!」と空が駆け出すと、優と海も慌てて走り出す。


「姫を守れ!」

「小鬼を近づけるな!!」

そこには、打ち捨てられた駕籠かごの横に立ち竦む女性と、その女性を護る5人の剣士の姿があった。


そして、数十体の小鬼が一斉に剣士達に飛び掛かると、剣士達が小鬼の数に押され傷付いていく。



空が、優と海に「助けるぞ!」と告げ走り出した。


空が姫と呼ばれた女性の前で、襲ってくる小鬼を金剛杖で叩き伏せる。


「飛斬!」

「飛斬!」

「飛斬!」

優は飛ぶ斬撃を小鬼に乱れ撃つ。


海も破魔の弓を構え、小鬼を撃ち抜いていく。



3人の活躍で、小鬼は散り散りに逃げ出した。



傷ついた剣士を気遣いながら、姫と呼ばれていた女性が空達に礼を言った。

「修験者様、危ないところをお助けいただき、ありがとうございます。私はこの徳島藩の領主の娘で、蜂須賀はちすか 藍香あいかと申します」


空が頭をかきながら、「いや、たまたま通りかかっただけだから」と笑いかけた。

「しかし、こんな城下町に小鬼が現れるのですか?」と空が藍香姫に尋ねる。


「いえ…」と藍香姫が首を振る。

「この辺りは寺町と呼ばれ、神社仏閣が立ち並んでおり、普段であれば邪鬼は出てきません。しかし、最近になって、何故か小鬼だけでなく、様々な邪鬼の出没が増えております」


それを聞いた空がつぶやく。

「やはり、厄災の封印が切れかかっている影響か!早めに手を打つ必要がありそうだな!!」


空と合流した優もうなずく。

「巡所がある眉山が目の前だからな!このままだと、領民にも被害が出そうだな!!」


破魔の弓をイヤリングに戻した海が「でも、封印するには3日は待たないと駄目なんでしょ」と空を見た。


「ああ、だから明日からは城下町の見廻りをしようか」と海に笑いかけた。



その会話を聞いていた藍香姫が

「あの、あなた方は一体…?」と、その大きな瞳を輝かせた。



ーーーー


〜徳島城の城内〜


「改めて、私どもをお助け頂き、誠にありがとうございました」

藍香姫とその家臣達が頭を下げ、空達は、恐縮しながらその礼を受けた。


「ところで、先ほどおっしゃいましたお話でございますが…何やら、城下町に邪鬼が出没する原因に心当たりがあるのでしょうか?」


そこで空が菊理媛に異世界から召喚された経緯と、厄災の封印について話をした。


「何と、眉山にそのような場所が…」と藍香姫が何やら考え込む。

「そう言えば、山道を少し外れた所に領民が近寄らない祠があると聞きます。おそらく、そこが言われている巡所かと思います」


「では、3日後にその場所に案内して頂けますか?」と尋ねる空に「喜んで」と藍香姫が微笑んだ。




お城に泊まるように勧められた3人は、目の前のご馳走を満喫していた。

もちろん、前鬼と後鬼も召喚して海と一緒に舌鼓を打っていた。


「前鬼は竹ちくわが気に入ったなり!」

「後鬼はフィッシュカツに軍配を上げるなり!」

「海は全てに合うスダチが気に入ったなり!」


「気に入って頂ければ何よりです」と喜ぶ藍香姫が、「海様、私にも前鬼様と後鬼様を抱かせて頂けませんか?」と頼み込む。


「もちろん」と前鬼を藍香に渡し、「じゃあ、みんなで一緒にお風呂に入ろうよ!」と笑った。

その言葉に藍香の顔がほころぶ。


それとは対照的に、再び前鬼が泣きそうな顔になり、後鬼の目がゴミを見る目に変わった。


そんな前鬼を見かねた空が、流石に可哀想になって声をかけた。

「男は男同士…前鬼は俺たちと入ろうぜ!」

すると、優も慌てて

「そうそう、男は裸の付き合いが大切だからな!!」と話を合わせた。


「そうなり!前鬼は空と優と一緒に入るなり!!」と前鬼が海に訴える。

「「え〜〜」」と不満いっぱいの海と藍香姫を何とか説得し、空と優はお城の大浴場に前鬼を連れ出した。


空に抱かれて湯船に浸かると、「空よ!助かったなり。礼を言うなり!!」と前鬼が頭を下げた。

そして優を睨む。

「キサマのレベルが低いから、このようなはずかしめを受けるなり!猛省もうせいするなり!!」


プンスカと怒る前鬼は、どう贔屓目ひいきめに見ても可愛さ満点だった。

そんな前鬼に対し、優が言いにくそうに絶望の一言を告げる。


「前鬼…悪いんだが、閻魔大王の力で俺のレベルが上がっても、戦闘時以外はその姿で固定されたみたいだから…」

それを聞いた前鬼が、その場で膝をついた。


「救いは無いのか((1))

四つん這いのままの前鬼が、カッと目を見開き足元に向かって叫んだ。



「閻魔〜!キサマが地獄に堕ちろなり〜〜!!!」



その日、夕焼けに染まる徳島の空に、前鬼の叫び声が響き渡った。









用語解説  基本的にはWikipediaを参考にしています


(1)【閻魔大王えんまだいおう

閻魔大王は地蔵菩薩の化身と言われています。

地蔵菩薩は人々を守り救済する仏として知られています。

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