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【ヤル気のない冒険者のヤル気のない日常】  作者: ばてぃ~
第1章【ヤル気のないおっさん、周りにウザ絡みされる。】
8/23

8・【おっさんだって芋引く時はある。】



「・・・・・・話しかけづらい。」


シルバはラミアから遅れる事90分後にオボロ山に到着した。

さぁこのデカい山からラミアを探すのが億劫だなぁ等と考えていたが・・・目的の人物は存外容易に見つけることが出来た。


人族女性の激しい叫び声と魔獣たちの咆哮、何より戦闘による衝撃がする方向へ歩みを進めると・・・鬼神の如く如く魔獣を屠るラミアがいたのだ。


しかも・・・

「おっさんのアホっ!!酒飲みっ!!不愛想っ!!馬鹿っ!!う~~・・・おっさんっ!!」と悪口なのか疑問が残る言葉を叫んだあとは「おっさんおっさんおっさんおっさん!!!」とおっさんと言う単語をひたすら連呼しながら魔獣を一切の容赦無く屠っているのだ。


(これは・・・俺を殺したいほど怒っているのだろうか?)


シルバがそう考え、戦慄してしまうのは致し方ないだろう。

Sランクの【舞姫】がC+ランクのおっさん・・・未だ20代後半だが・・・低ランクのシルバに公衆の面前で恥を晒されたのだ。


その激情は同調は出来ないまでも理解には至る。


(であれば・・・今ホイホイと出て行けば・・・)


有り得ない筈の事だが、自分の首と胴が真っ二つにされる光景を目に浮かべて思わず背筋が凍る。

可能性としてはかなり低いが0ではない。

事実、昨日に【舞姫】が【灰色ノ剣】に襲われているのをこの目で見ているのだ。

それが自分の身に降りかからないと断言できる程、自分の運命に自信が有る訳でも無かった。


(・・・もうちょっと落ち着いてから声を掛けよう。)


シルバはそう決めて、そっと茂みの中から、ラミアが落ち着くまで息を潜めていた・・・

それは全て、自分の生存確率を上げる為の行動だったが、ラミアに気配を察知され魔獣と勘違いされなかったのはある意味で運が良かったとも言える行為だったのだが・・・当の本人はその事には気づかないかった。


(・・・・・・やっと落ち着いたか?)


シルバが息を潜めて約30分が経過した。

ラミアも流石に疲労が溜まったのか、周りが見渡せる岩山の山頂に陣を取り休息を行っていた。


(この辺りは流石高ランカーだな・・・)


休憩しているその瞬間こそが警戒心が薄れて魔獣に狙われやすい。

だからこそラミアは岩山の山頂に陣を取り、何があっても対処できる様にして休憩を挟んでいるのだ。


(だが・・・大丈夫か?)


シルバはラミアの表情を見て、暫し不安に陥る。

どの様な理由があっても敵地で仲間の援護無しに深く考え込むのは御法度だ。

不測の事態に陥っても対処出来ないし、五感の感知能力も鈍ってしまう。

それでもSランクならば大丈夫ではあるだろうが、不用心であるのは間違いないのだ。


(ん・・・あれは・・・『ソードバード』か?)


そんな事を危惧していると、ラミアの上空に『ソードバード』が空を飛んでいる事に気づく。

『ソードバード』は中堅どころの冒険者でも相性によってはかなり厄介な相手である。

大きな特徴は嘴が剣の様に鋭く、鳥特有の突くという攻撃だけでは無く、嘴を振り回して斬るという事も出来る魔獣である。


しかも攻撃動作は上空からの奇襲攻撃を行ってくる事が多く、遠距離用の攻撃で対応する事が主となる魔獣だ。

普段の【舞姫】であれば難無く対処できる魔獣ではあるのだろうが・・・今の彼女は心此処に有らずという風に映る。

事実、『ソードバード』に視線を向けていない辺り、予感は的中しているであろう。


(おいおいおい・・・大丈夫か?)


内心ハラハラとした感情でラミアに『気づけ』と念を送るも、当然ながら彼女にシルバの感情が届く訳も無い。

そうしている内に『ソードバード』はラミアを視認したらしく、彼女の真上の上空で旋回を始める。


(おい、攻撃の予備動作に入ったぞ?!!早く気づけ!!!)


そんなシルバの感情とは裏腹にラミアは突如、無造作に岩山で立ち上がりだした。

そしてその瞬間、『ソードバード』もスイッチが入ったかの様に彼女に向けて急降下し始めた。


「馬鹿っっ!!!」


「キィエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーー!!!」


シルバは茂みから飛び出すが、それと同時に『ソードバード』は雄叫び声を上げていく。


「・・・え?」「ちっっ!!!!」


ラミアが声のする方へ振り返ると同時、シルバは短刀を3本を連投で打ち込んだ。


「ギィエエエエエェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


すると1本は『ソードバード』の羽根を切り、もう1本は首筋に突き刺さる。

『ソードバード』は突然襲い掛かって来る痛みで思わず首を捻り、そして羽根を傷つけられた事によりラミアの僅か側面部分に墜落していく。

・・・因みに残る短刀1本について言及するのは野暮というものだろう。


(・・・・・・ヤバいっっ!!!)


無事に最悪の事態を回避したと安堵したシルバだったが、次に襲い掛かる災難で頭が一杯になる。

1度ならず2度までも【舞姫】の危機を救ってしまったのだ。

これを当人に知られてしまえば昨日の様にややこしい事になるのは明白だという答えに行きついたのである。


幸い助けられた本人は何が起こったのか状況を整理しきれていないらしく、呆然と弱っている『ソードバード』を見ている。

少なくとも今は自分自身を認知されてはいない。


(だったらこの場から気づかれない様に逃げる一択だろ!!)


そう結論が出てからのシルバの行動は早かった。

再度茂みに身を隠し、匍匐前進しながらラミアとの距離を取っていく。


(短刀は・・・まぁ、良いか。)


一瞬短刀で自分だとバレはしないかと危惧したが、仕方ないと思いなおした。

そもそも何処にでもある様な短刀であるし、短刀を回収する事の方が圧倒的にバレるリスクが高い。

万一バレたとしても知らぬ存ぜぬで押し通せばいいのだと結論付けながらシルバはオボロ山を後にした。

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