ERIKA 外伝『たとえそれが、“偽物の友情”だったとしても』
今作はpixivで連載中の“ERIKA”の中盤付近投稿予定のエピソードを、原作を知らない方でも読める様に一部設定を変更・簡略化した“外伝作品”です。
11月に似合わない程冷えた空気を斬り裂く様な勢いで田舎道を走る1人の男。
濃い青色をしたツナギの戦闘服を身に纏った男の名は“畔木悠一”。
畔木は田舎道が坂になり始めると鞘から自分のブレイドを抜刀すると両手で構えると田んぼの中に待ち伏せていたナイトメアが田舎道に飛び出した瞬間、走りながら上下真っ二つに斬り裂いた。
「構ってる暇は無いんだよ!」
畔木はそう叫びながらブレイドを両手に構え、只管田舎道の坂を駆け上がった。
遡る事5時間前。
外征任務から帰投した畔木は『千葉に“汚染者”が現れた』と言う連絡を受けるてすぐさま汚染者の情報を集めた。
「基村?」
そう呟いた畔木はすぐさま再出撃準備を整えると自室を飛び出した。
“汚染者”
ナイトメアの魔力によって汚染され、洗脳された“人間”。ナイトメアに対抗する魔力を持つ若き男達“ディフェンディングベルセルク”もまた、汚染者となっては現役のディフェンディングベルセルク達によって介錯されていった。
「助けれないのか?」
その問い掛けに彼らは「無理だ」と言う
仮に助けられたとしても100%の確率で再発、もしくは救出失敗となる。その際には強力なナイトメアとなり“人間”ではなくなる。
「ならいっその事人間であるうちに」
それが彼らの考えだ
だが、今の畔木にはそれに反する考えを持っていた。
一か八か....覚悟を決め、勇気を持って、彼は汚染者となった嘗ての仲間“基村”のもとを目指していた。
「基村....絶対助ける」
ブレイドを空振りしてからそれを鞘に納めた畔木の周りには無数のナイトメアの残骸が白煙を吹き出しながら地面に転がって居た。
「何処だ?」
そう呟いた瞬間、畔木は眼を見開くと両手に魔力を宿わせながら後ろを振り返ると頭上から振り下ろされた1本のブレイドを白刃取りで受け止めた。
「らしくねぇな畔木!、とっトと俺をコロシテくれヨ」
「(所々が汚染者と同じ声の波長になってるな。だが!)」
「基村!」
「殺しテくれヨ。釘原や守永トオナジ様に!」
「チィッ!」
畔木はそのままブレイドを魔力で破壊すると左手で基村の右肩を掴み、右手の平を基村の心臓に押し当てると右手から魔力を注入し始めた。
「な、何を!」
「決まってんだろ!。お前を助ける!」
「辞めろムチャダ。分かってルだろ?」
「お前はまだ自我が残ってる!可能性はある!」
そう言いながら左手で基村の内部にあるナイトメアの魔力を体内に吸収し始めた畔木は本格的に基村の浄化を始めた。
「馬鹿!そんな事ヲシタら、お前も!」
「リスクは背負うさ!」
「なぜ、俺を....」
畔木はナイトメアの魔力を前に表情を歪ませながらも無理矢理笑みを浮かべると基村と目を合わせた。
「あの時は....あの時は言えなかったが、....俺は、....俺は嬉しかったんだよ!」
「ぁえ?」
「お前に、“相棒”って呼ばれて!」
「⁉︎」
「当時俺は、“魔力で水を操れる事”と“魔力で自己治癒出来る能力”のお陰で、俺は周りから“化け物”と呼ばれ、避けられ孤立して居た」
「ッ、....そうだったな」
「そんな中、唯一の相棒が死んだ事で後追い自殺をやろうとした俺を止め、俺を“相棒”と呼んでくれたのは、他の誰でもない。....基村、お前だ!」
「!、それは....」
「声にらしさが戻って来たn」
ナイトメアの魔力を前に、畔木は喀血を起こし始めた。畔木と基村は全てを悟った。
「畔木....もう辞めろ!。お前まで汚染者に、いや死ぬぞ!」
「辞めるかよ....あと....少s」
再び喀血を起こす畔木。それを見た基村はゆっくりと目を瞑ると畔木の右手首を掴んだ。
「畔木....俺が、俺がお前に放った“相棒”って言葉に....友情は無い」
「⁉︎」
驚く畔木を前に基村は哀しげな表情を浮かべると口元を震わせながら“真実”を伝えた。
「俺は怖かったんだ」
「ぇ?」
「お前が居なくなったら、俺が....俺の仲間が化け物呼ばわりされ、虐められるかもしれない。だから俺は、その標的が他に向かない様に....してただけだ」
畔木は俯くと再び喀血した。その隙を付くように基村は自分の胸元から畔木の手を離そうとした。
だが畔木は逆に魔力を強めると更に強く右手を押し当てた。
「だとしても、」
「⁉︎」
「だとしても!。お前が俺の自殺を止めたのは事実だ!」
「ッ!、それは!」
「どんな理由があれ、俺の自殺を止め、俺を支えてくれたあの行動は、“友情”、じゃないのか?」
「それは、....それは“偽物の友情”だ!」
「だとしても、だとしても!事実は変わらないんだよ!。お前のお陰で俺は生きてる。だから今度は、俺がお前を助ける!」
「畔木....だが、」
「んなこったろうと思ったぜ」
「ッ!、隊長⁉︎」
畔木が振り返った先に居たのはディフェンディングベルセルク二代目隊長の“細谷”だった。
「ルール違反、だぜ?」
「その通りだ。だから細谷さん!畔木を助け、俺を殺してくれ」
細谷は無言で目を瞑り、考えた。それと同時に畔木も考えた。
そして畔木は顔を上げると細谷の方を向いた。
「隊長!、あと少しなんです!。手を貸して下さい!」
「!」
「ほ〜う。言えんじゃねぇか」
「無茶だよ!。今此処で細谷さんまで倒れたら!」
「ルール違反だが、頼まれたからには仕方ねぇ」
そう言った細谷は畔木の右肩に左手を添え、畔木の体内にあるナイトメアの魔力を吸収し始めると畔木の右手に自分の右手を重ね合わせると、自分の魔力を注入し始めた。
「細谷さん....」
「こう言う事に仲間巻き込むのは、勇気が居るんだよ。人に頼むのも、頼るのも....人と関わる事自体勇気が必要だ」
「!」
「お前は勇気を出して畔木を救った。そして畔木は、勇気を出して俺に助けを求めた。そして俺は、俺達は、勇気を出して、前代未聞を成し遂げようとしている」
「....」
「基村、戻って来い。お前が帰還者第一号になれ!」
「俺は、俺は....」
基村はそう言いながら俯くと振り下ろした両手を強く握ると雄叫びを挙げながらナイトメアの魔力を背中から放出した。
「!」
「畔木!怯むな踏ん張れぇ!」
「はい!」
「「うおおぉぉぉぉぉッ!」」
ナイトメアの魔力を放出し終えたのち、その場に倒れ込んだ基村を見た畔木と細谷はその場に倒れ込むとナイトメアの魔力を体外に放ち、自分の体内を浄化した。
「上手く....言ったのか....」
「恐らくなぁ」
細谷のその言葉を聞いた畔木は基村が両手を強く握り締め、起き上がろうとしたのを確認すると自分の身体に力を入れて立ち上がると、蹌踉めきながら基村のもとに歩み寄った。
「あっ、がっ....」
「立てるか?」
「・・・」
差し出された畔木の右手を自分の右手で掴んだ基村。すると畔木は笑みを浮かべながら手を引くと基村を立たせたのち手を離した。
「「・・・」」
2人は暫くの間、目を合わせたまま動かなかった。が、畔木はゆっくりと自分の右手を差し出すと基村はそれに応えるように自分の右手を差し出すと2人は硬い握手を交わした。
「これからも宜しくな。“相棒”」
「こちらこそ。“相棒”」
どうも皆さん、村渕和公です
今回はpixivで連載中の異世界転生バトル作品“ERIKA”の一部をアレンジした作品を出してみました。
連載自体は全三部構成のうちまだ第二部の始まりまでしか出せてないのですが、今回公式企画のテーマがERIKAのサブコンセプトの1つだったので、外伝として本作を出してみました。
如何だったでしょうか?
もし御興味あるようでしたら私のマイページからpixivに飛んでみて下さい。(pixivではkatahaneと言うネームでやってます)
あと、もし今作を読んで自分の作品に興味が湧いたら、是非他の作品にも手を取って頂けたら幸いです。
数ある作品の中からこの作品を読んで頂き、誠にありがとうございました。
では、また別の作品でお会いしましょう