3・【おっさんだって助けてもらう事はある。】
「はぁはぁ・・・手こずらせやがって。」
「まぁその方がお愉しみもデカいさ。」
「おいおい、頑張りすぎて壊すなよ?」
「・・・・・・・・・」
観察して数分少々、遂に【舞姫】がへたり込む。
その様子を見て【灰色ノ剣】の面々は【舞姫】と少しずつ距離を詰めていく。
その油断をしない動きからも【灰色ノ剣】もまた有名なパーティーなのだと理解する。
(今っ!!!)
それでも油断しないのは【舞姫】に対してであって、周囲にまで気を配る余裕は流石に無かったのだろう。
男の放つ短剣の1本が無口な男の弓の弦を切り、もう1本の短剣の柄で無口な男のこめかみの部分を撃ちつける。
「・・・・・・・・・」
ーーーズシャッーーー
(おいおいコチラは都合良いけどさぁ・・・倒れる間際くらい声出せよ・・・)
無口な男は声を一言も発する事なく意識を刈り取られ倒れていく。
音がした方へ視線を向けた【灰色ノ剣】の面々は驚愕の表情を浮かべた。
「ディースッッ?!!」
「どうしましたディースさんっ?!」
「おいディースッッ?!!」
「・・・・・・・・・え?」
【灰色ノ剣】の面々に釣られて、【舞姫】の方も無口な男・・・ディースに視線を向ける。
それは全員の視線がディースに向けられており、男からすれば全員の死角に潜り込む絶好の機会となったのだった。
「ガァッッ?!!!」
次いで狙ったのは一番近接戦が厄介そうな大男だ。
相手はA+ランク、個人でいってもB+はあるだろう。
対して男はC+ランクだが・・・死角をついて喉仏部分を剣で打ち込める位は容易に出来た。
(なんせ一回緊張感が途切れてるからな・・・)
0から緊張感を携えるのとは違い、0から緊張感を持ち、0になった場合は再度緊張感を持つのは非常にキツイ事は男の経験則上理解していた。
ましてや【灰色ノ剣】も【舞姫】相手に不意をついているのだ。
男が【灰色ノ剣】に対して通用しない道理などは何処にも無いだろう。
男が苦悶の表情を浮かべて呻く隙に後頭部から再度追撃を行い、大男の意識を刈る。
「カースファ「ギガッッ!!!」」
魔法職の眼鏡男が男の存在を認識して攻撃に転じようとするその僅か先に男の電撃魔法(初級)が眼鏡男の持つ杖に電流を加える。
(杖を媒体に魔法を発動させてるんだろうが杖は金属製・・・だったら杖に電流を走らせて媒介にさせなきゃ良い。)
男の予想通り、杖に電流が走り眼鏡男は杖から手を放す。
媒介の無い魔法職などは一般人男性よりも虚弱な傾向が強い。
眼鏡男もその例に漏れず、男の腹部に与えた打撃により倒れ込む。
ーーーゴギッッーーー
「アアァァァッッ!!!」
そしてその隙に男は眼鏡男の左腕の骨を折る。
魔力を練り上げる魔法職は痛みに伴い魔力を練り上げるのが非常に困難になる。
これもまた男の経験則上、知っている事だった。
「ちょっ!おいおいおいっ?!!」
残りは剣を携えた剣士職のみだったが・・・完全に男自身を視認されてしまった。
(こうなってくると難易度は数段高い・・・)
繰り返すが男はC+ランク、個人の技量では勝てる要素は低いだろう。
不意打ちを与えて3人までは無力化できたとしても残り1人に正々堂々と戦って勝てる可能性は低いのだ。
「ガッ・・・・・・!!」
だがそこで男に視線を向けていた剣士職の背後から強烈な一撃が襲い掛かり、剣士職の男は白目を向き無造作に倒れ込む。
「ハァ・・・ハァ・・・済まないね、助かったよ。」
其処には疲労の色は隠せていないが【舞姫】が剣士職の背後に立っていた・・・