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悪意の包容力(3)

 急に、風が吹いた。どこも開いていないのに、強い風が吹く。ちゃみはその髪をたなびかせ、風の行き先を見る。風は玄関からベランダへ続く掃き出し窓に吹いていた。

 2人は玄関を見るも開いていない事を確認、振り返ると――

 「――段ボール、剥がれてね?」

 風で、バタバタと段ボールが剥がれていく。たなびくガムテープの引き裂かれる音。段ボールの向こう側の窓は、部屋の明かりに反比例してまるで漆黒の海のよう。

 その、暗がりから。

 「ちゃみ先輩、アレ……」

 幕が開くように。

 「見てる、どうしよね」

 闇が消えていく。

 「ひっ、ひっぃぃぃ! 見ないでぇ!!」

 



 ――のっぺりと。窓いっぱいの男の顔が、そこに在った。顔が、巨大な顔が、地面からせり上がり、今……窓に目を押し付けて中をギョロギョロ見ている。

 



 シーリングライトほどある眼球の黒目が動き続ける。時折、呼吸をするせいか窓が白く曇り、それを窓についた肌が拭っていく。

 ハッハッハッハッハッハッハッ……という呼吸音が部屋中に響く。反響する呼吸音は脳の中にまで響くようで、ちゃみが思わずその場で吐いた。

 「ちゃみ先輩、俺、窓開けてアイツぶちのめしてくる」

 「ダメ゛ェ! それじたらっ、アタジら死゛んじゃう!!」

 吐しゃ物にまみれたマスクを外し、ちゃみは涙目になって海摩を制止する。彼女の背中を擦り、海摩は「マジか」と呟いた。

 「大丈夫、負けないっスよ。俺も悪霊憑いてるし。見たくないですか、悪霊大戦争」

 「……バカ言わないで。アタシは、死にたくない。勝ち負けとかどーでもいい」

 ちゃみは日傘で窓の向こうの化け物の視線から身を守りながら替えの黒マスクを取り出し、身に付けた。

 「――玄関から出る。今、そう心で決めても悪いモノが視えない。行こ」

 「えっ、鈴木さんは?」

 ぶるぶる震えてる鈴木を指差す海摩に、ちゃみは踵を返して吐き捨てた。

 「無視!!」

 「冷たい……」

 歩を進めながらちゃみは、

 「扉、開けて」

 靴を履きながら海摩に命令する。彼は、踏みつけるようにスニーカーを履き、「鈴木さん大丈夫かなァ」と心配する素振りを見せながら扉に手を掛け、開いた。



 「――こんに、ちわ」


 そこには、巨大な口が、在った。


またすぐに更新します。

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