22・【おっさんだって顔見知りには愛称呼びしたりする。】
「いやぁ、サジテリアのスイッチが入った様子を見るのは久しぶりだねぇ~。」
「うっ・・・仕方ないじゃない。シルバ君が私よりもあの女狐を優先して依頼を受けたと知った瞬間から腸が煮えくりかえりそうだったんだから・・・」
ハークにサジテリアが弄られている様子を呆れた表情でシルバは眺める。
シルバは普段のサジテリアであれば冷静に対処できるだろうに・・・何でマダムとの事になるとこんなに対抗意識を燃やすのかねぇ~等と内心愚痴る。
「あ・・・どうやらシルバ君がずれた事を考えてそうな表情を浮かべてるよ。」
「・・・相変わらずなのね。」
「いやいや、単純にどんだけお前とマダムは仲悪いんだよとツッコんでただけだ。」
シルバは辟易した表情でそう答える。
するとハークはまたクスクスと笑い出し、サジテリアはシルバに呆れた表情を投げかける。
「・・・なんだよ?」
「・・・別に?それよりも・・・アレの依頼を受けた経緯を教えなさいよ。」
サジテリアの視線に居たたまれなくなりシルバが口を開いてもサジテリアは拗ねたかの様な口調で事の経緯を求めてきた。
「まぁ、そんな大袈裟な理由じゃねぇよ。マダムの依頼を受ける代わりに俺の情報を漁るのを止めてくれるって取引を行っただけだ。」
「「・・・・・・・・・」」
シルバは何でもないという風に端的に報告する。
だが・・・その報告を受けた2人は何も発せず、そしてピクリとも動かずに暫しの間固まっていた。
ーーガタンッーー
そんな静寂が数分続いただろうか?
サジテリアが幽鬼の様にユラリと立ち上がる。
それと同時にハークはサジテリアの腕をつかむ。
「ギ、ギルマス落ち着いてっ!!先ずは座ってっ!!」
「フ、フフフフ・・・遂に女狐が尻尾を出したわね・・・【ギルドの裏女帝】と呼ばれて調子に乗っているのもかもしれないけれど・・・【ギルドの女帝】との直接対決を望んでいたとは気づかなかったわぁ・・・」
「ち、違うからっ!!アレは其処まで考えてないからっ!!シ、シルバッッ!!お前も止めてくれっっ!!」
シルバはハークの焦った表情を見るのも随分久しぶりだなぁ~と呑気に事の成り行きを見ていた為に、突然自分に声を掛けられて思わずビクリとする。
「いやぁ~・・・【ギルドの女帝】と【ギルドの裏女帝】の覇権争いだろ?俺としては正直・・・どっちでも良いなぁ~・・・」
「違うからっ!!覇権争いとかじゃないからっ!!と、取り敢えずサジテリアを諫めてくれっ!!ま、マジで頼むっっ!!!」
どっちがギルドのトップになろうとしても自分の生活にはプラスにもマイナスにもならないと考えたシルバの呑気な一言にハークは必死に懇願する。
「まぁまぁ・・・リア、落ち着けよ。お前が負けるとは思わんが、そんなに事を荒立てる必要も無いぞ?」
「っっ!!!そ、そうね・・・取り敢えず頭を冷やすわ。」
シルバに愛称で呼ばれたサジテリアは一瞬顔を真っ赤にしてた後に、冷静になったかの様に大人しく座る。
それを見てシルバはいい歳した女性に愛称呼びは不味かったかなぁ等と思い、ハークは・・・涙を流しながらエア拍手をしていた。




