始まりの章 その3
「着いた〜!ここが鳴門か!!」
優が叫ぶ。
「いよいよ四国巡礼スタートね」
海が港からの街並みを眺めた。
「最初の巡所は…竜宮の浜と言う所みたいだね」
空が地図を差し示した。
「よし…先ずは腹ごしらえだな」
優が指差した先には…『鯛塩ラーメン』の看板がかかっていた。
「我は前鬼!前鬼は唐揚げセットなり!!」
「妾は後鬼!後鬼は鯛めしセットなり!!」
「支払いは兄貴なり!!」
「そのネタ、まだ続けるのか?」
と空が笑いながら注文した。
「へー。魚介スープだからアッサリ系かと思いきや、意外とコクもあるんだな!」
スープを口に含み、優が満足気に声を上げた。
「鯛の香ばしさが良いな。これは、出汁を取る前に焼いているのかな?」
空も麺をすすりながらうなずく。
「しかし、こっちの世界にもラーメンはあるんだな」と優が感心しながらチャーシューを口に入れた。
「ケーキもあるし、自動車や高層ビルに電気製品以外は元の世界と変わらないみたいだな」と空が応じた。
優がしみじみ「スマホが無いのが辛いな〜」とつぶやく。
「だが、鉄道があって、歩きが少ないのは助かるよな」と空がスープを飲みきった。
その向かいの席では…「センちゃん、ゴキたん、おいちいでちゅね〜!!」
と、海は前鬼と後鬼を甲斐甲斐しく世話をしていた。
世界を救う旅とは思えない、穏やかな空気が空達を包みこむ。
お腹いっぱいで、海の腕の中でウトウトしだした前鬼と後鬼を護符に戻し、3人は一番目の巡所を目指した。
「ここが竜宮の磯か!」
「綺麗な砂浜が広がってるね!」
「あそこに祠があるぞ!」
竜宮の磯に着いた3人に緊張感が漂った。
竜宮の磯にある小山に小さな祠があり、その後ろに岩に塞がれた洞窟があった。
空達がその祠の前に立つと、頭の中に声が響いた。
『鍵を示せ!』
3人が納経軸を掲げると、『ゴゴゴ』と洞窟を塞ぐ岩が横に動き、その奥に下に向かう階段が見えた。
空がその階段を見て、「これが封印の巡所か…」と、海と優に話しかけた。
「何か、薄気味悪いわね」
「あぁ、いかにも邪鬼が現れそうな雰囲気だな」
「油断は禁物だぞ!」と、3人が洞窟に入る準備をする。
空は懐から小さくなっていた金剛杖を取り出し、元の長さになるように念を込める。
海が、右耳に付けた薙刀のイヤリングを外すと、薙刀は元のサイズになって、海の手におさまった。
優は大地に向かい「出よガイアの剣」と叫ぶ。
すると、地面から一振りの剣が現れる。
それぞれの武器を取り出すと、「準備はOKだな、よし行こう!」と、空が先頭に立ち洞窟内に足を踏み入れた。
洞窟に入り周りを見渡す。
「洞窟内なのに明るいんだな」
「壁が光ってるのね」
「広さも十分だな」
と安心する。
「これって、ダンジョンって言うやつじゃないか?」と優がラノベ知識を繰り広げる。
「じゃあ、ボスを倒せばいいのね」と海。
「そうだな。きっとラスボスが厄災の能力となる『核』を守っているんだろうな」と空もうなずいた。
洞窟を進むと、ホールのような広場があり…そこにはマーマンと呼ばれる半魚人がひしめいていた。
「これ、何体いるんだ?」
「ざっと見て、百体くらいかな」
「マーマンって…一応人魚でしょ?全然可愛く無いんだけど!」
そんな空達に、マーマンが三又の槍を振りかざし、襲いかかってきた。
「数が多いから、戦力を増やそう」と、優が護符を取り出した。
「我は前鬼!前鬼は戦鬼なり!!」
「妾は後鬼!後鬼は護鬼なり!!」
やっと本来の役割で召喚された前鬼と後鬼は、ぬいぐるみサイズから少しだけ大きくなっていた。
空は、マーマンが持つ三又の槍に対して、金剛杖では不利と考え、『智慧の槍』に変化させた。
そして、智慧の槍を素早く突き動かし、次々とマーマンを突き倒していく。
海も薙刀を振りかざし、マーマンを切り裂く。
前鬼と後鬼は、マーマンの攻撃を後鬼が防ぎ、その隙を付いて前鬼が鉄斧を振り下ろす。
空と海、前鬼と後鬼が順調にマーマンを倒す中、一人優はマーマンに苦戦していた。
ガイアの剣と三又の槍ではリーチが違い、マーマンに近づけない上、三又に分かれた槍に剣が阻まれる。
それでも、空と海、前鬼、後鬼の活躍で、ホールのマーマンは殲滅された。
マーマンの死体は砂浜に吸収され、後には数百もの魔石が残されていた。
「魔石は売れるから、残さずに回収しようか」
空達がその魔石を拾い集めた。
そして…
「優よ、其方の徳では、我らはここまでじゃ」と、前鬼と後鬼が護符に戻った。
「納得いかねぇ〜!」
自分だけ活躍出来なかった優が不貞腐れる。
「まあ、武器の相性が悪かったからな」と空が慰めるが、優の機嫌は直らなかった。
「あ…!あそこに、大きな扉がある。きっとボス部屋だわ!!」と海が指差した。
「よし、ボスは俺に任せろ!」
マーマン相手に活躍出来なかった優が声を上げた。
「ああ、だが相手を見てからな!」
空が冷静に答えた。
扉を開き中に入った3人の前に現れたのは、真っ赤な巨大イカと、巨大なタコ、そして巨大なカニだった。
「「「我らは厄災様の能力より産まれし邪鬼…!厄災様の封印は許さぬ!!」」」
巨大イカが、10本の足を蠢かす。
「我が名はレッドデビル」
巨大タコは、身体全体をくねらせた。
「俺様はクラーケンだ」
巨大カニは、右側だけが巨大になったハサミを振り回す。
「私はサラタンと申します」
「「「修験者達よ、ここがあなた方の墓場です」」」




