表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

東京悪夢物語「排水口」

作者: ヨッシー@

東京悪夢物語「排水口」


私の住んでいるアパートはボロい。

築50年は経っている。壁は剥がれ、雨漏りもする。

かなり住みづらいが、家賃28000円。都内でこんなに安いアパートは他にない。我慢するしかない…


ゴボゴボゴ、ゴボッ、

また、詰まった。


びしょびしょだ。

洗濯機の排水が溢れている。

いい加減に腹が立つ。大家さんは、いくら言っても直してくれない。

しかし、臭い。

嫌な臭いだ、気分が悪い。

仕方がない、いつものように掃除をするか。私は、手袋をしてバケツを用意した。

ギッ、

排水パイプをねじる。

ドロッ、

ヘドロが出てきた。

汚い、今日は一段と多い。 

こんな事はやりたくない。

仕方がない、ここでの暮らしでは仕方がない。自分でやる、我慢する。

パイプのヘドロを手でこすり落とす。

クチャクチャ、ベトベト

丁寧に取り除き、ブラシで擦る。

ゴシゴシゴシ、

簡単に取れた。バケツの水できれいに洗う。

バシャ、バシャ、

濁るバケツの水。

赤黒い、

妙な色だ…


綺麗になった、元の姿に戻った。

次は排水口か、

かなり詰まっているな。

「やはり、手でヘドロを掻き出すしかないか」

ゴホゴホ、ゴホ

マスクをすればよかった。

ヘドロ臭で息が苦しい。

ベトッ、ベトッ、ヘドロを掻き出す音。

ポタッ、ポタッ、汗がたれる音。

……

……

やっと取れた。排水口の奥が見えた。

ササッ、

何か動いた!

何か、長い物が動いた。

ササッ、

何だ?

長い、何か生き物のような物が排水管の奥で動めいている。

「わっ、ヘビだ!」

噛まれたら大変だ、大家さんに連絡しなくては、

電話、電話、

まてよ、

このまま業者が来るまで放っておいて、もし、ヘビが部屋に入って来たらどうする?

大変だ、何とか捕まえなくては!

私はトイレ掃除の棒を、排水口に突っ込んでみた。

ズズッ、ズズッ、

……

反応が無い。

見間違いか?

棒を抜き、懐中電灯で中を照らしてみる。

ピカッ、

よく見えない。

床に這いつくばり、顔を近づけて見てみる。

ササッ、

長い体にたくさんの足、

「えっ、ムカデ?」

赤黒い、赤黒ムカデだ!

しかも、かなりでかい。ちょっとしたヘビのぐらいの太さはあるぞ、

こんな都心で、こんなアパートに、何故こんな大きなムカデがいるんだ?

このアパートに昔から住んでいるのか?私が住むずっと以前から住んでいたのか?

この排水口の中を這えずり回り、出て来ては餌を食べ、生活していたのかもしれない。

確か、ゴキブリを食べると言うのを聞いたことがある。

だから、いつも排水管が詰まっていたのか。

やっと解った。

ムカデがゆっくりと動き始める。

サササッ、サササッ、

ヌシだな、このアパートのヌシだな。

私は、居間から殺虫剤を持ってきた。

「虫だから、殺虫剤で死ぬはずだ」

もう一度、覗いて見る。

ムカデの動きが止まっていた。

伺っているのか、こちらの様子を伺っているのか、

ムカデの視線を感じる。

今だ、

シューーー

殺虫剤を勢いよくかける。

シューーー

排水口が、ガスで真っ白になる。

「死ね」

「殺虫剤で死ね!」

シューーー

ゴホゴホゴホ、殺虫剤でむせる。

ゴポゴポゴポ……

妙な音がし始めた。

ゴバッッッ、ジュッポ、

ニュルニュル、ニュルルルルーーー

突然、ムカデが排水口から飛び出してきた!

カサカサカサ、脚を激しく動かす。

クネクネクネ、身体を捻る。

「わわっ、」

凄い、野球のバットぐらいの太さはある。

バタンバタン、バタン

激しく暴れる大ムカデ。

バン!

「痛っ、」

大ムカデの脚が腕に当たった。

刺されたか、

バタンバタン、バタン

洗濯機が振動で激しく揺れる。

バババババーッ

全身が現れた。

長い、軽く1メートはある。

怖い、とても私には無理だ。逃げなくては、

ドアに向かう。

バン、

再び、大ムカデの脚が体に当たった。

ガガン、

突き飛ばされた。

「痛って、」

頭を棚にぶつけてしまった。

タラッ、血が垂れてくる。

「痛っーー」

血が目に入った、目の前が真っ赤だ。

慌ててタオルで止血する。

いない、

大ムカデが、どこにも見当たらない。

「どこだ、どこに行ったんだ」

こんな狭い脱衣所で、隠れる場所などあるはずは無い。

どこだ、

ササッ、

動いた、

風呂場に影が見えた。

ギイーー

風呂場のドアをゆっくりと開ける。

懐中電灯で、そっと照らす。

ピカッ、

何処だ。

ハアハアハア、

何処だ、

ハアハアハア、

風呂桶の角に赤黒い影が見えた。

そうだ、

私は、噴霧型殺虫剤が洗面台の下にあるのを思い出した。

バタン、

慌てて、洗面台の下を開ける。

「あった、」

噴霧型殺虫剤を取り出す。

バリッ、ジャー

蓋を開け水を入れる。

シューーー

白い煙が上がる。

それを風呂場に投げ入れた、

カラン、カラン、

シューーーー

風呂場の中が真っ白になっていく。どんどん真っ白になっていく。

シューーーー

バタンバタン、バタン

ガタンガタン、ガタン

暴れまくる大ムカデ。

シューーーー

バタンバタン、バタン

ガタンガタン、ガタン

バタン、バタン……

……

……


静かになった。

私は、手に殺虫剤を持ち、恐る恐るドアを開けてみた。

ギィーー

大ムカデは、丸くうずくまっていた。

死んだか?

恐る恐る棒で突いてみる。

トン、

動かない。

死んだか…

……

……

私は、大ムカデをゴミ袋に入れた。

ドサ、重い…


次の日の朝。

大ムカデを確かめてみた。

死んでいる、

まったく動かない。

死んだか…


ウイーン、

大ムカデを燃えるゴミに出した。

パッカー車の中に吸い込まれる大ムカデ。

ウイーン、ガッチャン

見守る…


さて、会社に行かなくては、

「うっ、痛い」

腕が腫れている。

ムカデに刺された所が腫れている。

赤黒い、


まるで、

ムカデの形ようなアザ……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ