16・【おっさんでも気づいたら謝罪する。】
「・・・という訳です。」
ラミアはシルバと共に誘導されたソファーに腰かけながら【灰色ノ剣】との一部始終を報告し終えた。
横で黙って聞きながらシルバは無表情を辛い抜いていたが、心の中では【灰色ノ剣】に対してドン引きな心境だった。
ラミア曰く、数日前に街の外で【灰色ノ剣】の1人から俺の女になれ発言を放たれた。
全く眼中に無かったので容赦なく断ったら突然襲い掛かってきた。
それに関しては難無く(剣で)あしらう事が出来たそうなのだが、『チック大森林』では背後から毒矢による奇襲を受けた上に1対4の状況であった為に防戦一方だったとの事だった。
「成程・・・元々彼らの実力は否定していませんが人間性は田舎者丸出しでしたからね。彼女の言い分が8割以上正しいでしょう。」
「田舎者というよりは野生のボス猿みたいな連中ね。強ければ何をしても良い・・・品位の無い言葉だこと。」
サブマスの言葉に乗っかり、サジテリアは辟易したかの様な表情で呆れ返る。
シルバも彼女と同じ様な感想を抱いてはいたが、流石にギルドマスター、サブマスター、記録管、被害者の前でその様な行動を移す事は出来ずにただ黙って聞いている。
「そこでシルバ君が颯爽と助け出したという訳ね。」
「いや・・・マジで勘弁して下さい。相手はSランクとA+ランクですよ?隙を見て奇襲するのが精一杯です。」
サジテリアの言葉を即座に否定して、今度はシルバが状況を説明する。
偶然彼らを見つけた事、ラミアを奴隷に堕とすという発言をしていた事、奇襲で3人までは片づけたが残り1人で対峙する事になった事、それをラミアが相手の背後から渾身の一撃を加えて助太刀してくれた事を覚えている限り事細かく正直に話した。
「成程ね・・・で、シルバ君がラミアちゃんに自分の事は黙っていてくれと頼んでいたから、昨日の報告の時に言い淀んでいたのね。」
「ですね。昨日の彼女の報告ですと【灰色ノ剣】が襲い掛かって来て、何とか撃退したという様な報告でしたからね。」
「そ、そうなんですか・・・」
シルバは思わずサジテリア、サブマスター、ラミアの顔を見渡す。
駄目元ではあるものの、自分の願いを叶えようとしてくれていたラミアに若干申し訳なさも募る。
「そうよ。前もって【灰色ノ剣】から取った調書によると「誰かから不意打ちを受けた」だの「突然変なおっさんに襲い掛かられた」だのとアイツ等の証言には第3者を匂わせる発言があったから今日再度検証する形でラミアちゃんを呼び寄せたのよ。」
「う・・・その・・・済まない。私はどうやら嘘は得意ではないらしいのだ。」
「いや・・・俺の方こそ悪かった。」
ラミアにそう告げてシルバは頭を下げる。
シルバは自分の事で頭が一杯だったが、最悪ラミア自身が偽証罪で罪に問われる可能性があった。
今更ながらそれに気づいたシルバは心込めて謝罪した。
「まぁこれで辻褄が合いましたからね。奴らが罪に問われる事は間違いないでしょう。」
「そうね・・・まぁ少なくともこの街には残れないでしょう。王法に則って罪が言い渡されるのは間違いないわね。」
「あの・・・因みに・・・奴らはどんな罪で何処に行く事になるんでしょうか?」
「っっ?!!」
ギルドマスターとサブマスターのやり取りに対し、おずおずとラミアは口を開く。
そしてその言葉を聞いた瞬間、シルバは不味いという様な表情を出し、サジテリアは何故かニヤリと口角を上げた。
「そうね。先ほども言ったけれど王法に則ってこの街には永久に立ち入り禁止となるわ。それは奴らがどんな緊急事態でこの街に訪れても立ち入る事は出来ない。加えて罪が罪だけに冒険者登録のはく奪、此処までは確定事項だから安心して。」
「あぁ、はい。確かに安心ですけれど・・・あいつ等はどうなるのかなぁ~と・・・」
尚を【灰色ノ剣】の行先を尋ねるラミアの言葉にシルバは横で汗を流し始めた。




