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【ヤル気のない冒険者のヤル気のない日常】  作者: ばてぃ~
第1章【ヤル気のないおっさん、周りにウザ絡みされる。】
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2・【おっさんだってやらなきゃいけない時はある。】



「くらえぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!」


「カースファイアッッ!!!」


「ちっ!!さっさと倒れろよっっ!!!!」


「・・・・・・・・・」


男4人が一斉に相手へ攻撃を加えている。

男4人ともが男自身が住む街では【灰色ノ剣】と呼ばれるかなり有名なパーティーである。

そんな彼らが襲い掛かっている相手に視線を向けると・・・


(えぇぇ・・・)


男はそれ以上の感想が脳から出てこなかった・・・

【灰色ノ剣】が攻撃を仕掛けていたのは・・・Sランク冒険者【ラミア=エルフロウ】その人だった

男が住む街では最上位に位置する冒険者であり、美しい容姿からも【舞姫】と呼ばれる超有名人だ。


【灰色ノ剣】はA+ランク、【舞姫】はSランクである事もからも【灰色ノ剣】が必死になって猛攻を仕掛けている事は当然ではある。

当然ではあるのだが・・・問題はA+ランク、Sランクが『チック大森林』で戦っているのか?という事である。


どんな職場でもそうだが、ギルドでも冒険者間での私闘は厳禁とされている。

だがどうしても譲れない場合はギルド職員3名以上の立ち合いの元、闘技場でのみ決闘を行う事は承諾されている。


にも拘わらず、街で有名な2組が『チック大森林』の生態系を狂わせるかの様な私闘を行っているのは完全に予想の範疇外である。


(此処で俺がノコノコ飛び出しても・・・なぁ?・・・そもそもなんでコイツ等は戦ってんだ?)


男自身の冒険者ランクはC+である。

それ故、A+ランクとSランクの戦いに飛び出しても止められる気がしない。

それに互いが何故戦っているのかも気にならない訳では無い。


「さっさと倒れろやぁ!!!」


「五月蠅いっっ!!貴様等の思い通りになんかなるものかっ!!!」


「お前を倒して存分に楽しんだ後に奴隷に堕としてやろう!!!」


「誰が貴様等なんかにっ!!」


「気の強い女だっ!!直ぐに従順にしてやるぜっ!!」


「女1人に対して男4人で襲い掛かって来る卑怯者なんかには負けないっ!!」


「・・・・・・・・・」


「くっ!!!」


(いや・・・遠距離のヤツ、なんか言えよ・・・)


心の中でそうツッコミながら凡その経緯は理解する。

要は【灰色ノ剣】が【舞姫】に襲い掛かり奴隷にしようとしている、と・・・

男はテンプレ過ぎる目の前の光景を見て頭が痛くなってくる。


(世の中そんなに甘くないのにねぇ・・・)


普通に考えれば容易に理解出来るだろ?と考えてより頭が痛くなる。

【舞姫】は街どころか国でも有名人だ。

確かその功績を讃えられ叙爵された程の人物だ。


そんな人物が奴隷になっていれば容易に見つかり、【灰色ノ剣】にまで足は伸びるだろう。

もし【裏】で奴隷に堕とすとしてもそう簡単にはいかないだろう。


先程と同様、【舞姫】は有名人だ。

そんな彼女が失踪したとなれば国を挙げての捜索ともなるだろうし、【貴族】としても舐められない様に徹底的に探し出す。


【裏】側からすればそれに伴い瓦解するリスクはどうしても付きまとう為、取引してくれる【裏】の数も限られるのだ・・・


(まぁ・・・取引してくれる【裏】からすれば絶対の自信があるんだろうけどなぁ・・・)


ただ【灰色ノ剣】がそんな【裏】と繋がりがあるとはどうも思えない。

詰まり【灰色ノ剣】は【舞姫】に手を出した時点で9割詰んでいるのだ。


(それに【舞姫】はSランクだ。A+ランクの【灰色ノ剣】では荷が重いだろう。)


そう思って息を殺して男は眺めていたが・・・

男の予想とは異なり、少しずつ【灰色ノ剣】の方が押し始めていった。


「この、卑怯者たちめっ!!」


「はんっ!!遠距離から状態異常を狙うのは定石だぜっ!!」


男は会話を聞いて合点する。

どうやらあの無口なヤツに奇襲を掛けられて毒か何かの状態異常を受けているのだろう。

【灰色ノ剣】のいう通り、魔獣相手であれば定石中の定石だ。

飽くまで魔獣相手であれば、だが・・・


こうなって来ると、男としてもこのまま帰る事には出来ない。

そもそもそんな性格であれば此処まで成り行きなど観察してはいない。


(はぁ・・・やだねぇ・・・)


心の中で深いため息をつき、今日は運があると思っていた先程までの自分を絞め殺し、ちょっとばかり創造神様に文句を言って・・・男は目つきを変える。


(俺という存在を両者ともにバレずに【舞姫】に加勢する。その後は【舞姫】が街の兵士に報告でもするだろ。)


男としては今の平穏な生活を捨てて目立ちたいという気持ちは毛ほどもない。

そんな事は一時のメリットでしかない事を男自身も経験している。

にも拘わらず、こんな厄介な性格をしている自分を恨めしくも思う。


(まぁやると決めたらやる・・・それも俺だろ?)


男は頭を切り替え、腰から短剣を2本抜き取る。

そして無口な男の動きをつぶさに観察しながらジッと息を潜めた。

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