始まりの章 その5
レッドデビル、クラーケン、サラタンのボス邪鬼を滅すると、洞窟の奥にある扉が開いた。
優が中を覗き込む。
「ここが封印の間か!」
海もその後から中を見た。
「あの台座に、星形の絵が書いてあるね」
中に入り、その模様を確認した空がつぶやく。
「五芒星 と言う模様だな」
「でも、この模様…薄くなって今にも消えそうね」
「五芒星は封印の呪紋だから、これを修復すれば良いはずだが…」
海の声に空が答えた。
「マジックかペンキで塗ればどうだ?」
「「それはダメだろう!!」」
空と海の声が重なる。
すると、3人の前に巫女姿の美しい女性が、実体のない蜃気楼のように揺らめきながら現れた。
「空様、海様、優様。良くぞ試練を乗り越え、第一の巡所を乗り越えましたね」
その神々しい姿に見惚れながら「貴女様は?」と問う。
「妾は日孁と申す」
「日孁様と言うことは、もしや天照…」と言いかけた空に日孁が声を重ねた。
「あまり時間がありません。封印の儀を執り行いましょう」
「こちらの世界から須佐之男と月読が神力を送ります。優様は前鬼と後鬼を召喚してください」
元の世界では、竜宮の磯にある祠の前で構える須佐之男と月読に日孁の指示が飛ぶ。
「須佐之男は海様に、月読は優様に神力を送りなさい」
五芒星の頂点に日孁、空、海、優、前鬼後鬼が立つ。
「さあ、九字印を切りなさい」
日孁の声が響いた。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
すると、五芒星が輝き出した。
その五芒星に日孁が祓詞 を上げる。
『掛けまくも畏き伊邪那岐大神…』
やがて、輝きが消えると、新しく鮮やかな五芒星が台座に描かれていた。
「これで、一番巡所の封印は修復されました。今回は仏の御力に加えて、神力を練り込んでいますから、厄災といえど簡単には抜け出せないでしょう」
「残りはまだ87巡所あり、徐々に厄災の影響は強くなります。この後も頼みましたよ」と言い残し日孁が消えていった。
ふと台座の上を見ると、いつの間にか一番巡所の御朱印が現れていた。
3人は、納経軸に御朱印を押して、洞窟を後にした。
封印の後、いつものように海に抱っこされた前鬼と後鬼が優を見つめる。
「ふむ優よ。僅かだが徳と行が上がっておるぞ!」
「じゃが、この程度では全く足りぬのじゃ!そもそも、一番巡所の封印くらい一人でできねば、この先は厳しいと知るのじゃ!!」
「なるほど…」と先程から何かを考えていた空が口を開く。
「巡所の結界が壊れかけて、あちこちに邪鬼が発生している。これを退治して、封印をすれば徳や行が上がるのか」
「ねぇ、さっきの日孁様って誰?とっても綺麗な女性だったけど、空の知り合い??」
少し拗ねたような顔で海が問い詰める。
「恐らくだが… 日孁様は天照大神の化身だな。それに、多分俺は小さい時に一度会っている」と直公に連れられて、高野山の秘の院を訪ねたことを思い出す。
「あれ?厄災って仏様が封印したんじゃなかったか?仏身一体も仏様だろ」と優が首を捻る。
「そうだけど…何故か分からないけど、仏様と神様の両方が力を貸してくれているみたいだな。そもそも、優は神の加護でこっちの世界に来ているからな」
その空の言葉を聞いて、「それだけ重要な役目ってことじゃないの?」と海が『ビシッ』と人差し指を立てた。
「そうだな」と空の顔も厳しくなる。
「まあ、なるようになるさ。気負わずにやれることをやっていこうぜ!」と優が場を和ませる。
やがて3人は、次の巡所に向けて歩き出した。
ーーーー
高野山秘の院
御簾の前で直公が畏まり、日孁の御言葉を待っていた。
やがて御簾が上がり日孁が顔を出した。
御簾の前に平伏す直公に、日孁が笑いかける。
「直公、空殿達は無事に試練の巡所を通り、一番巡所の封印を致しましたよ。大日如来が選んだだけに、飛兎竜文な子供達ですね」
それを聞いた直公が、空の無事を知り安堵の息を漏らした。
「それは何よりに御座います」
そんな直公に申し訳なさそうに日孁の声が掛かる。
「ですが、これで死天王どもにも空殿達の存在が明らかになったでしょう。いよいよ、本格的な闘いが始まるでしょう」
「それは分かりきっていたこと。小物の排除は空達にお任せいただき、日孁様は封印の神力をお溜めくだされ」と直公が気丈に答えた。
「そうですね。次の封印には最低でも3日は神力を蓄える必要がありそうです。直公よ、その間に仏教界と神道界の全ての宗派に妾の親書を送ります。其方はそれを取りまとめて、こちらの世界の御力をまとめておきない」
日孁が遠く夕日に霞む四国を見据えた。
「父神と母神が作りしこの大地…思うようにはさせませぬ!!」
次話(封印の旅『徳島編』)より、3日更新のベースに変更します。
用語解説 基本的にはWikipediaを参考にしています
(1)【五芒星】
五芒星は5つの頂点を持つ星型で、邪悪を祓うとされています。
(2)【祓詞】
神事の初めに唱えられる禊の言葉




